大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・44『ナキメを遣わす』

2021-06-10 09:06:30 | 評論

訳日本の神話・44
『ナキメを遣わす』  

 

 

 長男のアメノオシホミミには嫌がられ、次男のアメノホヒを遣わしましたがうまくいきませんでした。

 三度目の正直!

 アマテラスは、オモヒカネの献策で、血筋にはこだわらず、自分の子ではないイケメンのアメノワカヒコを遣わしました。

 ワカヒコは、地上に着くや、幸先よく、熊に襲われそうになっていたシタテルヒメを助けます。

 シタテルヒメはオオクニヌシの娘で、ワカヒコは難なく、オオクニヌシの娘婿に収まることに成功しました。

 

「そろそろ、お義父さんのオオクニヌシにお会いして、きちんとご挨拶したいんだけど」

「挨拶は、結婚するときにしたじゃありませんか。父の所に行ったら、歓迎会やら宴会に連れまわされて疲れるだけだから、また今度。それより、新しいベッドが来たから、二人で試しましょうよ(^▽^)」

「え、ベッドを試すって(#*´ω`*#)?」

「決まってるじゃない(#^_^#)、あ、な、た……」

「わ、わかったよ、シタテル……(#'∀'#)」

 

 気持ちの上では、一刻も早くオオクニヌシに会って、取り入るか、力づくで打ち倒すかの判断をしたいワカヒコですが、中つ国でも一番と謳われるシタテルヒメに言われては断れません。

「坊ちゃま、姫を襲っていたクマですがね……」

 高天原から付き添ってきた乳母のサグメが内緒話をします。

 サグメは、正式には天佐具売・天探女と書きます。命(みこと)の敬称が付かないので、神さまよりも一級下の巫女的な女だったと思われます。ちょっとひねくれた婆さんで、あることないことを告げては人を惑わす性悪女です。

 一説では、天邪鬼(あまのじゃく)の第一形体であったとも言われています。

 ワカヒコは、慣れない中つ国(地上)にまで付いて来てくれた乳母だと信じています。

「なんだ、サグメ?」

「婆やは思うんですよ。あの熊は、姫さまに横恋慕していた男のなれの果て。恋しい恋しいという気持ちが高じて熊に変身してしまったんだと」

「なるほど、意馬心猿という言葉もあるよな。恋しい女を目の前にしたら、馬か猿みたいに野生にかえってしまうって」

「そうでございますよ、アマテラスさまの意に沿うという坊ちゃんのお心は見上げたものでございますがね、禁欲的になり過ぎては、いざという時には、それこそ意馬心猿……」

「ん? どうなると言うんだい?」

「猿のようになって姫に挑んでは、爪や歯で姫を傷つけてしまうでしょう。万一、あそこが馬や熊のようになっては、姫のお腹を突き破ってしまうことにもなりかねません」

「そ、そうなのか!?」

「はい」

「じゃ、姫から誘われた時は、躊躇してはいけないなあ」

「まことに……」

 というやり取りを妄想するのですが、まあ、こんな感じであったのでしょう。

 ワカヒコは寝る間も惜しんで、姫に挑みかかります。

 

「どーゆーことですかあ!?」

 

 中つ国の攻略が進展しないことにいら立ったアマテラスはワカヒコの様子を窺って頭に来ます。

「えと、それでは、雉の精のナキメを遣わして戒めましょう(;'∀')」

 アマテラスはオモヒカネの進言に従って、メッセンジャーのキジメを送ります。

 ナキメが地上の宮殿に着いた時も、ワカヒコと姫はベッドの中で励んでいる最中です。

「高天原からの伝言! 伝言!」

 そう言うと、ナキメはアマテラスの声で詰問します。

「アメノワカヒコ! 身内でもないそなたを地上に遣わしたのは、中つ国の下品な神々をまつろわせて、高天原に従わせるためです! それを、オオクニヌシに会うこともせずに、朝っぱらから、なんというザマですか! 反省しなさい! 反省!」

「ちょ、なによ、この雉、気持ち悪いんですけど!」

 邪魔された姫は機嫌が悪い。

「こ、こんな雉、知らねえよ! ええい、こうしてくれる!」

 プシ!

 ワカヒコは、アマテラスに持たされた弓矢で、ナキメを居殺してしまいました(-_-;)。

 

 

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ライトノベルベスト・『となりのアノコ・5』

2021-06-10 06:34:49 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『となりのアノコ・5』  

 

 


 アノコの仕事はかぐや姫だった。

 ……では分かりにくい。

 この宇宙には、二つの連合組織がある。

 分かり易く、片方を銀河連邦。もう一方を銀河帝国と言っておく……念のため、これはアノコの説明のまんま。

 アノコもかぐや姫も銀河連邦から派遣された、特殊部隊員なのだ……そうだ。

 地球のように遅れた星は、時々コントロールというか、修正を加えてやらないととんでもない方向に進んでしまう。その修正にやってきたのが伝説のかぐや姫なのだ……そうだ。

 かぐや姫は、当時の世界の指導者の頭脳に刺激と修正を加え、地球の文明が、あるべき方向に進むようにした。しかし、彼女は、ボクのような協力者が居なかったために、任務半ばで帰還しなければならなくなった。それが美しくファンタジーな童話に昇華され『かぐや姫』の伝説になった。

 かぐやが失敗したあと、帝国軍がやってきて、草原の一部族長に力と才能を与えてコントロールした。

 それが、あのモンゴル世界帝国だったのだ。

 しかし、その帝国軍も恒常的に地球のような辺境の星にかまっていられなくなって、モンゴル世界帝国はチンギスハーン一代で終わってしまった。

 その後一千年あまりは、地球は人類の性癖に従って進歩してきた。

 しかし、その人類に銀河帝国が干渉しはじめた。21世紀になったというのに、19世紀のような動きをする国が現れてきたのだ。

 他国の領土を侵略したり、国内の少数民族を壊滅させたり、借金のカタに港湾や水資源を奪ったり、軍隊で縅を掛けたり……

 そこで、アノコが千年ぶりに地球に派遣された。

 つまり、アノコの義体は前任者のかぐや姫のもの……。

 国家主席の頭脳に二度目の刺激を加えにいったとき、国家主席は帝国軍のアンドロイドに入れ替わっていた。そのために、アノコは義体ごと重傷を負って、で……いろいろあって、今に至っている。

 今というのは、あれから10年後である。

 分裂する国は分裂し、崩壊する国は崩壊した。どうやら帝国軍の干渉は排除できたようである。

「もう、当分出動する必要はないみたい……」

 何千回目かのメンテナンスを終えてアノコが言った。

 アノコは、まだ17歳の女の子のままで、今はフェリペ学園に通っている。ボクもあいかわらず17歳のまま。さすがに元の生活は続けられず、二人は兄妹ということにして、アノコの両親をやっていたアンドロイドをそのまま親にして、日本全国を渡り歩いている。

「…………どういう……こと?」

 あいかわらず、ボクの反応は遅い。

「義体と本来のあたしが完全に癒着してしまって、あたしは、もう元の姿には戻れない。で、もうほとんど地球人と同じになってしまった。で、任務を解かれたの」

「それって……」

 気が付くと、両親のアンドロイドも居なくなっていた。

「いくつまで生きるか分からないけど、お互い当分は歳もとらなきゃ、死にもしないわ。お互い17歳の外見だから、ごまかせば二十代前半ぐらいには通るでしょ。それでもいい?」

「あ、うん、いいよ」

「……辛くなったら『コードβ』って、呟いて。明は、それで解除されるから」

「……今、ひっかけようとしただろう?」

「……明なら、ボンヤリしてるから『コードβってなに?』って聞き直すと思ったんだけど、ひっかからなかったわね」

「一生、その言葉は使わないよ」

「歳もとらないで死ねないのは辛いわよ」

「いいよ、ボクは。さ、それよりメンテナンスしよう」

「まだ三日も早いわよ」

「たまには、目的外のメンテナンスもしようよ」

「……そうね」

 アノコが横になって手を伸ばしてきた……。

 もし、あなたの隣に若すぎる夫婦が引っ越してきたら、どうぞよろしくお付き合いください。

 


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コッペリア・19『栞のフォーチュンキャンディー・2』

2021-06-10 06:12:48 | 小説6

・19 

『フォーチュンキャンディー・2』

 



 栞の『恋チュン』のコスプレ衣装はひどかった。     

「おかしいなあ……」

 颯太も、戸惑ってパソコンでMAMAZONを出して、注文したテナントのH・Sという業者のサンプルと見比べた。

「これ、別物だね」

 商売柄セラさんは、こういうコスの違いには敏感だ。颯太には、なんとなく違うとしか分からなかった。

「ようく見てよ、栞ちゃん、ゆっくり一周してみな」

 栞は、言われたようにマネキンのように、ゆっくりと回った、セラさんはボールペンの頭で指しながら解説した。

「いい、ウエストの位置が7センチほども高い。上着の裾は10センチ高い……つまり、胴長短足に見える」

「でも、これオーダーメイドなんだぜ」

「嬉しい(^▽^)!」

「喜んでる場合じゃない。ブラウスの襟ガバガバじゃん。帽子はちっこすぎる。頭に乗っかってるだけ。スカートはボックスプリーツだけど、これは単なるギャザースカート。パチモンだね……」

 セラさんは、そう言いながら画面をスクロールしていく。

「あ、この業者と同じ写真だ!」

「……ほんとだ」

 セラさんは、我が事のようにすぐに業者に連絡してくれた。

「……なんだってぇ、写真は試作品で、現物とは違いがある? バカにすんじゃないわよ。特定商法ってネット通販を規制する法律に書いてあるわよ。これは完全に誇大広告の上にサンプル写真の盗用……なに、返品してくれ、代金は返すから? 冗談じゃないわよ。証拠が無くなっちゃうじゃないの、これは証拠品として押えとく。MAMAZONには保証申請しとくから……え、こんなもの売りつけといて、よく言えるわよね、首洗って待ってなよ!」

 すごい剣幕でまくしたてると、セラさんはネットオークションを検索。たちどころに中古のコスを発見、五千円で二着落札した。

 落札したコスは、あくる日には届いた。栞とセラとでファッションショー。二人ともご機嫌であった。
 MAMAZONと落札したコス代は颯太の持ち出しである。

 商店会主催の『恋チュン大会』は大盛況だった。

 なんと、AKPから振り付けの担当と地元の放送局がやってきた。

 ノリのいいセラさんは、商店会長とテレビのディレクターと相談をぶった。

 三十分ほどすると、AKPのいろんなコスをした人たちや、近くの高校や大学のチアグループ。商店街のみなさんなど三百人が集まった。

 結局、AKPの振り付けさんが、居並ぶ恋チュン大好きさんたちに振り付け、いろんな場所やシュチュエーションで数十カットを撮った。

 その日の夜のニュースでは、ローカルニュースとして取り上げられ、ユーチューブのアクセスは五万を超えた。商店会も放送局も大喜びだった。

 その夜遅く、AKPの事務所でユーチューブを見ていたスタッフや、手空きのメンバーが、栞に注目した。

「この子、ロングで撮ると萌絵そっくりだわね……!」

 AKPから公認が出たのは当然だったが、その後意外な運命の展開があるとは、誰も気づかなかった。

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