大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 93『リュドミラの胡旋舞』

2022-11-11 15:02:41 | ノベル2

ら 信長転生記

93『リュドミラの胡旋舞』織部 

 

 

 似て非なるものだ!

 

 怒っているのかと思った。

 広場の胡旋女たちを目に止めると、リュドミラは吐き捨てるように言った。

「コサックダンスはもっと激しい! もっと速い! もっとカッコいい!」

「あんまり大きな声で言うな、ここは三国志なんだよ」

「これは、カザフスタンやタジキスタンの温い踊りだ!」

「そ、そんな怒ることはないだろ」

「怒ってるんじゃない、血が騒いでいるんだ!」

「そ、そうなのか(^_^;)?」

 返事の代わりにリュドミラはリズムを取り出した。

「……タンタタ タンタタ タンタタ タンタタ……うん、リズムはいっしょだ……タンタタ! タンタタ! タンタタ! タンタタ!!」

 そして、ごく自然に胡旋女たちの中に入って行くと、胡旋女たちの倍以上に激しく大きく踊り出した!

 胡旋女たちが一回転する間に、リュドミラは二回転する。

 そして五回に一回は高く大きくジャンプして空中で数回転して着地し、次には体を斜めに旋回させ、まるでベーゴマの親分がヘボのベーゴマを弾き飛ばすように胡旋女たちを駆逐して、広場を独壇場にしてしまった。

 胡旋女たちも、それを不快に感じたり萎縮したりすることなく、手を叩いてリズムをとり、自然にリュドミラのバックダンサーになっていった。

 楽団のおっさんたちも、曲を自然に激しいものに変えていく。それまでニ三重だった観客は、その外側に一重二重と増えていき、広場を埋め尽くしそうな勢いになってきた。

 それにつれ、リュドミラのダンスは、さらに激しく大きくなり、前転、バク転、二回宙返りの前転、バク転、さらには体を大の字に開いて、そのまま跳躍して、空中で大の字のまま手足の先をタッチさせるという素人目にも男のダンスだろうというものまで披露する。

 旋回の大きさ激しさ、跳躍の高さ、まるで、窯の中で茶碗を焼く炎の精が顕現したようだ。

 

 パチパチパチパチパチパチ! ブラボー! パチパチパチパチパチパチ! ブラボー! ブラボー!

 

 賞賛の嵐になってしまった!

「これはコサックダンスだな!」

 ドラムをたたいていたオヤジが頬っぺたを真っ赤かにして寄ってきた。

「いやあ、親方から噂には聞いていたがな、なんせカスピ海の向こうだ。漢人のまがい物は見たことがあるが本物は初めてだ! 明日から、いや、これからでも俺たちといっしょにやってみないか!?」

「え、ええ、わ、わたしが!?」

「いきなり倍のギャラは出せないが、なあに、あんたの腕なら、すぐに投げ銭は倍になるだろ。そうしたら、このくらいは出してやる。衣装も用意しておく、明日から来てくれ!」

 オヤジは袖の下で相場の三倍ほどの金額を提示した。

「え、あ、ええと……(#◎o◎#)」

 

 その場の勢いで、つい本気になってしまったが、終わってしまうと元の無口な女兵士。俯いてワタワタするばかりだ。

 

「その胡旋舞、楽団ごと雇います」

 いつの間にか江南の宮仕えという感じの女が寄って来ていて、笑顔で話しを持ちかけてきた。

 扇の下で示している金額はオヤジの五割り増しだった!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・21『……と言えば大阪だ』

2022-11-11 06:42:46 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

21『……と言えば大阪だ』  

 

 

 課題は、社会科(正式には地歴公民科っていうんだけど、だれも、そんな長ったらしい名前で呼ぶ者はいないよ)共通のもので、日本の白地図に都道府県名を書きなさいという小学生レベル。ただし、貴崎先生……(わたしまで改まっちゃった)のは――好きな道府県を(東京は地元なので除く)一つ選び、思うところを八百字以内にまとめて書くこと――なのよ。

 五分ほどで道府県名を書き終えて、考えた……気になる道府県……と言えば大阪だ。正確に言えば、大阪に転校しちゃった三軒隣のはるかちゃん。

 一昨日、なぜか、お父さん朝からイソイソと出かけていった。

 わたしはコンクールの初日だったので気にもとめなかったんだけど。フェリペから帰ってみると、南千住の駅でいっしょになった。

 なぜだか、はるかちゃんのお父さんとその奥さんも一緒だ。

 奥さんてのは、はるかちゃんがお母さんにくっついて、大阪に行ったあと一緒になった新しい奥さん。つい先月入籍して、ご挨拶に来られた。

 玄関で声がするんで、ヒョイと覗いたら。奥さんてのは、おじさんと一緒に今の通販会社を立ち上げた女の人。

 あか抜けて、どこかの社長秘書って感じ。あとで柳井のオイチャンが教えてくれた……。

 あの人は、はるかちゃんのお父さんが、まだベンチャー企業の社長をやっていたころの本物の秘書さん……なんだって。

 ドラマみたいなことが、ついご近所のそれも幼なじみのお家で起こったんでビックリ(゚ロ゚)!

 でも他人様の家庭事情にあれこれ言うのは、下町のシキタリに反する。と、柳井のオイチャンは釘を刺すのは忘れなかったのよね。だから、興味津々だったけど普通にご挨拶。

 それが、夜中の十時過ぎ。お父さんといっしょに上機嫌で南千住の駅にいるんだから、あらためてビックリ( ゚д゚ )!
 そいで、お父さん。改札出るとき、切符を出そうとしてポケットから落としたレシート、なにげに拾ったら大阪のコンビニだった……。

 ピンときた! でもお父さんから見れば、まだまだガキンチョ。わたしから聞くわけにはいかない。

 三人とも上機嫌なんで、なにか言ってくれるかな……と、期待したところで、はるかちゃんのお父さんのスマホが鳴った。

 歩きながらスマホと話していたお父さんの足が止まって、うちのお父さんが寄っていった。

「え……」

 という声がしたきり三人は黙ってしまった。

 昨日の本番の朝、出かけようとしたら、お父さんの方から声をかけてきた。

「まどか……」

「なに、お父さん?」

「あ……いや、なんでもない」

「……はるかちゃんになにかあったの?」

「そんなんじゃねえよ」

「……へんなの」

「おめえも、今日は本番だろ。その他大勢だろうけど……ま、がんばれよ」

 それだけ言うと、つっかけの音をさせて工場の方へ行ってしまった。

―― も、って言ったわよね。おとうさん「おめえも」……も ――

 まあ、帰ってから聞いてみよう……ぐらいの気持ちで家を出た。で、あとは、みなさんご存じのような波瀾万丈な一日。

 帰ったら、お風呂だけ入って、バタンキュー。

 で、今日は朝からスカートひらり、ひらめかせっぱなし。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 夏鈴          乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問

 

 

 

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