大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 82『敵襲!』

2022-07-19 10:44:03 | ノベル2

ら 信長転生記

82『敵襲!』信長 

 

 

 敵襲!

 

 見張りの叫びに河原の兵たちは色めき立つ!

 茶姫も水着の上から甲冑を身に着け、太刀を佩いて、検品長が差し出した銃を構えた。

 その間、たったの10秒。

 緩むのも早いが、締まって戦闘態勢に入るのも早い。

 

「鎧脱いで逃げるのなら、あんたの勝ちだけどね」

 

 一瞬で分かる。シイ(市)は、越前金ケ崎のことを言っているんだ。

 浅井の裏切りにあって、越前で朝倉との挟み撃ちになると、妹の市は両口を縛った小豆袋で知らせてきた。

 瞬間で――袋のネズミ――と悟った俺は、5秒で甲冑を脱いで単騎で金ケ崎を逃げ出した。

 浅井朝倉の包囲が完成する前に、琵琶湖の西を都目指して駆けだした。

 我ながら見事な逃げっぷりで、浅井朝倉の連合軍が陣形を整えた時には、金ケ崎に残ったのは殿軍のサルの部隊だけだ。

 サルも空城の計(金ケ崎城に赤々と灯をともして籠城と見せかけて、さっさと逃げ出す。元は孔明のアイデアだけどな)によって、一晩朝倉軍を釘づけにして、からくも脱出に成功した。

 戦国史上最高、100点満点の退却戦を成功させたんだが、市は気に入らない。

 市は自分の知らせで、辛うじて60点ぐらいで間に合うというシュチエーションを期待していたんだ。織田軍の半分くらいは擦り減って、俺も逃げる途中にヘゲヘゲになって、恐怖でヨダレやらウンコ漏らして、みっともなく逃げ戻ることを期待していたんだ。

 浅井を滅ぼして、娘三人と共に救出してやったとき、市は、こう言いやがった。

「サルは嫌いだけど、金ケ崎の時のサルだけは同情したわよ。成功したからいいようなもんだけど、あの状況じゃ、サルは普通討ち死にして首取られてるわよ! あんた、サルを使い捨てにするつもりだった!」

 市でなきゃあ、その場で切ってたぞ。

 いや、本当は、一発張り倒そうかとは思った。

 だけどな、お前にしがみ付いて震えていた三人の姫、茶々・お初・お江の姿、特に茶々は小さいころの市に似ていてた。サルも「まずは、御休息のほどを!」って、俺が手を挙げる寸前にかましやがる。そんな、サルの気の利きようにも、おまえ、ムカってしていたよな。

 

 で「敵襲」だが、馬蹄の響きはたかだか十数騎だ。威力偵察というのにも心もとない。

 対岸に砂煙があがる様子もない、地元の地侍級が挨拶にでも来たか?

 違った。

 従者の持つ旗印に、さすがの俺も、ちょっと驚いたぞ。

 

 それは、酉盃や豊盃の街で傍若無人に振舞い、茶姫の命令で、とっくに洛陽に帰っているはずの曹素だったのだ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
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漆黒のブリュンヒルデQ・060『梅雨と東京アラート』

2022-07-19 08:05:01 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

060『梅雨と東京アラート』 

 

 

 
 ……東京アラートって終わったよニャー?

 豪徳寺のわき道に入ったところで、声を潜めてねね子が聞く。玉代は初めての日直で一足早く家を出ている。

「ああ、十一日で終わったはずだぞ」

「夕べ、点いていたニャ」

「え?」

「寝苦しかったんで、豪徳寺の大屋根に上って涼んでいたニャ……すると、点いていたニャ。都庁もレインボーブリッジも」

「夜間照明を見誤ったんじゃないのか? 昼白色なら、普通の夜間照明だぞ」

「真っ赤っかだったニャ。今朝のニュースで五十五人も罹患者が出たって言ってたしぃ」

「夢でも見たんじゃないか、おまえ、猫又のくせに怖がりだからな」

「こ、怖がりじゃないニャ!」

「そうかそうか、なにかの兆しかもしれない、気を付けなければな」

 茶化してやろうかと思ったが、目の色が真剣なので、当たり障りも面白みもない返事をする。

 さっきまで止んでいた雨が、ポツリポツリと降りだした。
 ねね子は気づかないようなので、傘を広げて差しかけてやる。

「あっさり認めたら、次の言葉が出てこないニャ!」

 傘の礼は言わずに突きかかってきた。

「次の角を曲がったら気を付けろ、妖がいるかもしれないぞ」

「ニャ!?」

 気配を感じたわけではない、黙っていると、神経が張り詰めて暴走しそうな気がしたから、張り詰める気持ちに目標を与えただけだ。角を曲がって何もなければ、いったん気が抜けて、学校まではもつだろうと思ったのだ。

 居たニャ!

 角を曲がる……え?

 意表を突かれた。なんと、電柱三本分ほどの前を、わたしとねね子が背中を見せて歩いている。

 妖が化けているのだ。

 歩調を落としてやり過ごそうかと思ったが、どうも、そうはいかない。

 後ろ向きでありながら、わたし達の方に近づいてくるのだ。

「おまえは、塀の上に駆けあがって、奴らの前を塞げ」

「ヒルデは?」

「一撃で倒す!」

「ラジャー!」

 スイッチが入ったようで、ねね子は塀の上に駆けあがって走り出した。

 オリハルコンを具現化すると同時に駆けだし、一気に間を詰め、空中に×印を描くように薙ぎ払った!

 
 ック!

 
 手ごたえが無く、振り払ったオリハルコンに振り回され、意に反してタタラを踏む。

「危ないニャ!」

 小癪にも、ねね子の真剣白刃取りに助けられる。ねね子の助けが無ければ、泥濘の路上を制服のまま転がっていただろう。

 振り返ると、二匹のアマガエルがケタケタと笑っている。

「おまえらか!?」

『カエルに怯えているようじゃ、もたないぞ、ゲコ』

『ひるでをひっかけてやった、ゲコ』

 にくったらしくゲコゲコ言うと、二匹のアマガエルはポチャンと側溝に飛び込んで流れて行ってしまった。

「アマガエルにコケにされたニャ」

「行くぞ」

 忌々しいが、ねね子を急き立てて学校への道を急いだ。

 こんなところに側溝などは無い。これ以上かかずらっては、面倒なことになると思ったからだ。

 
 あとで調べると、昭和三十年代までは側溝があったらしい。

 遅ればせながら、カエルに名前を付けてやる。

『ゲコ一号』『ゲコ二号』

 それから、カエルも側溝も現れることは無かった。


 ただ、東京アラートは、相変わらずねね子には見えている。

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • 玉代(玉依姫)           ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
  • お祖父ちゃん  
  • お祖母ちゃん            武笠民子
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・8『下足ロッカーにピンクの封筒』

2022-07-19 06:59:18 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

8『下足ロッカーにピンクの封筒』



 あやうくバレるところだった。

 昇降口に着いてロッカーを開けると、半分開けたところで上履きの上に乙女チックなピンクの封筒が載っているのに気づいた。

「すまん、ちょっとここで待っててくれ」

 先に行ってくれと言ってしまいそうなんだけど、そんなことをすればノリスケに勘ぐられてしまう。

 この場合は「待っててくれ」というのが自然だ。

 食堂の自販機でホットの缶コーヒーを買いハンカチに包んで昇降口に戻る。

「すまん、小菊のお詫び、とりあえずな」

「おーアッタケー」

 缶コーヒーを渡すと、両手で転がしたり頬っぺたにスリスリするところなど、ガキの頃から変わらないノリスケではある。

 教科書に紛らせてピンクの封筒を取り出す。

「でも、お詫びの本編は、あのエロゲな!」

「あ、ああ」

「あれはな『君の名を』って、なんだかヒットしたアニメ映画みたいなタイトルなんだけどよ(このタイトルのお蔭で、受け取ってしばらくは『なんだ、脅かしやがって、アニメのゲームじゃねえか(^_^;)』と思った。アキバの駅に戻る途中、オタクどもに気づかされる)十年に一本出るかでないかのエロゲの名作なんだってよっ!」

「そ、そーか(☆∀☆)!」

 手紙は、少し幼さの残る女子の字だ。

――めんどうかけました、放課後、別館の屋上で待ってます――

 シグマからの手紙だ、封筒見た時にピンときたけどさ。

 下足ロッカーにピンクの封筒、で、屋上で待ってます……この二点だけ取り上げれば、ラブコメの鉄板フラグだ。

 でも、リアルってのは違うんだよなーーー。

 アキバでの勢い、それにお祖母ちゃん危篤の電話にうろたえた姿、おれも、つい「俺に任せとけ!」なんて言ったけど、なんせエロゲだ。気楽に廊下なんかでは受け取れないんだろう。

 ふつう学校の屋上ってのは、事故の防止やら生徒のワルサ防止のために二重三重にロックされているもんで、その屋上に呼び出すと言うのが尋常じゃない。

 それに、これは俺も悪いんだけど、ゲームソフトの受け渡しの約束をした割には、お互いに番号の交換もしていない。スマホの番号を知っていれば、もっと簡単に済んだはずだ。

 屋上に通ずる四階の階段は、踊り場から上は鉄格子がハマっている。

 南京錠が……かけたフリになっていた。錠の部分が下りきっていないで、半回転ひねればば簡単に開く。

 屋上のドアはノブを回せば開いた。

 あれ?

 屋上にシグマの姿は無かった。

 鍵が二つとも開いていたから、絶対屋上に居るはずなのに……。
 

 あ!?

 考えたら、あの手紙には用件だけが書いてあって、名前が書いていなかった。

 状況から完全にシグマだと思っていた……。

 これは、だれか第三者にハメられたか!?

 そう思いついた時、背後でカサリと音がした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一(オメガ)     高校二年  
  • 百地 (シグマ)      高校一年
  • 妻鹿小菊          中三 オメガの妹 
  • ノリスケ          高校二年 雄一の数少ない友だち
  • ヨッチャン(田島芳子)   雄一の担任
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