大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 83『曹素の汚い計略』

2022-07-25 10:20:25 | ノベル2

ら 信長転生記

83『曹素の汚い計略』信長 

 

 

 なんで輜重隊が来るんだ(ꐦ°᷄д°᷅)!!?

 

 茶姫は激おこぷんぷん丸だ。

 無理もない、茶姫は銃装した近衛騎兵師団を引き連れ、卯盃(ぼうはい)を出発し、扶桑(転生国)の南辺をかすめて、その後の二日間で魏・呉の国境まで疾駆してきた。

 それは、銃装した騎兵の機動力・突破力を内外に示すと同時に軍事的に無欲であることを示すためである。

 万余の騎兵が集まろうと、騎兵だけでは大した脅威にはならない。

 騎兵一人一人が持っている銃弾は、縛帯に備えたカートリッジに四つ、弾数にして20発余りに過ぎない。銃に籠められているものを含めても25発。射撃すれば1分も持たない。

 扶桑の南辺をかすめた時に信玄と謙信が物見にきていたが、輜重を同伴しない編成を確認すると、さっさと帰ってしまった。茶姫の意図を理解したからだ。

 蜀の孔明も、すばやく理解すると、強硬派の関羽と張飛を退けてしまった。

 それが、恐らく最後の訪問地であろう、魏・呉の国境線に至って、本国の魏に帰したはずの輜重部隊が現れたのだ。

「すまん、茶姫。予定よりも半刻遅れてしまった。直ちに補給を行う!」

 曹素が手を挙げると、向こう岸から輜重の本隊がジャブジャブと川を押し渡って来る。

 曹素も本業の輜重に関してはバカではないようで、荷駄の上では輜重兵たちが、弾薬箱や糧秣箱を開けて直ちに騎兵一人一人に補給できる体制をとっている。

 茶姫が、その気なら、五分もあれば突撃体制がとれるだろう。

「ニイ、チュウボウが居ない!」

 シイが色めき立つ。

 無理もない、チュウボウ孫権は呉王孫策の弟だ、グズグズしていたら殺されるか人質に取られてしまう。

 おそらくは、身を隠していた警護の者が身を引かせたのだ。今ごろは警護の者ともども都の建業に向かって馬を走らせている。それに、チュウボウは写真を撮りまくっていた。ほとんどが茶姫の水着姿だが、その後ろには茶姫の部隊が映っている。孫策と、その重臣たちが見れば魏軍の奇襲部隊と見るに違いない。

 ジャラリ!

「我らが兄君にして、魏王、曹操の命令書である! 謹んで聞け!」

 音をさせて竹簡を広げると、茶姫が声を発する前に宣言する曹素。

 宣言されては、茶姫といえど慎まねばならない。騎馬の部下たちが反射的に下馬するのに習って蹲踞する茶姫。

「この度の奇計、誠に見事である。朕は我が妹であり近衛都督である曹茶姫の意を嘉し、呉王孫策と王弟孫権の誅殺と呉の討滅を命ずるものである。よく我が意を帯し、曹素を副将とし、もって天下の太平の基を開け。三国志嘉吉三年、魏王曹操!」

 ジャラ!

 大仰に勅命の竹簡を示すと、卑しい微笑みを浮かべる曹素。

 ギリギリギリ……

 ここまで茶姫の歯ぎしりが聞こえてくる。

 このくそ曹素……!!

 シイも負けずに憤怒に呼吸を乱している。

 茶姫が、常に冷静で忍耐強い選択と決意ができることは、この三国志にきてからの付き合いでよく分かっている。

 さあ、茶姫、この危機に、どのような決断をするのか!?

 

 中天に差し掛かろうとする日輪が悪逆の曹素を後ろから際立たせる。まるで、魔王のシルエットだ!

 

 一瞬の殺気!

 刹那の逡巡を憶えたが、戦国の争乱で鍛えた体が反応した。

 茶姫の肩が震えた瞬間に悟った、茶姫は自刃する!

 次の瞬間、茶姫は太刀を抜いて己が首に擬した。

 キエーーー!

 フロイスをもって『時に信長は怪鳥のごとき奇声を発して電撃の如くに行動する』と言わしめた声を発して茶姫に飛びかかると、太刀を叩き落とし、そのまま抱えて馬に飛び乗る!

 瞬時に鞭を当てると、馬は瞬発した!

「なにをする、ニイ少佐!!」

 茶姫が俺をなじったのは、その直後であるが、すでに二人を乗せた馬は風を切って南への街道を疾駆し始めている。

「ニイちゃーーーーん!」

 シイだけが、幼い日に清州の街に遊びに行き、興に載って駆け出した俺に置いてけぼりを喰らった時、その時と同じ怒りと不安の叫びをあげながら付いてきた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  •  

 

 

 

 

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・066『大出井老人と出会う』

2022-07-25 06:26:02 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

066『大出井老人と出会う』 

 

 

 

  正直言って手が回らない。

 
 何がって? 

 ウィルスよ、琥珀浄瓶の奴が日本に残した置き土産。

 自分の家に関わるものはアスクレピオスのお札で封じたけど、お祖母ちゃんのマイバッグ。そう、日本中の婆さんたちがエコだと信じて懐に忍ばせている怪しげなやつ。市販のもあるけど、年寄りは変に器用だったりして手製のマイバッグというのが流行ってる。

 お祖母ちゃんはレザークラフトとかが得意で、マイバッグなんてササッと作れてしまって「武笠さん、すてき!」なんて言われるものだから、しこたま作ってあちこちに配ってしまった。それに琥珀浄瓶の置き土産たちが憑りついて東京中に広まってしまった。

 今日も新宿まで出張って、お祖母ちゃんがまき散らしたウィルス共を退治しての帰り道。

「見て、家ん方角に怪しげな気が満ちちょっ」

 改札を出たところで玉代が立ち止まった。

「え?」

 玉代の視線を追うと、切れ切れに怪しげな気が立ち上っている。マーブル模様というかパッチワークというか、複数の気が混じり合って正体が分からなくなっている。

「ちょっと急ごう」

「うん」

 角を曲がったら家が見えるというところでねね子に出会った。

「ねね子」

「あ、紹介するニャ」

 ねね子は遅れて付いてきた老人を示した。

「大出井のお爺ちゃんニャ、武笠のお爺ちゃんお婆ちゃんのお知り合いで、ちょっとお散歩に出たいとおっしゃるのでお供してるニャ」

「は、はあ。武笠の孫です、こちらは親類の玉代……」

 不得要領に挨拶、老人は尋常でないオーラをまとっている。玉代も、それが分かっているのだろう、ペコリと頭を下げてただけで、ボーっとしている。

 どうも人間ではない感じなんだけれど、悪意や害意は感じない。

 いったい何者?

「大出井です、いやあ、元気でやっているようで、取りあえずは安心」

「えと、わたしのことご存知なんですか?」

「そりゃあ、わしは……いや、それよりも家が大変なことになりそうで。わしは、こちらの世界では力が振えんので、散歩と言って出てきたんじゃ」

「お爺ちゃん、何ものニャ?」

 ねね子の質問には応えずに老人は続けた。

「それは後じゃ、とりあえず平気な顔で家に帰りなさい。アイスを食べることになるだろが、わたしが持っていったほうのがクーラーボックスに入っている。そっちにしなさい。クーラーボックス以外のアイスを食べてはならない」

「あ、ああ」

「時間をかけては怪しまれる、自然な感じで帰りなさい。わしは、怪しまれぬよう一回りしてから戻るから。さ、ねね子ちゃん」

「う、うんニャ!」

 
 豪徳寺の方へ行くねね子と老人を見送って、玉代と二人家に向かった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • 玉代(玉依姫)           ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
  • お祖父ちゃん  
  • お祖母ちゃん            武笠民子
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・14『今日は数学のテストだ』

2022-07-25 06:04:13 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

14『今日は数学のテストだ

 

 

 返事をしてから後悔した。

 メールだったら即断ってただろう。

 大勢で受ける教室の授業でも苦痛なのに、マンツーマンの個人授業なんてあり得ないから。

 マンツーマンなんて、地上100メートルの綱渡りみたい、とても踏み出せるもんじゃない。

 でも。

 先輩の電話は声までωなんだ。先輩の従姉さんという女性に教わることが、なんだか渋谷のスクランブル渡るくらいに気軽に感じる。

 先輩の家も幸いした。

 普通にリビングとか先輩の部屋だったらどーしようと、先輩の家に着くまでドキドキだった。

 この角曲がったら到着という時は、もう手の平がシャレじゃなくてアセビチャだ。

 渋谷のスクランブルは再び地上100メートルの綱渡りになった。

 でも、通されたのは喫茶店というかスナックというか、お店だった。

「むかしパブとかやってたから、店のまんまなんだ」

 パブの意味が分からなかったけど、地上100メートルは体育館の舞台ほどに低くなった。体育館の舞台ならスカートに気を付けてさえいれば飛び降りられる。

「いらっしゃい美子(よしこ)ちゃん。ゆう君の従姉の小松よ、ま、とりあえず座って」

 小松さんの口もωだ。体育館の舞台は、さらに机程に低くなった。

――美子ちゃんの数学苦手は先生が嫌いだからじゃないかな――

 小松さんの指摘は当たっていた。堂本先生は、今まで習ってきたどの先生よりも苦手だ。

 小松さんに教わってみて気が付いた。

「数学は暗記じゃないんだよ、公式や定理が成り立つ理屈を理解しなきゃ、とってもつまらないんだよ」

 最初の一時間は二つの公式と定理の説明に費やされた。

「ね、理屈が分かれば親しみやすいでしょ(^ω^)」

 堂本先生は逆だ。基礎は理屈抜きで丸暗記して問題の数をこなせとしか言わない。

 お昼に美味しいサンドイッチが出た。

 サンドイッチが人の名前だということを知ってビックリ!

 イギリスのサンドイッチ侯爵が、チェスをしながら食べられるものとして発明したそうだ。

 あたしたちも、サンドイッチつまみながらマンガ見たり、思いついて数学の続きやったりになる。

「あたしって、基本的にながら族だから」

 アハハと笑いながら小松さん。とても親近感。
 
 サンドイッチが切れたころで、お祖父さんがフライドポテトを作り始めた。

 フライドポテトを作るところを始めて見た。
 
 ジュッバーー!

 油に投入した瞬間、ジャガイモらしからぬ陽気な音がする。正直びっくり。

 ジャガイモが、こんなに饒舌だとは思わなかった。

 小松さんも、髪をポニテにし、腕まくりして調理に参加した。

 大きなザルにクッキングペーパー布き、ドバっとフライドポテトをぶちまける。

「こんなに大きなお皿使うんですか!?」

 60センチほどの大皿にビックリ。

「冷ましてから二度揚げにするんだよ」

 みんなで団扇持ってお祭りみたいに扇ぐ、盛り上がって来た。

 とうとう高さなんて無くなってしまった。

 二度揚げしたのをホチクリ食べながら午後の部。

 あんなに嫌だった練習問題が三十分ほどで完了。

 勉強だけじゃないだろうけど、人間がやることは環境とか雰囲気がとても大事なんだと実感した。

 気が付くとカウンターの中で女の子がフライドポテトをつまんでいる。

「あ、妹の小菊」

 先輩の声にペコリとした顔は、あたしと同類の印象だ。

 家に帰ってから思った。

 先輩は妹の小菊ちゃんを紹介する以外、ほとんど喋らなかった。

 あたしが、寛ぎながら勉強できる空気を作ってくれたのは先輩だったんだ。

 今朝、学校の昇降口でいっしょになって、そのことを言ってみた。

「基本的に苦手なんだよ女の子ってのは」

「え、あたしもなんですか?」

「あ、いや、それは……」

 深く追求しないでお互いの教室に向かった。

「シグマ、なにかあった?」

 前の席のアツコが手鏡向けながら言う。

 手鏡に映る自分に少し狼狽えた。あたしは笑顔の似合わない女だ。

 一時間目は堂本先生の数学のテストだ。

 ウソみたいにスラスラと解ける。小松さんのお蔭だ。

 二十五分たったところで堂本先生が巡回に来る。

 あたしの横に来ると、出来上がって伏せて置いた解答用紙をふんだくられる。

 一瞥した後、ピクリと眉を動かし「フン」と鼻息。

「しっかり見直しとけよ」

 捨て台詞とともに、ビシャリと解答用紙を置く。

 数学が嫌いなのは、堂本先生のこいうところなんだと再認識。

 家に帰って『君の名を』を思いっきりやった。

 少し気持ちが浄化された。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)    高校二年  
  • 百地美子 (シグマ)    高校一年
  • 妻鹿小菊          中三 オメガの妹 
  • ノリスケ          高校二年 雄一の数少ない友だち
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉
  • ヨッチャン(田島芳子)   雄一の担任
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