大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・39『オオモノヌシ・1』

2021-05-11 10:07:37 | 評論

訳日本の神話・39
『オオモノヌシ・1』  

 

 

 スクナヒコナ(少彦名)はオオクニヌシとの国造りの途中で海の彼方に帰ってしまいます。

 日本書紀の一説に寄りますと、国造りをしているうちに、とっても仲良くなった二人は、もう生まれながらの兄弟か親友のようになってしまい、ついオオクニヌシがからかってしまいます。

「おめまえ、ちっちゃいのに、よく働くよなあ(^▽^)/」

 スクナヒコナに「小さい」は禁句なのです(^_^;)。

 静かに怒りの湧いてきたスクナヒコナは、顔色を変えることもなく、その日のうちにオオクニヌシに一言も告げずに帰ってしまいます。

 他には、スクナヒコナは蛾とかの虫の妖精なので、寿命が短く、それで突然帰った(死んだことを婉曲に表現した)ともいう解釈もあります。

 日本書紀は、古事記と違って『一書』という別冊というか掲載してある異説が多く、分量は古事記の十倍以上あります。

 

 ついでなので、古事記と日本書紀について、わたしなりの解釈を述べておきたいと思います。

 

 古事記は712年、太安万侶によって語り部・稗田阿礼の記憶を描きとめる形で作られました。

 古事記は神話なので、出てくるのは神さまばかりです。

 神さまと言うのは、フィクションの中の存在なので、ニ十一世紀の今日ならば、どのように書いても問題はありません。

 ところが、八世紀の日本の豪族たちのことごとくは神話世界の神さまの子孫ということになっています。

 たとえば、貴族のトップの藤原氏は天児屋命(あめのこやねのみこと)の子孫と言った具合です。

 貴族・豪族のご先祖がみんな神さまなので、古事記が出されると「ちょっと、うちの言い伝えと違うんだけど」と、苦情が出てきます。

「あ、それは申し訳ないです(;^_^」

 ということになり、古事記完成後十年もたたない720年に修正版を出すことになりました。

 それが日本書記なんですね。

 ほとんどの『うちの言い伝え』を載せてしまったので、その分量は古事記の十倍を超えることになってしまいました。

 

 日本のいいところなんでしょうねえ。

 

 これが中国の史書になると、一本道です。

 皇帝や王様の意に沿うものが一つ作られ(大抵は、皇帝のご先祖だけが偉くて、他の豪族・貴族はめちゃくちゃに書かれるか、抹殺されます)てお終いです。

 とにかく、スクナヒコナに関しては『国つくりの途中で帰ってしまった』ということでしか書かれていません。

 そして、途方に暮れたオオクニヌシの元にやってきたのがオオモノヌシノカミ(大物主命)なのです。

 オオモノヌシは「オレに手伝ってもらいたかったら、東の方に立派な神社を作って祀ってくれよな」と注文を付けてきました。

「うん、分かった。じゃ、とびきりのを作るよ(^_^;)」

 そうやって作られたのが、奈良の三輪山をご神体とする大神神社(おおみわじんじゃ)なのです。

 

 ふつう、神社の鳥居を潜ると、正面に見えてくるのが拝殿です。

 拝殿というのは、人間が神さまに挨拶やお願いをするところで、賽銭箱とガラガラの鈴以外は、まあ、お飾りです。

 拝殿の奥にあるのが本殿で、ここに神さまが居ます。

 本殿は、拝殿とは別に塀で囲まれたりして、特別に見えます。

 たいてい、鏡や石や剣とかが安置してあります。御神体ですね。

 この、拝殿と本殿がワンセットで、ほかに手洗所やお札の頒布所、社務所、狛犬があって、数十本から数百本のクスノキなどの緑に囲まれてワンセットの神社になります。

 ところが、大神神社には本殿がありません。

 わたしも、初めて大神神社を訪れて、拝殿の向こうがスカスカなのに驚いた記憶があります。

 大神神社の御神体は、拝殿の背後にある三輪山そのものなんですね。

 三輪そうめんという素麵のブランドがありますが、その三輪そうめんの神さまでもあるのがオオモノヌシであります。

 ええと……

 前説が長くなりました(^_^;)、中身は次回と言うことで、今回は失礼いたします。

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ライトノベルベスト・一週間物語・2〔火曜日はカンカンカン〕

2021-05-11 06:43:11 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

一週間物語・2〔火曜日はカンカンカン〕  




 カンが当たったというほど大そうなものじゃない。

 顧問の小暮先生に、学校来るなり呼び出された。

 予想はしていたので、8時前には学校に着いていた。

「妙子、ほんとに主役降りるの!?」

 これも予想はしていたけど、ゲンナリくる。

 教師って、どうして、こう自分の思い込みで判断するんだろ。

「県大会で最優秀獲ったんだよ! 個人演技賞と創作戯曲賞も獲ったんだよ! それが地方大会を前に辞めるかあ!?」

「そういう約束でしたから。先生もご承知してくださっていると理解していました」

 あたしは、頭に来ると言葉遣いは丁寧に、態度は冷静になってくる。これが教師のカンに障ることも知っている。でも、癖だから仕方ない。

「あんなの、だれも承知なんかしてないわよ! コンクールで最優秀獲って辞めるバカなんかいないわよ!」
「ちゃんと美優ちゃんにアンダスタディー(代役)やれるように仕込んであります」
「妙子が主役じゃないと務まんないの!」

 この間、小暮先生は、どんなにあたしの演技が素晴らしいか、台本が良く書けてるか(小暮先生の創作)を喋り倒した。

「失礼ですけど、あの作品には血が通っていません。行動原理も思考回路も人間離れしています」

 あたしは、説明を省略して、結論だけ言った。カンに障るだろうな……とは思ったけど、予鈴が鳴っていたから仕方ない。

 二時間目の休み時間に美優に確認した。

「言った通り、あたしは降りるから。代役は美優。承知してるよね?」
「はい……でも、小暮先生が……」
「小暮のオバハンなら、あたしがなんとかするから。よろしく頼んだよ!」

 四時間目が自習で、小暮先生は授業がなかったので「呼び出されるだろうな……」と予想。

 当たった。

「どこが血が通っていないのよ!? 行動原理、思考回路が人間離れしてんのよ!?」
「あれは、最後の和解のカタルシスのために用意した嘘ばかりだからです」
「ど、どこに嘘があるって言うの!?」

「バイトしてたことをネタに脅かします? それも、今時牛乳配達ですよ。それも母子家庭の経済的な理由がもとで。万一バレても、こんなので退学にするような学校ありません。なにかモチーフになるような事件があったんですか?」
「イジメの問題は、今の学校の病理なのよ。それをビビットに描くためには、あれくらいの条件設定が必要なの!」

「つまり、そこが嘘なんです。先生のお作は、その点で血が通っていません。あそこから自殺にもっていくには無理があります。イジメはたしかにあります(いま先生がやってることもイジメだけどね) もっと巧妙で陰湿です。で、99・999%の生徒は死なずに堪えています。高校生の死を問題にするなら、交通事故死です。高校生の死因の一番ですから。検索すれば一発で分かります。なぜ取り上げないか。普通すぎてニュース性がないからです。高校生が交通事故で死んでも、新聞にも出ないのが実情です。イジメの自殺は珍しいからニュースになるんです。だから先生は飛びついた」

「でも、等身大の高校生と、教育現場の実情がよく描けてるって、審査員の先生もいってたでしょ?」

「え……先生、本気にしてるんですか? 審査員は学校に関しては素人ですよ。あたしたち生徒や先生が、学校に関してはプロです。ちがいますか? それが、あんな評もらって恐れ入っちゃうんですか? それは、先生が、賞を欲しいと思った気持ちが目をくらませたんだと思いますよ」

「あ、あのね……!?」

「死んだ幸の遺書に名前が書いてあったからって、狙い撃ちで呼び出したりしませんよ。百歩譲って幸が自殺したとしても、学校がまずやるのは全校集会とアンケート、保護者説明会です。それやってから、遺書に書いてあった子を他の生徒に混ぜて面談します。親への連絡はそれからです。ここの教師の思考回路と行動原理、人間じゃないですね。だいたい加害者と思われる生徒の親たちを一つの部屋に集めるなんてしません。で、加害者の子たちが一切登場しません。加害者の子たちの心に葛藤がなきゃドラマって言えないと思います」

「あのね……」

「二等賞の『三人姉妹』の方が、よくまとまっていたし、出来も良かったです。創作劇の甘やかしすぎです。滅びますね高校演劇」

「わ、分かったわよ。せっかくチャンスをあげようと思ったのに……あんたなんかクビよ!」

「間違わないでください。わたしが辞めたんです。辞めた者をクビにはできませんでしょう」

 まあ、大まかには、こういう話。

 あたしはちゃんと、その間にお弁当も食べた。むろん小暮先生におことわりはしたけど。

 案の定、放課後には、妙子の無礼者ということで学校中に評判がたった。勝手に弁当食べながら屁理屈を並べたということになっていた。

――演劇部辞めたってほんと? 俺、心配してるから!――

 もう一つウザイのからメールがきた。

 今日はカンカンカンの火曜日だから、こいつのことは明日以降。

 あああ、メンドイ!!

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真凡プレジデント・79《今度は増上寺》

2021-05-11 06:24:21 | 小説3

レジデント・79

《今度は増上寺》      

 

 

  

 ドスン!!

 

 危うく舌を噛むところだった。

 ビッチェの運転が荒かったのか、昭和草原からの脱出が難しかったのか、消防車ごと空から落ちてきた感じ。

「次元を超えたショックよ、慣れるしかないわね」

 涼しい声は、少しばかり上から聞こえた。

 ウ~ン……………あ~なんかヤバい。

 着地のショックで助手席のシートにめり込んでしまったわたしは、なかなか体を起こせない。

「仕方ないわね……よっこらしょっと!」

「あ、ありがとう」

 引き起こされた助手席から見えたのは二階建ての大きな門。柱や壁が赤く塗られていて瓦屋根。軒は一面の鳥かごのように網がかけてあって……お寺の山門? どこかで見たことがある。

「後ろ見てごらんなさい」

「後ろ?」

 運転席の後ろの窓に目をやると、石段の上に二階建ての大きなお堂が見える。

 見覚えがある……あ、芝の増上寺だ!

 

 小さいころにお爺ちゃんに連れてきてもらったことがある。そうだ初詣だ!

 

 下りてみ。

 いつの間にかビッチェは外に出ていて、少し距離のある所から声がした。

 あ……え……え? え?

 ちょっと違和感。

 江戸時代から将軍家の菩提所として作られた増上寺は東京でも有数の名所だ。

 それが、わたしとビッチェの他は消防車があるきりで、人の気配がない。

 増上寺は緑が多いお寺だけど、木々の上には近隣のビル群が見えるはずだ。それが一つも見当たらない。

「異次元の増上寺よ。でもお寺って聖地だからね……きっと意味があるはずよ」

「ちょっと怖いかも……」

 見上げると空は雲一つない紺碧の青空。

 東京は快晴の日でも、どこか濁っている。

――昔の青空は、こんなもんじゃねえよ――

 初詣の青空に感心していると、お祖父ちゃんが笑ったのを思い出す。

 そのお祖父ちゃんが、ここに居たとしても――いやあ、まいったまいった――そう言って、笑い出しそうな青空だ。

 怖いと思った半分は、この青すぎる空のせいかもしれない。

 

 ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ ザ

 

 山門の方から大勢の人がやってくる音がし始めた……

 

 え……ガルパン?

 

 なつきの弟の健二にせがまれて、お好み焼き屋たちばなの二階で観たアニメ映画のタイトルが浮かんだ。

 女子高生が戦車道とかって部活で本物の戦車に乗ってドンパチやるアニメだ。

 よくバラエティー番組なんかでBGに使ってる陽気なマーチが流れてきて、もとは、このアニメだったんだと思いだす。

 そのガルパンに出てくるアメリカっぽい、サンダース大学付属高校に似ている。

  タンカースジャケット? だったっけ……カーキ色のジャンパーをラフに着た女の子の集団がゾロゾロと山門を潜って来た。

 「やあ、あんたたち、どこの部隊?」

 先頭を歩いていたブロンドが陽気に手を上げた。ガルパンを知っているせいか日本語を喋っているのにも違和感がない。

「ヘル連隊インフェルノ大隊ボトムレス中隊ビッチェ軍曹、こっちはマヒロ伍長」

 ビッチェがおぞまし気な名乗りをする。

「ワオ、あんたたち本物の地獄部隊なんだ」

「あんたたちは?」

「混成部隊。九十人いるけど、みんな所属が違うの。あたしはケイ・マクギャバン軍曹。なんなら全員名乗らせようか?」

「それは成り行きでいいわ。消防車の機嫌次第では、すぐにでも飛んで行ってしまうかもしれないから」

「そうか。じゃあ、あたしたちも小休止! ただし、ここの境内からは出ないように! お迎えが来たときに間に合わなくなるからね!」

 ウーーッス

 ルーズな返事がして、九十人の少女たちは境内のあちこちに散った。ケイのほかに十数人が消防車の周りに集まってくる。

「懐かしいわね、ボンネットスタイルの消防車だなんて」

「あ、あなた……」

 ボンヤリした記憶だったけど、この子は覚えてる。

――告白もしてないのにフラれるわけないでしょ!――

 みんなからイジられて、赤い顔して抗議していた意外に純情な子だ。

「ハハ、憶えていてくれて嬉しいなあ。でも、それ知ってたら名前は勘弁してね」

 頭を掻きながら、純情さんは行ってしまった。

「みなさん、ガルパンのメンバーなんですか?」

 ん?

 境内に散った九十人の視線が一ぺんに集まった。

 

 えと……いけないことを聞いてしまった……?

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、いまは家でゴロゴロ
  •  橘 なつき    中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問
  •  柳沢 琢磨    天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス
  •  北白川綾乃    真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲
  •  福島 みずき   真凡とならんで立候補で当選した副会長
  •  伊達 利宗    二の丸高校の生徒会長
  •  ビッチェ     赤い少女
  •  コウブン     スクープされて使われなかった大正と平成の間の年号

 

 

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