大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:169『再びの決意』

2021-02-04 08:34:22 | 小説5

かの世界この世界:169

『再びの決意』語り手:テル(光子)    

 

 そうだったの……。

 お茶のエッセンスを絞り切るようにポットを上下させて美空先輩は呟いた。

「完全じゃないと思うけど、この辺で手を打つか」

 時美先輩が、見かけのボーイッシュさとは裏腹な優しい手つきでケーキをお皿に移す。

「ハハハ、不思議か?」

「あ、いえ」

「普段は大ざっぱだけど、ここ一番という時は丁寧にやるんだ」

「時美はね、思ったよりも見かけにこだわるのよ」

「潰れたケーキって、やだろ。三人で食べるんだったら三つとも綺麗にしとかなきゃ、つまんないだろ」

「そうですね」

 時美先輩のこだわりにホッコリする。

「さ、いただきましょ」

 そういうと美空先輩は『けいおん』のムギちゃんのような笑顔でケーキにフォークを入れた。

「……おいしい」

 久々に(現実世界では二時間ほどしかたってないんだけどね)先輩といただくケーキはため息が出るほど美味しかった。

「じつはね、目当てのケーキ屋さんはお休みでね、ちがうお店で買ってきたの」

「え、そうなんですか!?」

「うん、ごめんね。最初に言ったらがっかりするだろうって思って」

「言わなきゃ、分かんねえのに」

「い、いえ、ちゃんと言ってくださるのは思いやりだと思います。じっさい美味しかったですし」

「そう、よかった」

「それで、冴子はどうだった?」

「はい、それが……」

 冴子が赤の他人のようになってしまったことを説明した。

「でも、これで、殺すことも殺されることも無くなったわけだ」

「うん、そうね……」

 言葉遣いはちがうけど、美空先輩も時美先輩も等しく労わってくださるのが身に染みて嬉しい。

「はい、落ち着いて、ここからやり直します」

 二人の先輩は穏やかに微笑むことで賛同してくれた。

 

 一人で下校する。

 赤信号で立ち止まったり、電車がくるまでホームで待っていたりすると、無意識にスマホに手が伸びる。

 冴子のメールを意識してるんだ。

 もともと、いつも一緒にいるようなことはなかったけれど、何かにつけてメールのやりとりはしていた。

 正しくはラインというらしいんだけど、違いがよく分からないわたしはメールという呼び方で納得している。ラインは個人情報を抜かれるという噂だったけど、便利で無料だし納得。

 納得を二回も使ってしまう。ほんとは納得していないんだろうか。

 郵便受けに新聞が溜まっている。

 昨日の夕刊からとり忘れているところへ回覧板や市政だよりが入っている。

 朝刊の折り込みチラシはスーパーワンダイの新装開店。市政だよりのカガミ(表紙)は神社の巫女舞の稽古の様子だ。

 ちゃんと、見知らぬ中学生の女の子が緊張した表情で踊っている。

 ここでは、三年連続でわたしと冴子がやらされることは無いんだ。

 あれこれ見ていると、冴子に電話したくなる。

 でも、もう他人なんだ……。

 なんだか無性に寂しくなる。

 ま、いい。ゆっくり時間をかけて……また、なれるものなら友だちになればいい。

 

 あくる日、駅の改札を出ると、ちょっと前を冴子が歩いている。

 

 ちょっと追い越したぐらいのタイミングで気が付いたことにして、ペコリと頭を下げるくらいの挨拶。

 そうだ、一から始めればいいんだ。

 そう思って、少し早足になる。

 すこし横に出て、肩が並ぶ……。

 ドン!

 キャ!

 わたしの後ろから自転車が来ていて、わたしが急に横に出たものだから、追い越しざまに接触。

 チ!

 自転車の主は舌打ちして行ってしまう。

 タタラを踏んでコケて手を着いたところに犬のウンチ。

 グニュ

「あ、ああ……」

 間抜けなため息が出る。

 前を歩いていた生徒たちが振り返る。一番間近に冴子。それも、仁王様のように怖い顔。

「あ、昨日の……!」

 そこまで言うと、ひどく蔑んだ迷惑顔。

「ギョエ!! ちょ、離して!」

「あ!?」

 わたしは、ウンチを握りつぶした手で冴子のスカートを掴んでいたのだ……。

 疫病神を見るような冴子の視線を浴びながら、わたしは、もう一度時空をジャンプする決心をした。

 

☆ 主な登場人物

―― この世界 ――

  •  寺井光子  二年生   この長い物語の主人公
  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

 

 

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誤訳怪訳日本の神話・22『大国主について、最初から脱線(^_^;)』

2021-02-04 05:39:00 | 評論

訳日本の神話・22
『大国主について、最初から脱線(^_^;)』   

 

 

 古事記によると六代目の子孫。日本書紀正伝によると二代目の息子。

 

 とにかくオオクニヌシはスサノオの血筋であります。

 そのオオクニヌシが、同じスサノオの娘であるスセリヒメ(須勢理毘売命)と結婚します。

 この結婚にはエピソードがありすぎるので、わたしの趣味で絞ります。

 

 まず、二人の関係……血縁です! 日本書紀正伝では腹違いの兄妹でさえあります!

 高天原の国津罪でも書きましたが近親相姦はご法度です。いまの民法でも当然認められません。

 ところが、古代では緩かったんですなあ。腹違いの兄妹は結婚できます。伯父・叔父と姪の結婚もOKでした。

 現代の感覚では「えええええ! そんなああああ!?」になります。

 友だちが「わたし結婚したの!」と言ってきたら、「え! 相手は誰なの!?」と聞きます。

「腹違いのお兄ちゃん!」とか「叔父さんと!」とか嬉しそうに答えたら「……なにそれ……」とドン引きになります。

 こういう近親結婚が古代では結構ありました。たしかクレオパトラも弟と結婚しています。中世ヨーロッパでも、領地や権力維持のため兄妹や近親での結婚が多くありました。

 狭い日本にいると、いとこ同士とか又いとこ同士の結婚というのはヘッチャラですが、外国、とくに中国や朝鮮半島では「……なにそれ……」になります。

 朝鮮半島では、いとこどころか、本貫(出身地)が同じ同姓の結婚も長らく認められませんでした。

 男女が仲良くなり結婚を意識し始めると、同姓の場合、互いの本貫を確認しました。

 オレ慶州の金だけど君は? よかった! わたし金海の金よ! で、結婚できました。わたしの知識は古いので、いまは、そこまでうるさくは言わないのかもしれませんが、とにかくいとこ同士などはあり得ません。

 わたしのクラスメートの友だちにアラブの王族から求婚された女の子がいました。

 とてもいい男だったので国際結婚を決意しますが第二夫人としてだったので周囲から反対されました。めでたく結婚したらしいのですが、当時は第二夫人ということばかりが話題になって、結末と経緯についてはよく覚えていません。

 インドで、こんなことがありました。

 結婚して間がない夫が亡くなりました。親族一同が集まって葬式になります。ここまでは日本と同じです。

 インドは、いまでも火葬の所が多くあります。日本のように火葬場で焼くのではなく、多くは河原で木材を積んで、その上に布でくるんだ遺体を載せて火を付けます。いわゆる荼毘にふすという奴で、戦後すぐくらいまでは日本でもやっていました。

 ここからが違います。

 燃え盛る炎の中に未亡人の若妻を、みんなで寄ってたかって担ぎ上げて火の中に放り込みます。熱さのあまり飛び出してくる若妻をさらに火の中に押し戻します。這い出てきたところを、さらに押し戻し、ついには夫の遺骸と共に焼き殺します。

 これは、妻が夫を亡くした悲しみのあまり自分も火の中に飛び込んだという美談にするためです。昔から、よくできた嫁はいっしょに死ぬもんだという文化があったことからの悲劇です。むろん、今は法律で禁止されていますが、禁止しているということは……今でも……と思ってしまいます。

 女の子が男と関係を持ってしまった場合の話です。

 女の子が十八歳未満ですと男は逮捕されます。ときどきやらかして新聞やテレビをにぎわしていますね。男はマスコミに書き立てられ、仕事も首になります。最近、教師がいたしてしまって首になり、新聞やらネットニュースやらをにぎわしております。

 女の子が十八歳以上ですと、合意の上であれば罪にはなりません。

 現場に居たころ、三年生の担任をやっていて「娘が男といっしょに……」という相談を何度か受けました。時に警察にも相談に行きましたが、十八歳を過ぎていると「本人が自分の意思でやってる限りねえ……」と手が出せませんでした。

 インドやアラブでは親が娘を掴まえて殺してしまうことが正義でした。むしろ殺さない親が社会的に非難されました。

「不貞の娘を成敗したぞ!」

 父親が、殺した娘の生首を掲げて町中に触れ回ってもお咎めなし。街の年寄りたちは「よくやった!」と誉めそやします。

 アラブの王女様が男と駆け落ちして捕まりました。連れ戻され、男は首を切り落とされ、王女様はピストルで頭を撃ち抜かれました。

 脱線してしまいましたが、ことほど左様に文化が違うと受け入れがたいほどに対応ややり方が違うのです。

 歴史的に昔を見る場合、そういう違いを踏まえて観てやらないと誤ってしまうことがあります。

 現代的に言うと、それほど異文化の理解が難しいということになりましょうか。

 次回は、大国主と因幡の白兎について触れてみたいと思います。

 

 

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妹が憎たらしいのには訳がある・51『テイクオーバー』

2021-02-04 05:22:50 | 小説3

たらしいのにはがある・51
『テイクオーバー』
         


      

 

 三日と持たない……里中副長は思った。

 グノーシスが送り込んできたねねは、シリアルもオリジナルと同じで、こちらのねねのメモリーは昨日の分までは完ぺきにコピーされていた。
 だから、里中副長がニセモノと気づかなくても不自然ではない。
 しかし、里中副長は慎重だった。
 自分の住みかをプライベートとアジトに分けている。
 プライベートにも、ある程度の機密があり、軍や甲殻機動隊ともリンクしているが、ほんの日常的なアクセスしかできないようになっている。万一のためにダミーの戦闘詳報や、機密情報をカマシてはあるが、ねねが気づくのは少し時間がかかるだろう。しかし、いつまでもというわけにはいかない。ねねが知るのは時間の問題だろう。

 三日目、その時がやってきた。

 ねねの母親・里中マキ中尉の記憶は、レベルCの機密にしてあり、普段のねねは、それを認識してはいない。母親はずっと昔に亡くなったと思っている。先日太一をインスト-ルして母の死を看取り、国防省で的場大臣をコテンパンにしたことは記憶から抜いてある。それを、このねねは知ってしまった。
「ママは、ついこないだ、わたしの腕の中で死んだんだ。わたしはママのバトルスーツを着て、国防省で……」
 ねねは涙を流していた。そしてCPの中で、全ての情報と照合し、矛盾がないか確かめている。
「辛い思い出だから機密にしておいたんだ。でも、やはりねねには自我がある。どうしても見つけてしまうんだね。かわいそうに……」
 里中副長は、そっとねねの肩に手をやり、さりげなく親指で、ねねの首筋に触れた。ねねのCPの中で解析が進み、その情報が圧縮されて外部に転送されているのが分かった。転送先は、様々なCPを経由して分からなくしてある。第一級のハッカーの手口であるが、その先は祐介を取り込んだグノーシスのモンスターであろうことは想像がついた。

 ねねの肩に置かれた里中副長の手に、一回り小さな手が重なった。

 ねねの体から、電池の切れたロボットのように力が抜けた。里中副長は、ねねをゆっくりとソファーに寝かせた。
「ノイズ一つたてずに、テイクオーバーできたわ。この子のCPは、完全にブロック。もう指一本も動かせないわ」
 もう一人のねね、つまり太一と同期したわたしが言った。
「すぐに、このねねの服と着替えるんだ。下着から全てな。痕跡は残すな」
「はい」
 わたしは、動かなくなったねねの義体から服をはぎ取ると、素早く身につけた。
「この下着の繊維、3度以上感知体温が変化すると、アラームが転送されるようになってる。警戒していたみたいね」
「それじゃ、風呂にも入れないじゃないか」
「今日一日の処置。敵も今日あたりが危ないと思っていたみたいよ。この義体は処分ね」
 わたしは、義体をシュラフに入れた。
「待ってくれ、もう、ねねの義体を処分するのは三度目だ……」
「情が移っちゃった? そういうパパ好きよ」
「……今の義体が破壊されたら、すぐこいつにテイクオーバーできるようにしておけ」
「鹵獲兵器の再利用ね」
「デスストックになることを祈ってるよ」

 そこに、我が崇拝者の青木拓磨からメールが来た。

「フフ、ぶっそうだから学校まで送り迎えしてくれるって」
「気を付けてな」
「はーい、じゃ、行ってきまーす!」

 マンションの前を南に行った角で拓磨の車が待っていた。
 一応、義体反応をチェック。パッシブだから、気づかれる心配も無し。反応はグリーン。
「どうも、お世話かけます」
 親しき仲にもナントカ。ちゃんとお礼は言っておく。一応崇拝者だけど、野獣に変わらないためのオマジナイはかけておく。前のこともあるしね。

 事件は、その日の放課後にやってきた……。

 

※ 主な登場人物

  • 佐伯 太一      真田山高校二年軽音楽部 幸子の兄
  • 佐伯 幸子      真田山高校一年演劇部 
  • 千草子(ちさこ)   パラレルワールドの幸子
  • 大村 佳子      筋向いの真田山高校一年生
  • 大村 優子      佳子の妹(6歳)
  • 桃畑中佐       桃畑律子の兄
  • 青木 拓磨      ねねを好きな大阪修学院高校の二年生
  • 学校の人たち     加藤先輩(軽音) 倉持祐介(ベース) 優奈(ボーカル) 謙三(ドラム) 真希(軽音)
  • グノーシスたち    ビシリ三姉妹(ミー ミル ミデット) ハンス
  • 甲殻機動隊      里中副長  ねね(里中副長の娘) 里中リサ(ねねの母) 高機動車のハナちゃん
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