大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・26『百地流忍法骨語&闇着替』

2022-11-12 16:49:07 | 小説3

くノ一その一今のうち

26『百地流忍法骨語&闇着替』 

 

 

 ―― いま下りたソノッチは金持ちだ ――

 

 ヘリコプターのドアを閉めながら、もう一人のわたしが口の形で言う。

―― なんで化けてるんですか? で、あなたは? ――

 言いながら指さすと、そいつはニヤリと笑って『わたしだよ』と忍び語りで応える。

 おかしい、この騒音の中だ、いくら忍び語りでも聞こえるわけがない。

『一種の骨伝導さ』

 見ると、そいつは、わたしが座っているシートのアングルを掴んでいる。離すと、とたんに口パクになる。

『百地流忍法、骨語り』

―― 百地流……え!? ――

 見破ったわけじゃない、そいつの顔が、一瞬で百地社長になったんだ!

『いやあ、歳だな、化けているのは三時間が限度だ』

―― 術を解くなら、全部解いてください! 首だけ社長というのは気持ち悪いです! ――

『解いてもいいが、この服を着たままだと悲惨なことになる』

―― う…… ――

 たしかに、わたしに化けているからリコリコの衣装のままだとパッツンパッツン……術を解いたら……想像もしたくない(^_^;)。

―― でも、なんで? ハローウィンはとっくに終わってるでしょ ――

『大きな仕事でな、わしも出ざるをえなかった』

―― わたしに化けるのが大きな仕事なんですか? ――

『さっきまで、金持ちと二人、湘南であばれていたところだ。金持ちは経理の仕事が残ってるんで、いったん戻ってきたところだ』

―― で、今度は、どこへ? ――

『詳しくは言えんが、外国だ』

―― 外国……このヘリコプターで? ――

 乗り物には詳しくないけど、ヘリコプターでは無理だろ、オスプレイでも無理だと思う……どこかで乗り換えなきゃ。

『そう、乗り換える……ほら、見えてきた』

―― え、もう? ――

 社長が指差したキャノピーの斜め下には都内で唯一……だと思うんだけど、米軍基地の滑走路が見えてきている。

『あそこで乗り換えて、某国に飛び立つ。心配するな、月曜の朝には帰って来られる』

―― 某国って……外国でしょ? 学校に行く用意しかしてないし、制服のままだし ――

『用意ならできている、ほら……』

―― え……!?……いつの間に!? ――

 気が付くと、社長と同じリコリコの制服を着ている! カバンも変わってるし!

『身に着けていたものは、こっちのカートの中だ』

―― 着替えた憶え無いんですけど! ――

『百地流忍法闇着替……ニンニン』

―― (#꒪ȏ꒪#) ――

 意識を肌感覚にすると、ほんとうに身に着けていたもの全てが変わっているではないか……恐るべし百地流忍法!

『まあ、僕も付いていくから(^_^;)』

 別の声がしたかと思うと、背中を向けていたパイロットが振り返る。

 パイロットは、わたしに化けた嫁持ちさんだった……。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍)
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者

 

 

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宇宙戦艦三笠7[思い出エナジー・1]

2022-11-12 08:35:26 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

8[思い出エナジー・2]   

 

 

 疾風(高機動車)の前方30メートルほどのところに、チャドル姿の女性が倒れこんだ。

 隊長は、すぐ全車両に停止を命じた。

「隊長、自分が見てきます」

 山本准尉は、隊長と目が合ったのを了解と介して疾風を飛び出した。自爆テロの可能性があるので、うかつに大人数で救助に向かうわけには行かなかった。


「きみ、大丈夫か?」


 姿勢を低くし、二メートルほど離れたところから、山本准尉は女に声を掛けた。爆発を警戒してのことでは無かった。そこここに現地住民の目がある。異民族の男が女性の体に触れるのははばかられるのだ。

「ゲリラに捕まって、やっと逃げてきました。日本の兵隊さんですね……助けてください」

 チャドルから、そこだけ見せた顔は、まだ幼さが残っていた。


「……分かった。君の村まで送ってあげよう」


 山本は、優しく、でも決意の籠った声で少女に応えた。

 山本は、いったん疾風に戻ると装具を解いて、隊長に一言二言声を掛け、様子を見ていた現地のオッサンから、ポンコツのトヨタをオッサンの収入半年分ほどの金を渡して借りた。オッサンは喜んだが、目で「気をつけろ」と言っていた。それには気づかないふりをして、少女に荷台に乗れと言った。座席に座らせるわけにはいかない。イスラムの戒律では、男と女が同じ車に乗ることはできない。荷台に乗せるのが限界である。

「あたし、体の具合が悪い。日本のお医者さんに診てもらえませんか?」

「あいにくだが、男の医者しかいない。あとで国連のキャンプに連れて行ってあげよう。それまで我慢だ」

 山本が、目で合図すると、自衛隊の車列は作業現場へと移動し始めた。山本は長い敬礼で車列を見送った。少女に二本ある水筒の一本を渡して、トヨタを発進させた。

「どうして停まるの?」

 少女は、少しこわばった声で山本に聞いた。

「サラート(礼拝)の時間だろ。専用の絨毯はないけど、これで我慢してくれ」

 山本は、毛布を渡してやり、コンパスでメッカの方角を探し、コンパスの針を少女に見せた。少女は毛布に跪きサラートを始めた。山本は異教徒なので、少女の後ろで跪いて畏敬の念を示した。

「どうもありがとう」

 サラートが終わると、少女は毛布を折りたたんで山本に返した。

「信心は大事にしなきゃな……よかったら、そのチャドルの下の物騒な物も渡してもらえるとありがたいんだけど」

 少女の目がこわばった。

「これを渡したら、村のみんなが殺される……」

 少女の手がわずかに動いた。

「ここで、オレを道連れにしても、日本の兵隊を殺したことにはならない。君を送る前に隊長に辞表を出してある。だから、オレを殺しても、ただの日本人のオッサンを一人殺したことにしかならない。後ろを向いているから、その間に外しなさい」

 山本は、無防備に背中を向けた。

 戸惑うような間があって、衣擦れの音と、なにか重いベルトのようなものを外す音がした。

「ありがとう。君も村の人たちも殺させやしないよ」

 それから、山本は、少女を村に送り届け、トーブとタギーヤ(イスラムの男性の衣装)を借りた。

 山本は、少女に地図を見せた時、二か所に目をやったことに気づいていた。一か所は自分の村で、もう一か所は、それまで彼女が居たところだろうと見当をつけた。

 案の定、少女が見ていたところは岩場が続く丘の裾野で、声がかかる前に銃弾が飛んできた。ゲリラの前進基地のようだ。車を降りると「手を挙げて、こっちに来い」と言われた。

「隊長、こいつ体に爆弾を巻き付けている!」

 身体検査をした手下が隊長に言った。

「スイッチは、この手の中だ。動くんじゃない! 血を流さずに話し合おうじゃないか」

 そのあと二言三言やり取りがあった後もみ合いになった。

 そして、もつれ合い倒れたショックで、自爆スイッチがオンになり、山本は10人あまりのゲリラを道ずれに死んでしまった。

 日本のメディアは、現地で自衛隊員が除隊したことと、山本が民間人として死んだことを別々に報道した。当然殉職とは認められなかった。


 そして、山本が日本に残した一人娘は、横須賀の海上自衛隊の親友に預けられた。


「だから、あたしの本当の苗字は山本っていうんだ……」

 長い物語を語り終え、天音はため息をついた。

 三笠は速度を上げて遼寧とヴィクトリーを追い越した……。


☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・22『大阪に転校したはるかちゃん』

2022-11-12 06:35:36 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

22『大阪に転校したはるかちゃん』  

 

 

 まあ、帰ってから聞いてみよう……ぐらいの気持ちで家を出た。

 で、あとは、みなさんご存じのような波瀾万丈な一日。

 帰ったら、お風呂だけ入ってバタンキュー。

 で、今日は朝からスカートひらり、ひらめかせっぱなし。

 お父さんの「も」にかすかなインスピレーション感じながら、中味はタイトルに『大阪に転校したはるかちゃん』と、あるだけで、あとははるかちゃんとの思い出ばっかし。

 提出すると、プッと吹きだして、先生はわたしの目を見た。

「あ……いけませんでした?」

「いいわよ、文章が生きてる。仲さん、あなた、はるかちゃんて子とスカートめくって遊んでたの?」

 先生は地声が大きい。クラス中に笑い声が満ちた。

「違います!」

「だって」

「次の行を読んでください!」

「アハハ……」

 声大きいって! クラスのみんなの手が止まってしまった。

「な~る……みんな、続きがあるからねぇ。そうやって、いかにスカートをカッコヨクひらめかせるか研究してたんだって。はい、名誉回復」

 ……してないって。席にもどるわたしを、みんなは珍獣を見るような目で見てるよ(^_^;)。

 

 そうやって、恥かきの一時間目が終わって、わたしはスマホのメールをチェックした。昨日からのドタバタで、丸一日スマホを見ていなっかた。

 

「あ!」

 思わず声が出て、わたしは自分の口を押さえた。運良く、教室の喧噪にかき消されて、だれも気づかなかった。

 アイツからメールがきていた。

 一年ぶりに……。

 そこには、二つのメッセージがあった。

―― ありがとう、勇気と元気。潤香さんお大事に。

 二十字きっかりの短いメッセの中に、わたしへの思いやりと潤香先輩への気遣いがあった。

 万感の思いがこみ上げてきた……そうだ、潤香先輩。

 そこに、里沙と夏鈴が割り込んできて、わたしは慌ててスマホをオフにした。

「今日、三四時間目も自習だよ!」

 夏鈴が嬉しそうに寄ってきた。

「音楽の先生、インフルエンザだって」

 里沙が続けた。

「で、わたし考えたの……!」

 夏鈴が隣の席を引き寄せて顔を寄せてくる。

「な、なによ(^_^;)?」

 思わず、のけぞった。

「音楽の自習って、ミュージカルのDVD観るだけらしいからさぁ」

 そりゃ、急場のことだからそんなとこだろう。

「で、考えたの。自習時間と昼休み利用して潤香先輩のお見舞いにいけないかって!」

「そんなことできんの?」

「生徒だけじゃ無理だけど、先生が引率ってことなら」

 里沙がスマホをいじりだした。

「そんな都合のいい先生っている?」

「……いるのよね。マリ先生空いてる」

「里沙、先生の時間割知ってんの?」

「うん、担任とマリ先生のだけだけどね。なんかあったときのために。今日は放課後部室と倉庫の整理じゃん。それからお見舞いに行ったら夜になっちゃう」

「三日続けて深夜帰宅って、親がね……」

「でも、そんなお願い通ると思う? マリ先生、そのへんのケジメきびしいよ」

「うう……問題は、そこなのよねえ(-_-;)」

 里沙が爪をかんだ。

「……さっき、マリ先生に言ったらニベもなかった」

 二人とも、アイデアとか情報管理はいいんだけどね……。

「うん……わたしに、いい考えがある!」

 三人は、エサをばらまかれて首を寄せた鳩のように首を寄せた……。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 夏鈴          乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
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