鳴かぬなら 信長転生記
そいつは、崖の上から団扇みたいなのヒラヒラさせながら降りてくる。
ゾロッとしたワンピースみたいなの上に、それよりも裾の長いガウンみたいなの着て、薄ら笑い浮かべながら降りてくる。
こいつ、ルックスはまあまあなんだけど、きっと体の線に自信ないんだ。自信があったら、あんなゾロっとしたの着ないと思う。茶姫とかの三国志の美人は、みんなミニスカで、胸元も大きく開いたの着てるし。
むろん、わたしの近衛騎兵のコスだって、胸甲の下はミニスカにニーソで決めてるし。茶姫はガーターベルトの留め具を赤いルビーで際立たせている。
フフフ
「シイ、何がおかしい?」
「ううん、なんでも……」
勝った! あ、いや、そいつは大したことないと思った瞬間、気まぐれな谷風が噴き上がってきた。
ブワア
谷風は、そいつのガウンとワンピを遠慮なくまくって、胸元まで露わにしてしまった!
オオ( ゚Д゚)!
遠慮のないどよめきが起こる。
面積の少ない下着を付けた体は、そこらへんのグラドルも真っ青ってくらいにイケてる。
こいつ、谷風まで計算に入れて崖の上に立っていたのなら、ちょっと策士だ。
一秒にも満たないアクシデントを平然と受け流し、茶姫の前に立つと、クールな笑顔で挨拶した。
「蜀の丞相を務めております、諸葛茶・孔明でございます。わざわざの起こし、主・玄徳に成り代わりご挨拶申し上げます」
「これはこれは、丞相殿の御高名はかねがね伺っておりました。その丞相殿自らのご挨拶いただき痛み入ります。わたくしは魏王・曹操の妹にして騎兵師団長を務める曹茶姫です。転生国打通進軍の帰路、国王・劉備玄徳殿に領内通過のご挨拶いたしたく参ったしだいです。よろしく国王陛下にお取次ぎのほどを願います」
「よくぞ参られました、転生国打通の噂は、この蜀にも届いております。主・劉備玄徳も、あの鮮やかな打通作戦には大層な関心をもっております。いずれは、使者をたて、相応のご挨拶のうえご高説賜らんと申しておりました。さっそくにご案内申し上げたく存じます。これ、関羽、張飛、心してご案内申し上げよ」
「「承知!」」
こうして、筋肉バカの二将軍に先導されて、函谷関に向かう我々であった。
グゴゴゴ……
高さ66メートルの城壁に設えられた門扉は、それだけで50トンはあろうかと思われる黒鉄の逸物で、開く音が、まるで地中を龍が這うごとくである。
関内に入ると、すでに検品長が馬を引き連れて入関していた。
「蜀の許可は得ています。ここからは、騎乗してお進みください」
「茶姫の部隊は血の巡りがいい」
「そうだね、言いたかないけど、ニイチャンとこのサル(秀吉)とかイヌ(前田犬千代)のようだ」
「成都は広い都ですが、これだけの騎馬部隊を収容することはできません。関羽に案内させますので、東の牧にお待たせください。都城には百騎のみお連れくださいますよう」
「心得た丞相殿。検品長、百騎の近衛を残し残りを牧へ移せ」
「茶姫」
「なんだニイ?」
「俺も牧にまわってからの同行でいいか?」
「構わんが、どうしてだ?」
「俺たちのものではない蹄の跡が……ほら、あんなについて、牧の方角に続いている」
「備忘録!」
「はい、備忘録、これに」
「蜀の役人にあたって、この後の段取りを決めてこい」
「はい」
「ニイ、備忘録より報告を聞いてから行け。劉備との面接には立ち会え」
「承知した」
「シイも一緒に行く!」
「フフ、シイはお兄ちゃん子なんだな」
「ち、ちがうし(~_~;)!」
茶姫も一言多い!
☆ 主な登場人物
織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
織田 市 信長の妹
平手 美姫 信長のクラス担任
武田 信玄 同級生
上杉 謙信 同級生
古田 織部 茶華道部の眼鏡っこ
宮本 武蔵 孤高の剣聖
二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
今川 義元 学院生徒会長
坂本 乙女 学園生徒会長
曹茶姫 魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長)弟(曹素)