大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・284『魔法少女はくたびれている』

2022-07-23 09:57:51 | 小説

魔法少女マヂカ・284

『魔法少女はくたびれている語り手:マヂカ 

 

 

 くたびれているのは綾香ネエのケルベロスだけではなかった。

 

 ゴホゴホ……

 遅刻して学校に行くと、咳き込みながら階段を下りてくる安倍先生に出会った。

「真智香は来れたんだ」

「風邪ですか?」

「ああ、ちょっとね。調理研のみんなも具合悪いみたい、友里も清美も休んでるし、ノンコはさっき早引きしたよ。サムは異世界人だから来てるけど、真智香は休みだと思ってたよ」

「うちの姉も倒れてます」

「ケルベロ……綾香さんも?」

「ええ、昨日、魔王が治療の為に引き取っていきました」

「ああ、あいつは頭が三つで胴体一つだもんな。姿そのものから無理してるって感じよね」

「魔王が引き取った時は、普通の黒い子犬でした。あれが元々だとしたら、ちょっと不憫です……」

「詰子ちゃんは?」

「あの子は元気です。今朝も、朝ごはん作ってくれて、先に行きました」

「やっぱり、並みの女子高生が魔法少女やってるのは無理があるのかもね」

「先生は大丈夫なんですか?」

「あたしは、アキバのメイドクィーン、バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世だ。セントメイドの称号は伊達じゃないぞ」

「ああ、でしたよね……」

「こら、人の体の線を観察するんじゃない(;'∀')!」

「あ、いえいえ、とてもアラフォーとは思えない外形ですよ。ゴホゴホ……」

「これ飲むか、アキバのミケニャンが届けてくれたんだ」

「なんですか?」

「メイドリンクだ。アキバのメイドは、少々の風邪やら体調不良でも、いつも元気な笑顔で『ご主人さま~(^^♪』をかまさなきゃならないからな。密かに出回っている秘薬だ」

「効くんですか?」

「あたしも、さっき飲んで、とりあえず熱は下がった」

「いただきます……」

 グビグビと、黄色いドリンクを一気飲みする。

「ゲフ……なんだか、力が湧いてきますね……成分は……」

「見ない方がいい」

「それって……」

「「アハハハハハ」」

 大しておかしくもないのに笑えてしまうのは、やっぱり、お互いに疲れているからだろう。

 ブルブルブル……

 二人の笑い声が共振したのか、おたがい、なんだか笑いながら振動している……じゃなくて、二人ともMSスマホ(魔法少女スマホ)が振動している。

「「出動命令だ!」」

 こんな時に……と思ったが、体の方は反射的に動いて、本館一階の倉庫を目指した。

 

 一階の倉庫は基地への転送室になっていて、いそいで飛び込むと、すでにサムと詰子が待機していた。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔
  • サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
  • ソーリャ         ロシアの魔法少女
  • 孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • ファントム      時空を超えたお尋ね者

 

 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・12『あ、松ネエ!』

2022-07-23 06:35:58 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

12『あ、松ネエ!』

 

 後悔はしねえが困ってしまった。

 シグマに「俺に任しとけよ、堂本先生の数学は経験済みだから」なんて言ってしまったけど、俺自身、数学はからっきしだ。

 ノリスケと並んでの下校中、なにかアテはないかと聞いてみたくなったが、こいつも勉強は俺とおっつかっつ。二人とも知り合いに優等生はいない。思わずため息をついたら「月曜からテストだもんなー」と大局的には外れていない相槌が帰ってくる。まさかシグマの心配をしているとは言えない。

「くそ」

「ハハ、新作エロゲやりたくって仕方ねえんだろ」

「バ、バカ言ってんじゃねーよ」

「俺もテスト中に督促したりしねーからよ」

 ノリスケに罪はないんだけど、無性にムカついてしまう。

 

 なんで、こんなに秘密や心配事を抱え込まなくっちゃいけないんだ!

 

 家に帰ると人の気配が無かった。

 廊下を茶の間に向かっていると、ジャーゴボゴボと水の音。

 とっさに首を巡らせると、トイレのドアが開いて小菊と至近距離で目が合ってしまう。

「ト、トイレの前に立ってんじゃないわよ!」

「いま帰ったとこだ、いちいちつっかかんなよ」

「ふん!」

「小菊の他には誰もいねーのか?」

「店の方よ、あたしが受験前だから気を使ってくれてんの。あんただけだよ無神経なのは!」

「すまんな、気が利かなくて」

「ハアアアアアアアアアアア」

 こんな時間に受験勉強なんかしてるわけないんだけど、いっぱしの受験生みたいに盛大なため息ついて、小菊は茶の間に向かった。

 小菊に触発されて尿意を催す。

 トイレの便座を開けると、とり残されたトイレットペーパーが水の中でクルクル回っている。節水型トイレもいいけど、こういうとり残しはなんとかなんねーんだろうか。盛大に水を流してから用を足す。

『男のくせに二回も見ず流すんじゃないわよ、せっかく休憩に下りてきてんのに、気分悪いんですけどー』

 お前の使用済みが残ってたんだ!

 ま、それを言っちゃおしまいなので、台所で水を飲む。他にも飲み物は有るんだけど、俺は、つい水を飲んでしまう。

 まあ、東京の水道水は世界有数の飲める水道水なんだけどな。緑が似合う都知事に、ちょっとだけ感謝。

 ……店の方から微かに笑い声が聞こえる。

 うちは祖父ちゃんの代までパブをやっていたので、店がそのまま残っている。店の入り口と住居部分の間は防音構造になっているんだけど微かに音が漏れるんだ。

 しかし、小菊の勉強のためだとしたら、ちょっと気を遣いすぎてねーか。だいたい俺んときは……。

 ただいまー……。

 ドアを開けると、楽し気な家族の語らいがマックスになっていた。

 そして、その語らいの中心にいたのは……。

「あら、ゆう君!」

「あ、松ネエ!」

 それは、親父の妹の娘。俺には一つ年上の従姉である柊木小松(ひいらぎこまつ)であった。

 三年ぶりの従姉は、なんだか、とても眩しかった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)    高校二年  
  • 百地美子 (シグマ)    高校一年
  • 妻鹿小菊          中三 オメガの妹 
  • ノリスケ          高校二年 雄一の数少ない友だち
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉
  • ヨッチャン(田島芳子)   雄一の担任
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