大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・046『コスモスの鼻歌』

2021-05-19 09:51:21 | 小説4

・046

『コスモスの鼻歌』マーク船長   

 

 

 コスモスの鼻歌はクセモノだ。

 

 新しいことを思い付いた証拠で、そのたびに驚かされるのは単調になりがちな船内やベースの日常にはいい刺激なんだが、稼ぎの仕事以外ではのんびりしていたいオレには、ちょっと煩わしく感じる時がある。

 だけど、口には出さない。船長も歳だとかオッサンだとか、ピーチクパーチク言われるのが分かってるからな。

 宇宙や火星での生活の90%は退屈だ。

 ブツを運んだり、ドンパチ撃ち合ったりってことは、全部合わせても5%ほど。それ以外はマッタリ過ごすのが、俺の流儀だし、こういうペースを守っているからこそ、他の同業者に比べて生存率が高いと思っている。

 しかし、優秀なオペレーターであるコスモスには退屈なようで、しょっちゅうベースやファルコンZの改修をやっている。

「そりゃ、船長が、いつまでもポンコツの船とベースに満足してるからですよ」

 中古宇宙船をネット検索しながらバルスがこぼす。

「船を買い替えようってか?」

「改造も限界ですからね」

「オレはファルコンZがいいんだ」

「今すぐという話じゃありません。いざとなって、慌てて探したらカスを掴みますからね」

「そうか……そうだな」

 宮さまを引き受けたんだ、そこまで肩入れする決心はついていないが、覚悟と準備は必要だろう。

 しかし、言霊(ことだま)ってことがある、まだまだ、口に出して良いことではない。

「コスモスのやつ、今度はなんだろうなあ……先月はフェイクプールだったな」

「それは先々月です、先月はドームファームでした。もう、トウモロコシ……マースコーンが収穫できるって言ってました」

「ああ、リアルクッキングを目指してるんだったな」

「ええ、ファームの研究じゃ、扶桑将軍に一日の長があるようですが」

「うん、将軍は露地栽培らしいからな。成功したら規模の面では太刀打ちできないだろう」

「コンセプトは『明日の夢より今日のリアル』って言ってます」

「今度はなんだ? マースポテトかマースメロンか?」

「お、三菱いいいのが出てますよ」

「三菱ポテトか?」

「いいえ、船です」

「これで中古かあ? ゼロが九つも付いてるぞ」

「ハハハ、まだまだウィンドショッピングですよ」

「それなら、退役したてのエンタープライズでも買えそうだな」

「カガとイズモも買いますか」

 ウィンドショッピングも宇宙船クラスになると面白く、熱中してしまって、不覚にも真後ろで声を掛けられるまで気が付かなかった。

 

「船長、狩りにいきましょう!」

 

 振り返ると、古典ゲームの『モンスターハンター』のようなナリをしたコスモスが立っていた。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

 

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ライトノベルベスト・『二人の過年度生』

2021-05-19 06:38:31 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『二人の過年度生』  




 願書の提出の時から二つのことが気になっていた。

 見ようによっては、一つ……制服のこと。

 あたしは、あるミッションスクールに行っていたけど、家の経済的な理由で続けられなくなった。就学支援金を月々9900円もらったり、他の奨学金ももらったけど、やっぱりお嬢様学校と言われるS女学院は無理だった。支援金と奨学金を合わせても必要な額の半分ちょっと。
 もともと去年の夏ごろには、お父さんの会社の業績が上がることを織り込んでの無理な学校の選択だった。

 お父さんは「申し訳ない」「すまん」を繰り返していたけど、景気の落ち込みはお父さんのせいじゃない。

 もう完全にダメだと思ったころから授業にも身が入らず、成績は下がる一方だった。そんな生徒に救いの道は無い。
 がんばれば、二つぐらいの赤点で進級できないこともなかったけど、どうせ経済的に続かないことが分かっていたので、正月には退学を決めていた。

 で、過年度生として都立Y高校を受け直すことになった。

 担任の先生に相談に行ったら職業的な優しさで接してくれたけど、必要な書類は直ぐに揃った。あらかじめ親が話していたので、準備していたんだね。

 こういう受験を過年度生受験ということも知った。なんだかいかつい名称。

 可燃度生受験……なんて字を当ててみる……なんか火気厳禁て感じで、自分が危ない子になったようなイメージ。

 拍子抜けするくらいに手続きは簡単……と思ったら「この後は中学校に行ってちょうだい」と言われる。

 高校で出来るのは退学の手続きだけで、受験そのものに必要な書類は、とっくに縁が切れたと思っていた中学で揃えてもらわなきゃならない。

「これ、持っていきなさい」

 事情を説明すると、お父さんは2000円くらいの菓子折を持たせてくれた。

 過年度生の世話なんて中学にとっても余計な仕事なんだろうなあと、ちょっと気持ちが塞ぐ。

 Y高校には、願書の提出の時から制服で行かなければならない。あたしは校章を外しただけのS女学院の制服で行った。
 当然目立つ。中学の制服は、もう処分していたので致し方ない。菓子折まで持って行ったんだ、中学で「要らない制服があったら貸してください」くらい言えばよかった。経済的に困ってる子の為にプールしている制服があることは承知している。わたし自身、卒業と同時に寄付してきたんだから。
 

 けっきょく言い出せなくて、S女学院の制服。目立ってなにか言われることは無かったけど、視線は感じた。

 よく注意すると、視線を集めている生徒が、もう一人いた。

 これが、気になった、もう一つの事。

 ごく普通のセーラー服を着ているけど、あたしと同じく校章が無い。それに、よく考えれば今時セーラー服の中学なんて、めったにない。この子も、どこかの私立高校の過年度生か……チラリ見えた胸当てのマークは学習院高校のそれだった!

 受験会場で、あたしと、その子は浮いていた。S女学院も学習院もしつけは厳しい。受験前の座る姿から違う。姿勢も良く、机の上に置いた筆記用具や受験票が定規で測ったように行儀よく置かれていた。
 驚くことに、その子は消しゴムの削りかすも手で集め、机の一角にまとめ、試験が終わるとゴミ箱に捨てに行っていた。S女学院と同じ、いや、それ以上にビシッとしている。

 晴れて合格。

 入学式で、みんな同じ制服になると、あたしも学習院も、そんなに目立たなくなった。そして、あたしと学習院は同じクラスになった。

 朱に交われば赤くなるのか、郷に入れば郷に従えなのか分からないけど、あたしも学習院も連休前には、他の新入生と同じくらいのお行儀や言葉遣いになり、だれも、あたしたちを特別な目で見なくなった。

「あなた、S女学院の過年度生でしょ」

 似たような立場だったので、他の子よりは近い関係になっていた。それでも前の学校について話すのは、なんとなくはばかられ、連休明けの今日、初めて彼女が聞いてきた。
「うん、いろいろあって、続けられなくなっちゃって。最初は都立でやっていけるか心配だったけど、なんとかなるものね。あなたこそ大変だったでしょ……なんたって学習院なんだもん」
 声を小さくして、そう言うと、彼女はあたしの手を掴んで、グランドへ走って行った。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!?」

 グラウンドに着くと彼女は、腹を抱えて笑い出した。

「ハハハ……ああ、おっかしい!」
「どうかした?」
「あのセーラーが学習院だって気づいたのは、あんただけよ。なんたって、胸のマークが分かんなきゃ、ただのセーラー服だもんね」
「だって、あの時の行儀のよさとか、並の学校じゃないわよ。さすが学習院……ごめん、あんまり言わないほうがいいんだよね」
「あたし、学習院じゃないよ」
「え……?」
「I女子学園」
「え……?」
「女子少年院……」
 彼女は、測る様な目であたしを見ながら言った。
「あそこは、中高生的な制服とかないから、レプリカのセーラー買ったの。で、どうせなら学習院ぐらいのハッタリかまそうと思って」

「え……アハハハ」

 笑いが止まらなかった。彼女もいっしょに笑った。

「学習院のレプリカなんて高いんじゃないの?」
「ハハ、コスプレみたいなもんよ。基本は白線三本のセーラー服だからね、先生も気づかなかった……てか、気づいたのあんただけ!」
「アハ、そうなんだ!」

 ひとしきり二人で笑った。芝生にひっくりかえると青い空を雲がながれていく。二人の過年度生は、どうやら親友になれそうだ。

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真凡プレジデント・87《火曜の授業だぞ》

2021-05-19 05:55:15 | 小説3

レジデント・87

 《火曜の授業だぞ》     

 

 

 

 特に高尚な使命感とかがあってのことじゃない。

 

 三連休が終わって最初の授業。

「うそ、火曜日?」

 魂が抜けていきそうな半開きの口から間抜けな言葉を吐くなつき。たった今までホチクリ食べていたスナックの欠片が鼻の下の産毛に引っかかって、ヒラヒラ揺れているのも間抜けさを際立たせている。

「どーしよーーー、月曜とばっか思ってたから国語の教科書ロッカー……」

 黒板上のスピーカーは、ブーーーと虫のように唸っている。本鈴の直前にアンプのスイッチが入った音だ。取りにいったら確実に授業遅刻するだろう。

 この間抜けに、どう忠告してやるべきかと思っているうちに本鈴のチャイムが鳴った。

 キンコーンカンコーン キンコーンカンコーン……

 先生が、直ぐに来るわけでもないのだけども、教室はソワソワしている。え、マジー!? 聞いてねえよ! 信じらんない! 等々の声が聞こえる。

 どうやら三連休明けの間抜けはなつきだけではなかったようだ。

 待つこと数分、人によってはアタフタの数分がたって、教室前のドアから入って来た先生に、クラスの半分が戸惑った。

 え? え? なんで? てか、まちがってね?

 入って来たのは、日本史の担当にして生徒会顧問である藤田先生なのだ。

 火曜の一時間目は国語の授業で、担当は……すぐには名前の出てこない講師の女先生だ。

 そのことには驚かない。連休前の担任の説明をちゃんと聞いていたから。

 でも、藤田先生が来るのは想定外だ……あ、女先生が休みで、藤田先生は自習監督に来たんだ。

「よかったな、どうやら自習だぞ」

 なつきを安心させて、読みかけのラノベを教科書の下に忍ばせたところで先生が口を開いた。

 

「担任から聞いてると思うが、国語の奥田先生がお辞めになったので、今日から僕が授業をする……不思議かもしれんが、僕は国語の免許も持ってるんでな。日本史と合わせて週に五回も面突き合わせるのは嫌かも、いや、嫌に違いないが、これも運命だと諦めて欲しい……おやおや、教科書の出てない奴がずいぶんいるようだが……月曜と間違えたあ?」

「ロッカーに取りに行かせてください!」

 お仲間が多いのに勇気づけられて、なつきが手を上げた。

「う~ん……どうしてくれようかなあ……」

 藤田先生は、こういうことを頭から叱る先生じゃない。この、授業の雰囲気がまるでないクラスのテンションをどうしようかと、腕組みして思案しているのだ。付き合いの長いわたしには分かる……と、気が付いた。

 先生の組んだ腕が異様に日焼けしているのだ。

「先生、その日焼けは、どうしたんですか?」

 わたしが思っていたことを綾乃に先回りされた。

「え、ああ、これか」

 イタズラを見つかった子どものように、腕を撫でると、ため息一つついて、先生は語りだした。

 授業は成立しそうにないので、いわゆる余談で時間を消化しようと決心したんだ。

「実は、連休中は水害被害のボランティアに行っていてなあ……」

 

 意外な展開になって来た……。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、いまは家でゴロゴロ
  •  橘 なつき    中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問
  •  柳沢 琢磨    天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス
  •  北白川綾乃    真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲
  •  福島 みずき   真凡とならんで立候補で当選した副会長
  •  伊達 利宗    二の丸高校の生徒会長
  •  ビッチェ     赤い少女
  •  コウブン     スクープされて使われなかった大正と平成の間の年号
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