大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・295『ポチョムキン村・4・エリザの秘密』

2022-11-04 15:16:30 | 小説

魔法少女マヂカ・295

『ポチョムキン村・4・エリザの秘密語り手:マヂカ 

 

 

「父はポチョムキン侯爵、そして母はエカチェリーナ二世……だよね」

「あら、マジカさんはご存知だったんですか?」

「うん、対ロシア工作をやっていた時に、少しだけロシア史を齧った」

「わたしはサッパリだ。歴史については西遊記と三国志ぐらいしか分からないかな」

 そんなはずはないのだけど、まあ、一人が聞き役に回った方が、話が早いという悟嬢の姿勢だろう。

「エカチェリーナ二世はピョートル三世と結婚したけど、クーデターで夫を倒して、自らロシア皇帝になったんだったね」

「なんだか則天武后のようだな」

「ええ、そこだけ聞くと、とんでもない悪女に聞こえますけどね(^_^;)」

「違うのかい?」

「ピョートル三世は、大のドイツかぶれで、普段はドイツ語しか喋らないくらいでした。母もドイツ貴族の娘でしたから、ピーさん、あ、ピョートル三世と呼ぶのは長いですから、母はピーさんと呼んでました」

「アハハハ」

 悟嬢が笑う。

 確かに、親しみと軽蔑と人物評価において的確な呼び方だ。

 気が付くと、お祭が近いのだろうか、村のどこからか陽気な音楽が聞こえてきた。

「タリラリラ~~~♪」

「なんだい、急に踊り出して」

「きれいなステップでしょ? 母に仕込まれたんです」

「お母さんは、ダンスも上手かったんだ」

「ええ、ピーさんに嫁ぐことになって、ダンスとロシア語は大まじめに勉強したんです。ロシア皇帝の妃になるんですからね」

 ドイツ娘の木真面目さが思われて、ちょっと微笑ましい。

「でも、ピーさんは、ダンスはヘタッピだし、ロシア語は喋らないし」

「え、ロシア皇帝がロシア語喋らないのか?」

 悟嬢も目を丸くする。

「ピーさんもドイツ育ちでしたし、ロシアはどうしようもない田舎だと思ってました」

「ふーーーーん、清朝の皇帝は女真人だけど、普段はきれいな中国語を喋っていたよ」

「まあ、それはいいんです。皇帝に限らず、貴族もフランス語とかドイツ語喋ってましたから……笑っちゃうのは、母とは体の関係が無かったこと」

「「ええ!?」」

 これには驚いた。

「母は、五人の子どもを産みましたけど、遺伝学的には、みな父親が違います。すぐ上の兄の時なんか、屋敷が火事になったどさくさに産んだんです。というか、都合よく出産に合わせて火事が起こったんですけどね」

「凄まじいなあ……」

「でも、父も母も、とても大事にしてくれました。こんなポチョムキン村を作ってくれたんですからね……と、ここでレヴェランス」

 パチパチパチ

 話の区切なんだろう、きれいなレヴェランス(ダンスのお辞儀)を決めた。

「孫悟空の孫だから雅なことは分からないけど、上手いもんだなあ、祭りの音楽に適当に合わせたんだろう?」

「あ、いえ、ここでお話をしているんで、村人が雰囲気を作ってくれているんです」

「村人はキャストというわけだ」

「そうなのか?」

「はい、ポチョムキン村ですから」

「あ、ポルカに変わった」

 文化祭の終りのファイアストームを思わせる陽気な音楽に変わった。

 佳境に入ったのか、ややボリュームが高くなって、顔を突き合わせるようにしなければ声が聞こえなくなってきた。

「これは、核心についてお話しなさいというサインですね」

 村祭りは単なる環境音楽というためだけではないようだ。

「じつは……あのミーシャは、マジカさんたちがお探しになっている人物なんです」

「え……まさか?」

 

 コクン

 エリザは小さく頷くことで答えにした。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔
  • サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
  • ソーリャ         ロシアの魔法少女
  • 孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • ファントム      時空を超えたお尋ね者

 

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RE・乃木坂学院高校演劇部物語・14『オオカミ女になっちゃうぞ』

2022-11-04 06:51:00 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

14『オオカミ女になっちゃうぞ』  

 

 

「やられたな……」

 フェリペ坂を下りながら、峰岸先輩が呟いた。

「え!?」

「声がでかい」

「すみません」

「考え事してただろう?」

「いいえ、べつに……」

「彼氏のこととか……」

「ほんと( ゚д゚ )!?」

 夏鈴、おまえは入ってくんなよな!

「いま、目が泳いだろ」

「え(;'∀')?」

 そうだよ、わたしはヤツのことを考えていた。ここは、リハの日、ちょうどコスモスをアクシデントとは言え、手折った坂道。

 で、幕間交流のとき見かけた姿……昼間なら赤く染まった頬を見られたところだろ。

 ダメダメ、表情に出ちゃう。わたしはサリゲに話題をもどした(^_^;)。

「で、なにを『やられた』んですか?」

「サリゲに話題替えたな」

「そんなことないです!」

「ハハ……あの高橋って審査員は食わせ物だよ」
 
 え?

 柚木先生はじめ、周りにいたものが声をあげた。

「審査基準も、お茶でムセたのも、あの人の手さ」

「どういうこと、峰岸くん?」

 柚木先生が寄ってきた。

「審査基準は、一見論理的な目くらましです。講評も……」

「熱心で丁寧だったじゃない」

「演技ですよ」

「そっかな……審査基準のとこなんか、わたしたちのことしっかり見てましたよ。わたし目が合っちゃったもん」

 夏鈴が口をとがらせた。

「そこが役者、見せ場はちゃんと心得ているよ。お茶でムセたのも演出。あれでいっぺんに空気が和んだだろ」

「そうなの……あ、マリ先生に結果伝えてない」

 柚木先生がスマホを出した。

「あ、まだだったんですか?」

「うん、ついフェリペの先生と話し込んじゃって(^o^;)」

「じゃ、ぼくが伝えます。今の話聞いちゃったら話に色がついてしまいますから」

「そうね……わたし怒っちゃってるもんね」

「じゃ、先に行ってください。みんなの声入らない方がいいですから」

「お願いね、改札の前で待ってるわね」

 わたしたちは先輩を残して坂を下り始めた。街灯に照らされて、わたしたちの影が長く伸びていく。夏鈴がつまらなさそうに賞状の入った筒を放り上げた。

「夏鈴、賞状で遊ぶんじゃないわよ!」

 聞こえないふりをして、夏鈴がさらに高く筒を放り上げる。

 グルン

 賞状の筒は、三日月の欠けたところを補うようにくるりと夜空に回転した。そんなことをしたら三日月が満月になっちゃって、まどかはオオカミ女になっちゃうぞ。

 嗚呼(ああ)痛恨の……コンチクショウ!

 

☆ 主な登場人物

  • 仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
  • 芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
  • 貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問
  • 大久保忠知       青山学園一年生 まどかの男友達
  • 里沙          乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 夏鈴          乃木坂学院高校一年生 演劇部 まどかと同級生
  • 山崎先輩        乃木坂学院高校二年生 演劇部部長
  • 峰岸先輩        乃木坂学院高校三年生 演劇部前部長
  • 高橋          城中地区予選の審査員
  • 柚木先生        乃木坂学院高校 演劇部副顧問
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