大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・197『ランチボックス』

2021-02-13 10:02:25 | 小説

魔法少女マヂカ・197

『ランチボックス』語り手:マヂカ    

 

 

 礼法室に連れて行ってくださらない?

 

 三時間目が終わって四時間目は図書室で自習という休み時間、ブリンダはランチボックスをぶら下げて霧子の机の前に立った。

「あら、礼法室で早弁?」

 霧子が面白そうに見上げると、鼻の脇に皴を寄せてウインクする。

 めっぽうお茶目で可愛い顔になるのだが、ブリンダの可愛い顔はクセモノだ。

 こないだは、霊雁島の第七艦隊のレーガン提督の前でやってくれて大冒険をやらされてしまったぞ。

「じゃ、急いで行かなくっちゃ(o^―^o)!」

 やれやれ、霧子も一秒でブリンダ党になってしまう。

 ノンコも行きたそうにしていたが、うまい具合に占いをせがむ級友たちに囲まれている。

 ノンコも魔法少女候補生なんだけど、ブリンダが絡んでくると、たいてい荒事になるのでお留守番だ。

「ここからはオレに仕切らせてくれ」

「お、オレ?」

 礼法室に入るとブリンダの口調がガラリと変わって、霧子が目を丸くする。

「これが、こいつの生(なま)なのよ」

「すまんな霧子、ネコを被ったままじゃ仕事にならないんでな」

「う、うん。面白いわ!」

 こいつら、いいコンビニなるかも。

「オレのコンビはマヂカだ」

「ええ、わたしはのけ者(#`Д´#)?」

「いや、ここからはトリオだ」

「うれしい!」

 やれやれ……あっという間に雰囲気を作りやがった。

 

 これは……運命の扉だな。

 

 凌雲閣の地下、八枚の扉を一つ一つ確かめてブリンダは結論付けた。

「運命の扉?」

「アメリカじゃタスクドアって呼んでる。効率よく任務に向かわせてくれるけど、自分たちで探ったり調べたりという調整ができない。とりあえずは、このドアだな」

 八枚の内、一枚のランプが灯る。

「じゃ、まずは腹ごしらえしてからね」

 こういう状況で食欲が湧くというのは霧子の長所なんだろうが、ブリンダは犬にオアズケを命ずるように制した。

「リーダーはオレ」

「あ、そうね」

 霧子も素直に巾着の口を閉める。

「ランチは小道具になりそうなのでな」

「ブリンダ、任務の内容が分かっているようだな?」

「ああ、このタスクドアは米国式だ。ランプが点けばベースの情報は分かる」

「米国製だとは知らなかったわ」

「米国式と米国製は違うよ……ドアの向こうは、列車の中のようだ、足もとに気を付けて」

 

 わっ!

 

 ドアの向こうに踏み込んだ途端に霧子がよろめいた。

 列車の中とは言われたが、まさか動いているとは思わなかったんだろう。

「中央線……」

 踏み込んだところは車両の端のデッキ、ドアの窓から景色が見える。

「胸ポケットにチケットが入っている……この車両だな」

「あ、わたしの二枚あるわ」

「四人分のチケットで三人……意味があるんだろ?」

「多分な」

 客室に入ると、指定席はほぼ埋まっていて、わたしたちのリザーブと思われる四人掛けが空いている。

 通路を歩くと、女学生の三人組が珍しいのだろう、チラチラと視線を感じる。大正デモクラシーと言われる時代でも、ちょっと目立つ。

 しかし、三人のうち一人が金髪の外国少女だと分かると、たいていは納得した顔になる。

 行先は軽井沢、外人の避暑に日本人のブルジョア少女が付き合っているの図になっているんだろう。

 あ……

 旅客が広げている新聞、日付を見て緊張した。

 大正十二年九月二日

 麻スーツのオッサンの腕時計は午前11時25分を指している。

 大震災が起こる23分前だ。

 ブリンダのやつ、なにをさせようと言うんだ?

「ア、ココデス! ココ、ワタシタチノリザーブデス(^▽^)!」

 ブリンダが、いかにもという外人口調で手招きした。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

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らいと古典・わたしの徒然草・5『第七段 世は定めなきこそいみじけれ』

2021-02-13 06:38:11 | 自己紹介

わたしの徒然草・5

『第七段 世は定めなきこそいみじけれ』  



 「人間はいつ死ぬかわからんとこがええねんで」と、兼好法師はおっしゃいます。

 さらにふみこんで、「四十くらいでポックリいってしもたほうが、みっともない年寄りにならんでよろしい」と言いきります。ご本人は七十歳の長寿を全うされましたが。

「四十にしてマドモアゼル」という言葉がありました。

 世の女性方からはりたおされそうな言葉ですが、これは、アラフォー女性の、やせ我慢……もとい。自立と自信をウィットとユーモアで「無学、鈍感なオッサンにはわからへんやろ」とケムにまいた名言であるらしいです。
「四十にしてマドギワず」と、かねがね思い定めていました。それがマドギワどころかマドからとびだしてしまいました。56になる一ヶ月半前のことでした。マドギワずどころか天命とかを知らなければならない年齢であります。ところが、天命どころか駅前通りの商店街の店名さえ忘れるほどに引きこもってしまいました。オッサンの天岩戸(アマノイワト)はしゃれにもなりません。
 
 この間、同年の友人が二人、兼好法師の言葉を実践するかのようにポックリいってしまいました。一人は事故、一人は血管が破裂して。二人とも地味ではありますが自分で敷いた人生のレールの上をしっかり走っていました。二人の死を、いたましく、身体の一部が無くなったような喪失感として感じましたが、心の奥底のどこかでウラヤマシク感じていたことも確かです。

 旧友二人の人生には惑いがありませんでした。一人はサラリーマンとして、身の丈に合った目標があり、それなりの役職につき、成果もあげていました。もう一人は若くして脱サラして、フランチャイズの店を持ち、さらには、そのフランチャイズからも抜けだし、完全な自営のイタメシ屋を経営。家庭的にも、多少の波風はたったものの、きちんと夫として、父として峠に立つお地蔵さんのように泰然と佇立していました。
 ひるがえって我が身をかえりみれば、惑いはなかったと思うのですが。その不惑を一飲みにするような大きな戸惑いがありました。なにやら言葉遊びのようですが、こういうことであります。
 
 教師というのは、庭師のようなものであると思っていました。教科指導やクラブ活動を通して生徒たちと接し、時に肥料をやり、ときに適度な剪定をしてやり、雑草をぬいてやったりする。あくまで、その木の成長を助け、庭の中で調和のとれた木に成長させてやる。予想以上に成長した木は、それに見合った庭や野山を探し、移植をしてやることもあります。松は松、竹は竹、椿は椿として育て、けしてその木の特性を殺したりはしません。

 今もその思いにかわりはありません。

 くどいようですが、木というものは、自分で育つ力を持っております。時に多少の手助けが必要なだけであります。その成長は、「定めなきこそいみじけれ」であります。
 今、教師に求められている役割は、庭をテーマパークにし、その管理人になれということなのかもしれません。静かな庭にいろんなイベントを持ち込み、そのマネージャーとディレクターの仕事をやれと。時に、ツアーコンダクター、また時には、木々のDNAの組み替えをやる生物学者のまねごとまでやります。

 昔の高校の教師は、日本史、生物、古典などと細かく守備範囲がきめられていて、新任からずっと同じノートを使って授業をやり、クラブの顧問も名ばかり。一時間目や六時間目の授業ををいやがり(遅く出勤し、早く帰るため)文化祭や体育祭の行事は出勤しない。そのくせ生徒にはよく説教をたれました。いわば、ズボラな庭師でありました。

 わたしが教師になったころは、受け持った学年に合わせて、小教科が変わりました。ある年は現代社会、ある年は日本史、またある年は政治経済。部活は首までドップリつかり、担任をもてば、始終生活指導や家庭訪問にあけくれて、われながらマメな庭師でありました。

 ここ十年で学校はテーマパークになりました。

 国際科や総合選択制の学校ができはじめ、普通科でも、総合学習というなんでもありの授業を筆頭に選択授業がテーマパークのイベントのように増えてきました。たとえば、情報、ビジネス基礎(ともに商業科の科目)レクリエーションスポーツ(スポーツジム)、基礎園芸(園芸科)、介護基礎(介護士専門学校)、映画から見た世界都市(観光科)……まるで、駅前の文化教室や専門学校のカタログのようです。多い先生になると、一人で五教科くらい持つ人もいます。授業も一日六時間ではおさまらず、わたしがクラブ指導にいっている高校など、週のうち四日は七時間授業になっています。そして、数は減ってきましたが一年時の宿泊学習。手取り足取りの文化祭、体育祭。一年で電話帳ほども書かされる初任者研修のレポート。なにかというと打たされるコンピューターへの入力(多いと、一日三時間くらいパソコンとお見合いしている)IDカードによる出退勤の管理、教職員の評価育成と称するプロパガンダめいた書類の作成と校長との年三回の形式的な面談。

 子供たちと接する時間は確実に減ってきました。今や庭師は庭や木を見ず、あたかもコンピューター管理された、テーマパークの管理人のようになってしまいました。

 もう遅いのですが……大波に揺れる船を「揺れるのは、船員のせいや!」と言って船員をつるしあげてもしかたがありません。乗組員ではなく、日本丸という船をこそ、なんとかしなければならないと感じます。

 ILOのいつだったかの年次報告に「世界の教師の緊張感は、最前線の兵士のそれに匹敵する」とありました。

 「七、五、三」と言うこともあります。

 退職後の教師の平均余命です。校長三年、教頭五年、平で七年。むろん戯れ言ですが、知ってか知らでか、年々この不況にもかかわらず教師志望の若者が減ってきました。東京都の教員採用試験の倍率は2・6倍らしいですね。民間企業では七倍はないと人材確保やモチベーションの維持がむずかしいと言われます。
 そんなこんなで、わたしは去年三十年勤めた教師生活に別れをつげました。しかし『世は定めなきこそいみじけれ』おかげで二十数年ぶりに旧知の出版社のみなさんと再会できました。そして読者のみなさんに駄文に付き合っていただけております。

 
 

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妹が憎たらしいのには訳がある・60『5人のロボット対戦』

2021-02-13 05:56:15 | 小説3

たらしいのにはがある・60
『5人のロボット対戦』
         


       


 
 ギーーギッコン ガーーガッコン メキメキメキ バキバキバキ

 赤さびたロボットは右足を引きずるようにして近づいてきた。木々をなぎ倒し、岩を踏み砕きながら……。

 携帯武器は持っていないようだが、搭載武器が生きているかも知れない。わたしたちは必死で逃げた。ロボットは二世代前のチンタオ型で、半ば故障しているとは言え、生身の人間には十分過ぎる驚異だ。
 わたし(真由)と優子は義体なので、その気になれば後ろに回り込み、メンテナンスハッチを解錠し、動力サーキットを切ってしまえば、ものの数秒で無力化はできるが、それでは、仲間達に義体であることを知られてしまう。

 とにかく逃げることだ。

「こいつは、チンタオのアナライザータイプだ。攻撃能力は知れているが、探査能力が高い……」

 ドゴーーーーン!

 頭上の岩が爆発した。近接戦闘用の搭載兵器、多分ショックガンを使ったんだろう。
「キャー!」
 春奈が悲鳴をあげた。優子は、春奈の口を塞ぎ、次の岩場の陰に隠れた。
「やっつけちゃ、ダメ?」
 わたしは、春奈に聞かれないように早口で優子に言った。優子は素早い手話で答えた。
――ダメ、義体であることがばれる。ばれたとたんに、C国に情報が送られる――
――三ヶ日じゃ、うまくいったじゃない――
――ダメ、他の三人に知られる。わたしたちは「人間」なのよ。

 ドーン! 

 今度は木下と宗司が隠れていた岩場がやられた。

 ただ、ロボットの動きが鈍重なので、あらかじめ察知して、次の隠れ場所に移動する余裕は、なんとかありそうだ。でも、この先隠れ場所になりそうな岩場や木がない。大きな池があるだけの背水の陣だ。追いつめられるのは時間の問題だ。
 宗司が飛び込んできた。
「なんで、あんたが!?」
「木下クンが、あいつのCPのハッキングをやるって。その時間稼ぎに、二組に分かれて逃げ回ってくれって」
「そんなこと……」
「危ない!」
 不満はあったけど、結果的に、わたしは優子と、宗司は春奈ちゃんとの二組に分かれて逃げ回った。

 そして、池の水辺にまで追い込まれた。

「これ以上、どうしろって言うのよ!?」
「水に飛び込むんだ、あいつの生体センサーは一メートルも潜れば感知できなくなる」
「まだ、泳ぐには早すぎるわよ! 水着もないし!」
 真由が抗議したが、この言い方には余裕がありそうだ。実際次のショックガンがくるまでに、注意を引きつけて、宗司と春奈ちゃんが水に飛び込む時間を稼いだ。

 池に飛び込むと同時に、岩が吹き飛ばされた。池に潜ったわたしたちは二メートルほど潜ったが、五メートルほど先でパニックになりかけている春奈ちゃんを持て余している宗司が目に付いた。

――優子、あっちを助けて。わたしはここであいつを引きつける。

 わたしは、シンクロスイミングのように水面に姿を晒すと、池の深みを目指して泳いだ。次々に撃ち込まれるショックガンで、水面は泡だった。
 優子は春奈に口移しで空気を送ってやった。しかしパニクっている春奈は、半分も、その息を吸うことができなかった。
 三十秒が限界だった。これ以上やっては春奈を溺れさせてしまう。優子はそう判断すると、春奈を水面に放り上げ、自分も高々と水上に姿をあらわした。

 ショックガン……来ない。

 立ち泳ぎで、ロボットを見ると、ショックガン発射寸前の赤いアラームが肩で点滅して動きが止まっていた。
「やったー!」
 木下クンが、ジャンプして、ガッツポーズをした。

「木下クンなら、甲殻機動隊のサイバー部隊でもやっていけるわね」
「そうね、後始末もお見事」
 木下は、ハッキングの痕跡をきれいに消しただけでなく、ロボットが興味を示したものの記録も、一切合切消した。その中には、違法に改造された彼のCPの他に、わたしたちが義体の疑いがあるという情報も入っていた。

「お二人とも、とても泳ぎがお上手なんですね!」
 
 この春奈ちゃんの記憶は消せなかった。で……。
「宗司クン、水中で人工呼吸してくれて……ありがとう」
 と、宗司にお礼を言った。宗司も半ばパニックだったので、そのへんの記憶があいまいで、
「とっさのこととは言え、ごめん」
 と、美しく誤解していた。

 で、麗しくも切ない青春ドラマの横道へと、物語は展開の気配……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
  • 木下くん       ねねと優奈が女子大生に擬態生活しているマンションの隣の住人
  • 川口 春奈      N女の女子大生 真由(ねねちゃんと俺の融合)の友だち 
  • 高橋 宗司      W大の二年生   


 

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