魔法少女マヂカ・284
くたびれているのは綾香ネエのケルベロスだけではなかった。
ゴホゴホ……
遅刻して学校に行くと、咳き込みながら階段を下りてくる安倍先生に出会った。
「真智香は来れたんだ」
「風邪ですか?」
「ああ、ちょっとね。調理研のみんなも具合悪いみたい、友里も清美も休んでるし、ノンコはさっき早引きしたよ。サムは異世界人だから来てるけど、真智香は休みだと思ってたよ」
「うちの姉も倒れてます」
「ケルベロ……綾香さんも?」
「ええ、昨日、魔王が治療の為に引き取っていきました」
「ああ、あいつは頭が三つで胴体一つだもんな。姿そのものから無理してるって感じよね」
「魔王が引き取った時は、普通の黒い子犬でした。あれが元々だとしたら、ちょっと不憫です……」
「詰子ちゃんは?」
「あの子は元気です。今朝も、朝ごはん作ってくれて、先に行きました」
「やっぱり、並みの女子高生が魔法少女やってるのは無理があるのかもね」
「先生は大丈夫なんですか?」
「あたしは、アキバのメイドクィーン、バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世だ。セントメイドの称号は伊達じゃないぞ」
「ああ、でしたよね……」
「こら、人の体の線を観察するんじゃない(;'∀')!」
「あ、いえいえ、とてもアラフォーとは思えない外形ですよ。ゴホゴホ……」
「これ飲むか、アキバのミケニャンが届けてくれたんだ」
「なんですか?」
「メイドリンクだ。アキバのメイドは、少々の風邪やら体調不良でも、いつも元気な笑顔で『ご主人さま~(^^♪』をかまさなきゃならないからな。密かに出回っている秘薬だ」
「効くんですか?」
「あたしも、さっき飲んで、とりあえず熱は下がった」
「いただきます……」
グビグビと、黄色いドリンクを一気飲みする。
「ゲフ……なんだか、力が湧いてきますね……成分は……」
「見ない方がいい」
「それって……」
「「アハハハハハ」」
大しておかしくもないのに笑えてしまうのは、やっぱり、お互いに疲れているからだろう。
ブルブルブル……
二人の笑い声が共振したのか、おたがい、なんだか笑いながら振動している……じゃなくて、二人ともMSスマホ(魔法少女スマホ)が振動している。
「「出動命令だ!」」
こんな時に……と思ったが、体の方は反射的に動いて、本館一階の倉庫を目指した。
一階の倉庫は基地への転送室になっていて、いそいで飛び込むと、すでにサムと詰子が待機していた。
※ 主な登場人物
- 渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
- 要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
- 藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
- 野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
- 安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
- 来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
- 渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
- ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
- ガーゴイル ブリンダの使い魔
- サム(サマンサ) 霊雁島の第七艦隊の魔法少女
- ソーリャ ロシアの魔法少女
- 孫悟嬢 中国の魔法少女
※ この章の登場人物
- 高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
- 春日 高坂家のメイド長
- 田中 高坂家の執事長
- 虎沢クマ 霧子お付きのメイド
- 松本 高坂家の運転手
- 新畑 インバネスの男
- 箕作健人 請願巡査
- ファントム 時空を超えたお尋ね者