大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・297『墜ちる! 舞鶴の海へ!』

2022-11-22 16:34:38 | 小説

魔法少女マヂカ・297

『墜ちる! 舞鶴の海へ!語り手:マヂカ 

 

 

 チリチリチリ……

 

 指輪は、ほとんど髪の毛ほどの細さになって、それでも、最後までわたしと変身魔法の解けかけたクマさんを守ろうとして線香花火のようにか細く震えるように輝いている。

 風は下の方からビョービョーと吹き上げて、二人の髪をロウソクの炎のように吹き上げている。

 墜落しているんだ!

 風に抗って薄目を開けると、視界の半分が海、もう半分が陸地。

 陸地は迫りくる海を顎いっぱいに口を開け、怒りを籠めて呑み込もうとしている巨人の横顔のように見える。

 見覚えがある……これは舞鶴の街と海だ。

 オリヨールが礼子の姿で待ち受けていた因縁の港街(063:『舞鶴沖』)。舞鶴の上空でポチョムキンの罠にはまったのだから、その上空に戻ってきて不思議ではないんだけど、因縁めいて見えなくもない。

 魔法が解ける瞬間は、自分の魔法ではない限り爆発に巻き込まれるようなものなので、どこに飛ばされるか知れたものではない。

 それが、そのまま舞鶴の空……感傷に耽っている場合ではない。このまま落下すれば、たとえ、そこが海の上でもただでは済まない。海面か地面に叩きつけられてバラバラになってしまう。

 魔法少女は、それでもソウルが残るから、いつの日にか復活は出来るだろうが、生身のクマさんはお終いだ。

 百年前の大正時代から拉致され、令和の時代にファントムの傀儡にされたまま死なせてしまうなんて、魔法少女として完全な敗北だぞ!

 最後の可能性に掛けて指輪に命じる――パラシュートになれ!――

 チュ チュパ!

 少々頼りない音をさせて、指輪は小型のパラシュートに変貌した。

 相当無理をして姿を変えたので、傘の膜はラップのような薄さだ。それに、落下速度が少々速い。着地に工夫をしなければ、クマさんに大けがをさせてしまう。

 う、う~~~ん

 しかめるような表情をしてクマさんは気が付いた。

「クマさん、気が付いたか!?」

「chto so mnoy sluchilos……?」

 だめだ、ロシア語だ!

「ニェット……真智香さん!?」

「おお、戻った!」

「この風は……なんだか墜ちているような気がするんですけど……富士山の山頂ですか?」

「いや、わけあって、舞鶴の空から墜ちていくところだよ。なに、心配はない。落下傘でゆっくり墜ちていくところだから。そうだな、お屋敷のパッカードのボンネットから飛び降りるぐらいの衝撃だよ」

「それなら大丈夫です。お屋敷の木に登って降りてこれなくなった猫を抱えて飛び降りたことありますから」

「それなら、心強い」

「下りたら、健人さんには、いえ(^_^;)お嬢様には会えるんでしょうか?」

「あ……いや、ここは、大正時代から百年先の令和の時代の日本なんだ」

「百年……れいわ……?」

「うん、大正、昭和、平成、その次の令和……あ、大正時代の人に未来の年号を教えてはいけないんだ」

「大丈夫です、人には言いません。でも、年号があるということは、大日本帝国は健在なんですね」

「ああ、大丈夫だよ。あんな震災でどうにかなるような日本じゃないよ」

「よかった、お国があれば高坂侯爵家も盤石です。主義者の人たちは『年号なんて封建制の遺物だ天皇制とともに葬らなければ』とかおっしゃいますから」

「あはは……言ってるうちに地上が近くなってきた。クマさん、念のために海の上に降りるよ。ちょっと濡れるけど辛抱してね」

「はい、大丈夫です!」

 見上げるとラップのように薄いパラシュートは、あちこち綻び始めている。グズグズしてはいられない。

 ポチョムキン村の残滓が人魂のように溶けてボタボタと落ちていく。エネルギー残滓のようなもので、触れても害はないだろうが気味が悪い。

 体を捻りながら、操作索を操って桟橋から二十メートルほどの海面に的を絞った。

「ま、真智香さん、あれ!」

 クマさんが頬を引きつらせて眼下の海面を指さした。

「あ、あいつは!?」

 海面には、やっつけたはずのアリヨールが半透明の姿でオイデオイデをしている。

「くそ、亡霊が力を得たか!」

 残滓……海面に降り注いだ残滓を浴びて力を取り戻したか!

 このまま海面に下りては海に引きずり込まれてしまう!

 わたしは目まぐるしく頭をめぐらせる……海面まで数十メートル! すぐに考えは浮かばない!

 

 南無三!!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔
  • サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
  • ソーリャ         ロシアの魔法少女
  • 孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • ファントム      時空を超えたお尋ね者

 

 

 

 

 

 

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宇宙戦艦三笠10[テキサスジェーン・1]

2022-11-22 09:06:57 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

10[テキサスジェーン・1]   

 

 

 

 三笠は、俺(修一)、樟葉、天音、トシ四人の思い出をエネルギーに最初のワープを行った。

―― 最初のワープだから、1パーセク(3・26光年)にしておくわね。樟葉さん舵輪へ。トシ君はエンジンテレグラフの前へ ――

 三笠と同体化したみかさんが指示する。アバターの時と違って、艦の全体から声がするので、なんか包み込まれたような安心感がある。

「あ、なんかいいっす(^o^;)」

 トシがデレて、みんなクスリと笑った。

 樟葉とトシが配置につき、俺と天音はシートについた。

―― じゃ、修一君。あとはよろしく ――

「お、おお」

 一瞬たじろいだが、マニュアルが頭に入っているようで、直ぐに指示が口をついて出てくる。

「面舵3度……切れたところで、前進強速、ワープレベル」

「面舵3度、ヨーソロ……」

「前進強速……ワープ!」

 シャーーーーーって音がするわけじゃないんだけど。

 ブリッジから見える星々は、シャワーのように後方へ流れて行った。


「……ワープ完了。冥王星から1パーセク」

「対空警戒。レベル10」

「レベル10……左舷12度、20万キロ方向にグリンヘルドの編隊多数……23万キロで戦闘中の艦あり!」

「どこの船だ!?」

「アメリカのテキサス。苦戦中の模様。モニターに出す」

 天音がメインモニターに切り替える。

 テキサスは、110年前に竣工したアメリカの現存戦艦の中では最古参だ。第一次大戦と第二次大戦の両方を現役として戦い、今はヒューストン・シップ・チャネルに合衆国特定歴史建造物に指定保存されている。三笠程ではないが、クラシックな艦体をくねらせながら、全砲門を開いて寄せくるグリンヘルドの攻撃隊と獅子奮迅の激闘中だ。

「何発か食らってる。あの大編隊の二次攻撃に晒されたら持たないかもしれない。グリンヘルド二次攻撃隊に三式光子弾攻撃。取り舵20。右舷で攻撃する!」

 三笠は、20度左に旋回、右舷の全砲門をグリンヘルドの二次攻撃隊に向けた。

「照準完了!」
「テーッ!」

 シュビビビビーーーン!

 主砲と右舷の砲門が一斉に火を噴き、亜光速の光子弾が連続射撃された。

 遠くでいくつもの閃光、学校の屋上から見た『よこすか開国花火大会』に似ている。30秒余りでグリンヘルドの二次攻撃隊を壊滅させると、三笠はテキサスの救援に向かった。

「テキサスがいるから、光子弾は使えない。フェザーで対応、あたし一人じゃ手におえないから、みんなも意識を集中して!」

 天音が叫んだ。実際グリンヘルドの一次攻撃隊の一部は三笠にも攻撃を仕掛けてきている。

 三笠の機能は、基本的にはそれぞれの持ち場が決まっていたが、危機的な局面では全員が特定の部署に意識を集中させ効率を上げる仕組みになっている。

 光子弾は長距離攻撃には絶大な威力を発揮するが、その威力の大きさから、味方が傍にいる場合は使えない。三笠は30分余りをかけて、グリンヘルドの周囲を繭を紡ぐように周って一次攻撃隊の残りを撃破した。

「各部被害報告!」

 俺の呼びかけに「被害なし」の声が続いた。

「テキサスは!?」

「中破。オートでダメージコントロールに入った模様」

「テキサスから、だれか来るわ……艦長よ。乗艦許可を求めてる」

「乗艦を許可。操艦をオートに切り替え、総員最上甲板へ」


 前部最上甲板の舷梯を上がって、カウボーイ姿の少女が現れた。ブルネットのポニーテールをぶん回すと、ブリッジのみんなと目が合った。

 いやはや……

 激闘の後で、ロデオを幾つもこなしたようにボロボロ。チェックのシャツはあちこち綻びて、右の袖は取れかけ、ジーパンは膝とお尻に穴が開いて、自然すぎるダメージジーンズになっている。ポニーテールも熊手の先を無理やり縛ったみたいで、なんともワイルドな姿。

「アハハ、ちょっとみっともないね(^_^;)」

 そう言って、膝とお尻を撫でると、破れ目が塞がった。それから、ちょっと髪を撫でると熊手の先を括りました状態が、箒の先を括りましたくらいに修復された。

「助けてくれてありがとう。あたし、テキサス・ジェーン! よろしく! あ、三笠への乗艦許可に感謝します!」

 思い出したように、胸を張って敬礼する。

「み、三笠への乗艦を歓迎します」

 ジェーンの胸に目がいって、ちょっとアタフタしてしまった。

 ドジなアタフタは、すぐにバレて、みんなが笑う。

 女子二人の目が尖っていたけど、生き生きとした、ジェーンの姿に、俺たちは好感を持った。

 

☆ 主な登場人物

 修一          横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉          横須賀国際高校二年 航海長
 天音          横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ          横須賀国際高校一年 機関長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ  
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・32『下町のシキタリ』

2022-11-22 07:10:35 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

32『下町のシキタリ』  

 

 

 昼には平熱になり、半天をはおって茶の間に降りた。

 おじいちゃん、お父さん、柳井のオイチャンといっしょにお昼ご飯を食べる。

 三人とも、わたしの回復を喜んでくれて気の早い床上げ祝いということになり、赤飯に鯛の尾頭付きがドデンと載った。

 缶とワンカップだけど、ビールとお酒も並んでる。わたしはお粥と揚げ出し豆腐ぐらいしか口に入らない。まあ、なんでも祝い事にして一杯やろうという魂胆ととれないこともないけども、これも下町のシキタリ、愛情表現。ありがたくお受けいたしました。

 宴たけなわになったころ、大学を早引けにした兄貴と、彼女の香里さん。エプロンを外したお母さん。伍代さん……はるかちゃんのお父さんと奥さんも加わった。

「商売物でなんだけど、販促兼ねてもらってくれる」

 奥さんは蒼地に白の紙ヒコーキを散らしたシュシュを下さった。

 香里さんはバイト先でもらったというネールカラーを、柳井のオイチャンは面白がって、チョチョイと真鍮板で三センチくらいの紙ヒコーキを作り、安全ピンを溶接してブロ-チにしてくれた。

「あ、わたしも欲しいなあ」

 ということで、そのブローチはもう三つ作られ、伍代さんの奥さん、香里さん、そしてはるかちゃん用になった。

 後日、このブローチは伍代さんとこで商品化され、柳井のオイチャンに原作料が支払われ、オイチャンはご機嫌になっちゃっうんだよ(^▽^)。

 この日もらった物で学校にしていけるものは一つも無かったけど、やっとわたしの床上げ祝いらしくなって、わたしもご機嫌さ!

「え、はるかの番号知らないの!?」

 宴もお開き近く、わたしとはるかちゃんのこと(ガキンチョのころスカートひらりやったこと)が話題になり、伍代のおじさんが驚いた。

「いや、ヒデちゃん(伍代のおじさん)の家のことだしよ……」

 お父さんは頭を掻いた。

「水くせえなあ、はるかとまどかちゃんは幼なじみなんだしよ。家の問題がケリついてんのはジンちゃんも承知じゃねえか」

 あっさり、はるかちゃんの携帯番号ゲット!


 放課後の時間を待って、はるかちゃんに電話することにした。


 と、その前に、電話とラインのチェック。

 電話の着信履歴は無かった。クラブやクラスかからのお見舞いはてんこ盛り。みんな、言葉を工夫したり、デコメに凝ったり、見ているだけで楽しいものが多かった。

 中には『火事お見舞い』を『家事お見舞い』とやらかしているものや、『草葉の陰から、御回復祈ってます』なんて、恐ろしく、でも笑えるものまであった(これが、なぜ恐ろしく笑えるか分かんないひとは辞書ひいてください)

『草葉の陰』は、夏鈴からのものだった。ラノベで覚えた言葉を使ったんだろうけど、事前に、言葉の意味くらい調べろよな……。

 里沙からは『早く元気になってね』と見出し。

――以下は、添付書類、パソコンに送付。

 と、まるで事務連絡。

 で、パソコンを開いてみた……。

 なんと、わたしが休んでいた間の授業のノートが全部送られていた。で、これから毎日送ってくれるとのこと。持つべきものは親友だと、しみじみ思いました。

 笑ったり、泣けたり、しみじみしたりして、スマホのチェックは終わり。

 え、だれか抜けてるだろうって……それはナイショ。あとの展開を、お楽しみに!

『お見舞い、ありがとうございます』をタイトルにして二百字ほどのメールを一斉送信したよ。

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 武藤 里沙       乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 夏鈴          乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋 誠司       城中地区予選の審査員 貴崎マリの先輩
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
  • まどかの家族      父 母 兄 祖父 祖母
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