大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・81『首を挿げ替える』

2021-05-30 08:53:45 | ライトノベルセレクト

やく物語・81

『首を挿げ替える』    

 

 

 フィギュアは大きく分けて二種類あるんだよ。

 

 材質?

 うん、それもあるんだろうけど、それは知らない。

 動くのと、動かないの。

 わたしの持ってるのは動くフィギュア。

 あちこちに関節が入っていてね、自分の好きなポーズがとらせられるの。顔や手首も、表情の違うのが三つほど付いていて、その時その時の気分次第で換えられる。

 桐乃は、やっぱり腕組みしてプンプンしてるのがいいし、黒猫はジト目でブスッとしてるのがデフォルト。

「うんうん、いいわよね、こんな風に自由に怒ったり笑ったりジト目してみたり、とっても素敵」

「そういや、チカコは、ずっと笑顔ね」

「ああ、あははは……(^_^;)」

 

 話が横道に入っている。

 

 電話を切ってから「明日の服装どうする」って話になった。

 チカコは、まるでお雛様みたいな姿なんだ。

「それって、大変でしょ?」

「出かける時は手首に戻るわ」

 そうか、チカコは手首がデフォルトだった。

「う……でも、それって」

「あ、ちょっと不気味?」

「あはは……」

 万一、人に見られた時に手首ってのはね(^_^;)

 それで、他のフィギュアの服装を参考にしようってことになって、フィギュアを見てもらってるってわけ。

 手首にだって化けられるんだから、首から下の衣装を変えるなんて、お茶の子さいさいだろう。

「うん。このゴスロリさんがいいかなあ」

「あ、黒猫」

「体格が近いし、桐乃さんみたいに、いきなりミニスカというのもね」

「うん、それがいいかも(^▽^)」

 賛同してあげると、チカコは予想もしない行動に出た。

 

 スポン!

 

 なんと、自分の首を抜いたのだ!

 抜いた首を腕に抱え、瞬間迷ってから、フィギュアの椅子に首載せると、首のないまま黒猫に近寄って、自分にしたように首を抜いた。

「えと……」

 首のないままの体で、自分の首を黒猫の体に嵌める。

「……うん、やっぱりピッタリだわ」

 数秒で首は収まって、まるで最初から、自分の体であったように馴染んでしまった。

「じゃ、黒猫さんは、こっちね……」

 黒猫の首を、それまでのチカコの体に嵌める。

 残念ながら、チカコのように喋って動くということは無かったけど、ちょっと頬が染まったような気がした。

 

 そのまま通学カバンに入れら、教科書に挟まれてペッタンコになりそうなので、使っていないペンケースの中に入ってもらうことにする。

 ファスナーを少し開けて、首が外に覗くようにもしてあげる。

 ホー へー ナルホドぉ

 学校に着くまでのあいだ、ずっと首を出して感心しきりのチカコ。

 ダミーに、マスコットのキーホルダーとかもぶら下げて、首を出しても簡単にはバレないようにしてあるので安心。

 校門に入る時、立ち番の先生のいつにない視線を感じて、ちょっと焦った(;'∀')。

 カバンにぶら下げたマスコットが、ちょっと不審なんだ。

 ダミーを含めて三つのマスコット。

 叱られるかなあ……と思ったけど、無事に通れた。

 たぶん、いつもはマスコットもキーホルダーも付けないわたしが、チャラチャラ三つも付けてるのが珍しかったんだ。

 

 放課後、すぐにお地蔵さんのところに行こうと思ったら、図書室当番だったことを思いだす。

 

「あ、インク切れた」

 図書カードの整理をしていた小桜さんが、ボールペンを投げ出した。

「あ、わたしの使って……」

 新刊図書に気を奪われていたわたしは、うっかり言ってしまった。

「サンキュ」

 小桜さんが、カバンを開ける気配がして『あ!?』っと思った。

 でも、遅かった。

「わ、五更瑠璃!?」

 小桜さんが、黒猫の本名を口にして驚いた(;'∀')!

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ)

 

 

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ライトノベルベスト『宇宙人モエの危機・3』

2021-05-30 06:20:59 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『宇宙人モエの危機・3』  




 グァムの日本臨時政府は、戦後の日本国史上初の防衛出動を自衛隊に命じた。

 国内の自衛隊は、今やおそしと出動準備を整えていたが、命令無しの出動はできないと自粛していたのである。

 帝国陸軍そっくりの宇宙軍は専守防衛の名の下に、自らは一発の弾も撃たなかった。全ての戦いを語ることは不可能なので、その幾つかを紹介するに留める。

 まず、国会周辺を中心に戦闘が開始されたが、これがまったく勝負にもなにもならなかった。大は10式戦車から、隊員が撃ち出す小銃弾にいたるまで、宇宙軍は全てを無力化して撃ち落とした。

 千代田区界隈は、またたくうちに、不発弾と化した砲弾や銃弾ミサイルで埋め尽くされた。

 日米安保条約により出動した米軍も例外ではなかった。巡航ミサイルでさえ、故障したラジコン飛行機のように、ドスンドスンゴロゴロと撃ち落とされた。

 二日目に入り、自衛隊は肉弾攻撃を仕掛けてきたが、ことごとく三八式小銃の餌食になった。三八式小銃に撃たれた隊員は死にはしない。ただ昏々と眠り続けるのである。すぐに救護隊が昏睡者を収容するが、18000人を超えたところで、その無駄な攻撃を知り、米軍を含め、戦闘を中止した。

「どうだ、これでいいだろうモエ。一滴の血も流さず、膠着状態に持ち込んだ。いずれやつらは根負けする」

「いったい、あたしはジョ-ンズにどんな救援依頼をしたの?」

「覚えてないのか、助けてと叫んだのを?」

「叫んだとこまでは覚えている」

「だから、モエが集めたデータを基にして、我々はできるだけ目立たず、もっとも効果的な方法で日本を含む極東の安定化を図りにきたんだ」

「目立ちすぎなのよ!」

「それは、モエの勉強不足だ」

「それに、あたしは『時をかける少女』の真琴みたくなりたかったの!」

「それは、無理だな。われわれにも時間を自由に操ることはできないからな」

 お父さん犬が言った。

「報告します。周辺諸国が日本の無力さを知り、周辺の島々を攻撃準備中であります!」

 ビートたけしが報告に来た。

「連合艦隊の出撃だ!!」

 ジョーンズは怪気炎をあげた。

 まず、対馬沖で戦闘の火ぶたが切られた。

 相手国は、空対艦ミサイル、艦対艦ミサイルを撃ち込んできたが、連合艦隊の空母赤城、加賀などから発進したゼロ戦によって、全ミサイルが無力化され、虚しく海中に沈んだ。

 連合艦隊を襲った戦闘機や攻撃機は、対空射撃により実物大の模型に変えられ、これもパイロット達は緊急脱出以外に手が無くなった。

 トチクルった某国は、核ミサイルを撃ち込んできたが、大和の46サンチ砲をまともにくらい、発射直後に角砂糖ミサイルに変わり、辺り一面に角砂糖をばらまいて、飢えた民衆に喜ばれた。

 隣国では、自国軍隊のあまりの不甲斐なさに、各地で暴動が起こり、事実上、国は五つほどに分裂。

 また、ある国では国家が崩壊し、多数の難民が出たが、宇宙軍は、難民と分かった時点で、船や飛行機を模型に変えてしまい。難民達は移動することも出来ず。極東地域は、日本以外ほとんど無政府状態になってしまった。

「これでいいのだ!」

 マッカーサーに化けた宇宙軍最高司令官ジョ-ンズは、厚木基地に降り立った飛行機にコーンパイプをふかしながら呵々大笑した。

「困るよ、ジョ-ンズ。極東はめちゃくちゃだよ!」

「極東は、元来メチャクチャなのが普通の姿なのだ。その中で一人日本だけが平和を謳歌する……日本人の理想じゃないか。モエ、おまえの報告も、救援依頼も間違ってはいなかった。あとはよろしく任務に励み給え」

 そうカッコだけつけると、降りてきたばかりのダグラスに乗って行ってしまった。

 モエは、あそこで階段から落ちなければ……と、後悔した。

   おわり   

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コッペリア・8『顔が描き終った』

2021-05-30 06:11:32 | 小説6

・8 

『顔が描き終った』 




 顔が描き終った。

 

 冷めたコーヒーを飲み干すと午前一時を回っているのに気が付いた。

 描きはじめたのは、夕方の五時だから、延々八時間も、この人形の顔と格闘していたことになる。

 身震い一つしてトイレに入った。描きはじめてから、食事はおろか、トイレにも行っていない。

 トイレから戻ると、床の上のおびただしい消しゴムのカスに気づいた。どうやら清書の前の下描きに大半の時間を費やしたようだ。

 よく見ると、清書した絵具もすっかり乾いている。

「これ、オレが描いたのか……」

 不思議な感じがした。描くのに苦労した感じではなかった。描くことによって、何かが降りてくるのを待っていたというのが正直な感想だ。

 そして、それは日付が変わったころに降りてきたんだろう、それからは一気呵成に描きあげ、描いた顔の造作に納得し、降りてきたものが、静もったのが、ついさっきだったのだろう。絵を描いているときにも、ごくたまに、こういうことがある。

 しかし、それで必ずしも傑作が描けるわけでもない。

 現に、今目の前にいる人形の顔は、アニメキャラのように目が大きい。なんの凹凸も無い口には一筆書きのように、薄い唇が一呼吸もしない間に描かれている。

 よく見ると口が微かに開いているように……いや、実際に口は三ミリほどの隙間で開かれていた。

「オレ、口開けちゃったんだ……」

 鉛筆の削りかすの中に、硬質ビニールの細いかけらが混じっていて、机の上には彫刻刀の箱が開けっ放しになっていた。

「やっぱ、服着せなきゃまずいな」

 颯太は仕上がりの時を予想してディスカウントストアで買ってきた仮装用の服とウィッグを付けた。ボールの関節がむき出しで、色気などはかけらもないが、顔を描くと、人形は、とたんに人に近いものになる。そのことを予想して、最低の衣装とウィッグだけは用意しておいていたのだ。

 服とウィッグを付け終ると、颯太は泥のように眠ってしまった。

 朝は、スマホの着信音で目が覚めた。

「お早うございます。神楽坂高校の校長の田中と申します……」

 さすが東京は反応が早い、ほんの一昨日登録したばかりなのに、都立神楽坂高校から、非常勤講師の口がかかった。颯太は眠気も吹っ飛んで、二つ返事で快諾した。

「つきましては、お顔も拝見したいですし、書類も見ていただきたいので、ご足労ですが、十時にご来校ねがえませんですか」

「はい、十時ですね。承知いたしました、よろしくお願いいたします!」

 切れたスマホに一礼して、颯太は一帳羅のスーツに着替えて、朝ごはんも食べずに部屋を飛び出した。

「あら、お隣さん。引っ越しのご挨拶以来ねえ!」

 部屋の鍵をかけていると、隣のセラさんが出てくるのといっしょになった。

「お早うございます。お早いんですね」

「今日はお休み。で、ごみほりの日だから、立風クンとこはゴミないの?」

「あ、溜まってるんだ!」

 颯太は、慌てて部屋に戻り、溜まっているゴミの袋を三つ抱えて出てきた。

「フフ、お安くないわね」

「え、なんですか?」

「靴を隠してもね、気配で分かるのよ。女の子の気配……」

「そ、そんなんじゃないですよ!」

「まあ、いいって。東京に来て半月。彼女の一人ぐらいできて普通だって」

 ゴミ置き場に手馴れてた様子でゴミを放り込むと、セラさんは同じ方向に歩き出した。

「お出かけですか?」

「まさか、こんなスッピンのジャージ姿で。コンビニに買い出し。立風クンは、仕事見つかったとか?」

「ええ、なんとか非常勤講師の口が」

「あら、立風クン、学校の先生?」

「え、ああ、非常勤だからバイトみたいなもんですけど」

「そりゃ、おめでとう! そうだ、お祝いに……これどうぞ」

 セラさんは、キーホルダーのビリケンさんを外して颯太に渡してくれた。

「前の立風さんからもらったものなんだけど、縁起がいいんだって、お守り代わりにどうぞ」

 颯太は、セラさんを気のいい人だと思った。

 孤独死した人からもらったお守りなんて、普通気持ち悪くて捨ててしまいそうなものだが、セラさんは大事にキーホルダーとして使っていた。くれる時も厄払いのような様子ではなく、颯太の仕事が決まったことを心から喜んでくれている様子だった。

 コンビニの前で隣人と別れると、駅への足取りが自分でも驚くくらいに軽い楓太であった。

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