大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:185『タングリスはどうした?』

2023-08-11 06:22:54 | 時かける少女

RE・

185『タングリスはどうした?』テル 

 

 

「ありがとうございます、やっと人心地がつきました……」


 アメノミヒシャクにかぶりつき、喉を鳴らして飲み続けたタングニョーストは顎の雫を拭うと、ひとまずの礼を言った。

「こちらは、この世界の主神であられるイザナギさまだ。人心地着いたら、ご挨拶しろ」

「これはご無礼をいたしました。自分は北欧の主神であるオーディン陛下の臣にして、ムヘン方面軍司令トール元帥の副官を務めております、タングニョ-ストであります。任務とは言え、無断で、こちらの世界に侵入して申し訳ありません。アメノミヒシャク、ありがとうございました」

「いや、こちらも、やっと国造りの緒に就いたところでしてね、ヒルデさんたちには大変助けていただいているんです。慣れない国生みで妻のイザナミを死なせたのですが、まだまだ国づくりには妻の力が必要なので、黄泉の国まで迎えに行くところなんです。よかったら、タングニョーストもいっしょに来てはくれませんか?」

「むろんです。姫がお決めになられたことであれば、その指揮のもとに行動するのは臣の務めでありますし、軍司令トール元帥の命じるところでもあると心得ます」

「ありがとう。それでは、しばらくの間、よろしくお願いします」

「ハ! 了解いたしました!」

 イザナギに正対して、ビシッと敬礼を決めるタングニョースト。ちょっと遅れて答礼するイザナギ……なんとも敬礼の似合わない神さまだけど、これが日本の神さまの大元だと思うと、ちょっと微笑ましくもある。

「ところでタングニョ-スト、タングリスはどうした?」

 あ……わたしも気には掛けていたけど、ヒルデははっきりと聞いた。

 タングリスは、瀕死の重傷を負ったトール元帥に自分の体を食べさせたのだ。

 そういう宿命にあったとはいえ、森の中、大破した戦車の陰でトール元帥に自分の体を与えていたタングリスの姿、そしてガツガツと音を立てながら貪っていた元帥の背中は日本人のわたしには、ちょっとトラウマになる光景だった。

「タングリスは、この背嚢の中であります」

 
 え!?


 これには我々も驚いた。

 タングリスはトール元帥に食べられて骨と皮だけになっている。その、骨と皮だけになったタングリスが入っているのかと思うと、ちょっとね……。

「タングリスも最後まで姫のお供をすることを希望しておりましたので、トール元帥が同道することを許可してくださいました」

「そ、そうか」

「骨と皮が残っていれば、環境が良ければ数週間で回復するよ。回復したら、よろしくな(^▽^)」

 ヒルデが背嚢を叩くと、カサカサと骨がこすれる音がした。

「タングリスも頑張るって言ってるみたい! 今の音は、笑顔になって顎の関節が動いた音だよ!」

 気味悪がっていたケイトも、旧友と言っていいタングリスの気分が分かって嬉しいようだ。

 カサカサ ポロロン

「おお、肋骨を鳴らして、相棒も嬉しいようであります(^▽^)」

 ムヘン組は和やかな気持ちになったが、イザナギは笑顔のまま頬が引きつっている(^_^;)。

 
 タングニョーストを交えて食事を済ますと、我々は西の対岸、四国を目指した……。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・045『臨時のアルバイト』

2023-08-10 16:43:38 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

045『臨時のアルバイト   

 

 

 ああ、ピッタリだねえ!

 

 着替えたわたしを見て、直美さんは喜んでくれた。

「ストッキングなんて穿いたことないから、ちょっと変です(^_^;)」

「まあ、今日一日だから辛抱してね」

「あ、はい、それは大丈夫です。これも経験ですから」

「そうね、何事も明日への投資よぉ! レッツゴー!」

 機材を担いで、いつものホンダに乗り込む。

 日ごろの制服と違って膝丈のタイトスカート、ちょっと足さばきが難しい。

「今日は結婚式じゃないからね、笑顔は禁物だよ」

「は、はい、承知してます」

 返事も硬くなってしまう。直美さんのホンダN360も心なしゆっくりと走っている。

 

 今日は写真館の臨時、いや緊急のアルバイト。

 

 写真館の主なアルバイトは結婚式の写真で、もう五回やったので慣れてきた。

 たいていは希望が丘の公民館。令和の今は老朽化して解体を待つばかり。昭和45年の公民館は、まだ出来立てでピカピカだったけど、もう見る影も無かった。

 こないだ、自転車で散歩していて53年の歴史を経た公民館に行き当たって、しみじみしてしまった。偶然にも最初のバイトで撮影した花嫁さんが結婚式の写真を持ってきていてビックリした。新郎の方はお亡くなりになって、新婦のお婆さんが、まだ体が動くうちにと杖を突いてやって来られていたんだ(037『再びの希望が丘』)。

 結婚式の写真は撮る方もニコニコしていなくちゃならない。

 初めてのバイトだったし、緊張したら仏頂面間違いなしのわたし……どうしようかと思ったけど心配なかった。

 昭和の結婚式は令和の倍くらいに明るかった。

 緊張でガチガチの新郎新婦もいたけど、周囲の人たちがめちゃくちゃ明るくって幸せそうで、記念写真を撮るころにはちゃんと笑顔になっていた。

 その幸せのおこぼれにあずかって、こちらも自然に幸せな気分になっていくもんね。

 

 でも、今日は違う。

 今日はお葬式。

 

 亡くなったのは82歳のお爺さん。

 なんでも、戦時中は師団長っていうのをやっていて、終戦のあとは、部下が全員復員するまでは収容所を出なかったという人らしい。

「笑顔厳禁、よろしくね」

「はい!」

 式場は、宮之森市内の大きなお寺。

 口にこそ出なかったけど、ビックリした。

 お寺の前、左右50メートルほどにはズラリと、お葬式のディスプレーが並んでる。

 黒白の布を掛けられた木がずらりと並んでる。

「樒っていうのよ、白黒の幕はクジラ幕。式場に入ったら、なるべく喋らないでね。必要な時は傍まで寄ってヒソヒソ話してね」

「はい」

「じゃ、行くよ」

 機材を担いでいなければ、参列者と変わらない喪服姿。大人しく続いていく。

「あ、直美ちゃん」

 受付に向かっていると、ちょうどお寺の門から黒服の男の人が出てきて直美さんに声をかける。

「あ、ケンちゃん」

 どうやらお知り合い。

「おじさんが来るのかと思った」

「都合悪くって、今日はわたし」

「妹さん?」

「あ、助手してもらってるの、時司さん」

 アルバイトとは云わないんだ。たぶん、言っちゃいけないんだろうね。

「よろしく」

 ペコリと頭を下げるだけにしておく。

「そっちもケンちゃんが?」

「まさか、親父は中で打合せ。庫裏の方にうちの控室があるから、そこ使って」

「要領はいちおう聞いて来てるんだけど、こんな感じ?」

「……うん、これでいいと思う」

 

 葬式の写真て、どう撮るんだろうと思ってたけど、基本は式次第に従って邪魔にならないように、いろいろ撮るらしい。

 一般参列者の人が撮っちゃいけないという決まりは無いんだけど、やっぱり憚りがあるし、式場の雰囲気も損なってしまう。そこで、写真館の者が出張して代わりに撮る。

「むかし、ちょっと揉めたことがあってね、それ以来写真館が撮るようになったの。まあ、宮之森以外じゃ、あまりやってないかなあ」

 直美さんの手際は見事だった。

 撮影の前と後では、必ず一礼。むろん最後に祭壇に向かって一礼。

「あの遺影は、直美さんのところで?」

「うん、戦時中の写真を修復してね。もと部下の人たちや軍関係の人たちも参列されるんで、あんな感じにね」

 遺影は、軍人の割には温厚な笑顔で写った軍服姿。

 式場には五十代六十代のおじさんがいっぱい。中にはくたびれた人も居るけど、お焼香の時やご出棺の見送りの時には背筋が伸びてキビキビしている。

 もと軍人さんの御葬儀なので軍服とかの人も居るんじゃないかと思ったけど。全員ふつうの喪服だった。

 わたしの時代には、軍服着て靖国にいく人とかいるけど、あれはサバゲーのコスみたいで、個人的には好きじゃない。

 でもね、出棺の時、ラッパを持ったオジサンが二人出て門の脇で葬送ラッパを吹いたのは良かった。

 そして、誰かが号令をかけたわけでもないのに、棺が本堂から出され霊柩車に乗せられ、角を曲がるまで、きれいに敬礼で決めた。

「写真屋さん、集合写真お願いできますか」

 弔辞を読んだ元部下のお爺さんが来られて、つつましい笑顔で申し出られた。

「はい、承ります」

「おい、みんな集まれ」

 本堂の階段に並んび、真ん中には故人の遺影。

 わたしはライトとレフ板持って直美さんの後ろに。

「では、撮ります」

 ビシ

 音がするんじゃないかってくらい、姿勢が決まって、直美さんがシャッターを切った。

 

 終わると、どっと汗が噴き出す。やっぱ、八月の喪服はめちゃくちゃ暑い。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

 

 

 

 

 

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せやさかい・427『みんながんばってる!』

2023-08-10 09:48:32 | ノベル

・427

『みんながんばってる!さくら   

 

 

 宇宙戦艦三笠には四人(四匹?)の猫が出てくる。

 

 もともとは横須賀のドブ板通りに住んでた街ねこ。

 それがネコミミメイドになって三笠に乗り組んで、乗組員の世話をしてくれるという設定。

 他のメインキャラはプロの声優さん(うちは、ちょっと中途半端)やねんけど、ネコメイド四人は現役の中学生。

 養成所を出てないということでは、うちと一緒やねんけど、四人とも児童劇団所属。うちよりも、よっぽどプロ。

「あ、わたくしは養成所も児童劇団にも所属しておりませんの(^_^;)」

 手をワイパーみたいにして否定するのはミケメ役の高瀬川薫子さん。

「え、せやったん?」

「はい、宗武監督がうちのお店の御常連さんでして、お声をかけていただきましたの」

「え、お店?」

「はい、飲食店を営んでおりまして、監督はお祖父様の代からご贔屓にしてくださっています」

 この子は、めちゃ言葉遣いがていねい。

「ええ、せやけど、高瀬川さんめっちゃうまいやんか」

「アハハ、小さいころからアニメ観て、そんな気になっていただけですぅ」

「え、そんな気てぇ?」

「え、あ、その……(#^_^#)」

「カオルンはね、画面見ていっしょに台詞喋るんですよぉ(^▽^)」

「すごく上手いんです!」

 シロメの浅田さんとクロメの前田さんが加わった。

「あ、いやだあ、二人ともぉ(#^o^#)」

「作品の中に入ったみたいに、すごいんですよ」

「ああ、もうやめてぇ、そんなお話じゃないんですからぁ(#'∀'#)」

「そうそう、カオルン、どうぞぉ」

「あ、はい。実は、わたしたちテレビのお仕事頂戴しまして。榊原留美さんとご一緒させていただくことになったんです」

「え、留美ちゃん、テレビに出るのん!?」

「はい、お正月の単発ドラマなんです。大正時代のお話で、榊原さんは華族のお嬢様で、わたしたちはお屋敷のメイドなんです」

「え、そうなんや!」

「お噂で、酒井さんは……その、ご一緒にお暮らしとお伺いしましたので、榊原さんの人となりをお伺いできればと思いまして、お願いする次第なのです」

「そ、そうなんや」

「あ、今でなくて結構なんです。お仕事が明けた時に、わたくしのお店ででも」

「はい、さくら先輩ぃ、どうでしょうか?」

 高瀬川さんの後ろでお願いポーズする浅田さんも、めっちゃ可愛い。

「ちょっと、あんたたち」

 後ろからチャメの竹内さんが声をかけて、二人は、ちょっとアセアセになって「「すみませんでした(;'∀')!」」と、休憩室の向こうに行ってしまう。

 竹内さんが、深々と頭を下げて、他の三人も、もう一回頭を下げる。

「おもしろいねぇ」

 真鈴先輩がミネラルウォーターの蓋をあけながら横に座ってきた。

「吐夢(かなむ)は甘えん坊の役が多いのに、リアルじゃ委員長タイプなんだ」

「そうですねえ、タイプはちゃうけど、みんなしっかりしてますねえ」

「さくら、留美ちゃんのことは聞いてなかったの?」

「あ、うん。家では、そういう話ぜんぜんしませんからね」

「さくらは、喋るタイプだろ?」

「え、あ、いや、そうなんですけどねえ」

 応えながら思た。

 夏休みに入って、わたしも留美ちゃんも外に出てることが多い。

 うちは、むろん『宇宙戦艦三笠』の収録やねんけど、留美ちゃんは……言わへん子ぉやさかい、気ぃつかへんかったけど、なんや世界が広がってる様子。

 よし、人形焼きと東京バナナ買うて帰って、久々にゆっくり話しょうか。

 

 帰りの新幹線でスマホを開くと、詩ちゃんからのお便り。

 

――お母さんが、またこっちに狂って。もういいのにね。留美ちゃんのこと女王陛下もご存知だったよ、二人ともがんばってるんだね。あ、そうそう、ソフィーが中尉に昇進したよ。仕事も増えるみたいだけど、生き生きしてます。わたしもがんばるね、ボチボチだけど(笑)――

『狂って』は変換ミスやねんやろけど、あえて、そのままにしてる感じ。

 閉じようと思たら、頼子さんからメール。

――今度ね、お祖母ちゃんの一存で『王立民俗学学校』ってのができたんだけどね。その開校式に出ろって言われて出て見たら、学校の総裁ってのに任命された! ぜんぜん聞いてないし、いきなり総裁ってひどくない!? この夏は、留美ちゃんもさくらも、こっちには来れないんだよね。六日は、お祖母ちゃんの発案で広島の原爆忌に合わせて黙とうした。女王の黙とうだから国が黙とうしたのと同じ。うちは小さな国だけど小さいナリにやること出来ることはあるんだと感心した。写真は中尉に昇進したソフィーとツーショット。じゃ、またね――

 髪をアップにして正装のドレスに勲章付けまくりの頼子さんは、めっちゃ貫録! 王女どころか女王さまでも通りそう。ビシッと儀式用の軍服に身を固めたソフィーは攻▢機動隊の少佐みたいにかっこええ!

 ため息ついて窓の外見ると富士さん。

 雪の積もってない富士山はスッピン。

 スッピンでも富士山はかっこええ!

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  •   

 

 

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RE・かの世界この世界:184『ボロクズと奇跡の柄杓』

2023-08-10 05:49:21 | 時かける少女

RE・

184『ボロクズと奇跡の柄杓』テル 

 

 


 ズサッ!


 背後の草むらからボロクズが転がり出てきた。

 ウワアーー!! キャーー!! キッタネーー!!

 楽しく美味しくたこ焼きパーティーを楽しんでいたところに、ゴミダメの底で腐っていたようなボロクズが飛び込んできたのだ。みんなたこ焼きのトレーを持ったまま飛び散ってしまった。

 ボロクズには手足が生えていて、背中の所がポッコリと膨れ、頭は廃棄寸前のモップのようにギタギタに絡んで悪臭を放っている。

 みず……みずを……水を……

 ボロクズが口をきいた!?

 そいつは肥ツボからやっと這い上がってきたドブネズミのように臭くてグロテスクだが……人の言葉を発している。

 どこかで聞き覚えのある……?

 最初に思い当たったのはヒルデだ。

「お、おまえは!?」

 ヒルデは、食べかけのたこ焼きトレーをほっぽりだすと、ドブネズミに取りついた。

「おまえ、タングニョーストではないか!?」

「「タングニョースト!?」」

 ドブネズミを抱き上げると、モップの毛のように汚れて絡み合った髪をかき分けて、そいつの顔を露わにして声をあげた。

「ひ……姫……やっと……お会い出来ました……」

「だれか、水を! タングニョーストに水を!」

「ヒルデ、これを!」

 ケイトが差し出したペットボトルは一瞬で空になって、ドブネズミのようだった顔の汚れが落ちて、タングリスと相似形の凛々しくも美しい美少女の面影が現れた。

 それは、紛れもなく、ムヘンの流刑地からノルデン鉄橋までいっしょだったトール元帥の副官にして超重戦車ラーテの操縦手であるタングニョーストだ。

「みんな、もっと水を!」

「これを」

 まだ手を付けていないペットボトルを渡して、ヒルデがタングリスの口元に持っていってやる。

 ジューー

 タングリスの唇が動いたかと思うと、水は一瞬で蒸発してしまう。

「リミッターが外れたんだ、もっと大量の水がいる」

「じゃ、これも!」

「これも!」

 飲みかけやら、手つかずのものやら、ペットボトルの水を与えるが、いずれも唇に触れるか触れないかで消えていく。タングニョーストの渇きは尋常ではない。

 もともとトール元帥に付き従っている軍人だ。並の飢えや乾きなどビクともしない。

 それが、ここまでボロボロになるのは生半可な旅ではなかったのだ。

「海の水じゃダメなんだろうね……」

 目の前には紀淡海峡の豊かな海が広がっているが、いかに豊かと言っても海水だ、使えるわけがない。

 しかし、そう思ってしまうほどに原初の日本は海水でさえ清々しい。

「ああ、ダメだろうな……」

 荒れ地の万屋ペギーが居れば、スポーツドリンクや天然水ぐらいいくらでも調達できるんだろうが、ここは次元の違う日本の異世界、望むべくもない。

「これを使え!」

 イザナギが差し出したのは神社の手水所に置いてあるような小さな柄杓だ。わずかに水が入っているようだが、これでは口を漱ぐにも足りない。

「え、これは?」

 タングニョーストの口に当てがわれた柄杓からはコンコンと水が湧いているようで、彼女の喉は絶えることなくコクコクと動いている。

「奇跡の柄杓だ!」

 ケイトが目を丸くする。

「国の天地(あめつち)が固まったら、これで川の源流にしようと思った柄杓だよ。アメノミヒシャクとでも言っておこうか」

「ありがとう、イザナギ。これで、タングニョーストは生き返るよ」

 そうやって、水を飲ませていると、みるみるタングニョーストの汚れや穢れが取れていく。ボロボロだった野戦服も新兵のそれのようにキレイになって、ノルデン鉄橋で別れた時よりも凛々しく清げな女性兵士の姿に戻った。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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銀河太平記・175『冥王星の裏側』

2023-08-09 14:30:08 | 小説4

・175

『冥王星の裏側』周温来 

 

 

 アルルカンと言えば伝説の宇宙海賊だ。

 

 地球や火星のテクノロジーは太陽系の中での移動手段しかもたないが、アルルカンの船は自在に銀河宇宙を駆け巡っているという噂だ。

 銀河宇宙に乗り出すには最低でも光の速度で飛ばなければならない。実際には光の何倍、何十倍、何百倍の速度が出せなければ実用にはならない。光速や光速の数倍程度では、目的の星に行って帰って来るだけで数年、数十年、遠いところでは百年かかっても到達さえできない。宇宙船のような移動手段は、移動することで経済的な目的を果たせなければ、国家的あるいは惑星規模の道楽でしかない。

 パルスギが発見され、理屈の上では光速航行が可能にはなった。

 しかし、それは、石油が発見されたから飛行機が飛ぶというくらいに離れた技術だ。

 おそらく光速以上の速度、あるいはワープ技術を人類が獲得するのは数十年先のことだろう。

 

「ええと、だから、今見えてるのが冥王星でぇ(^_^;)」

「信じられない、月の軌道を発進して55秒しかたってない」

「いや、だから光速の二倍で飛んだわけで……」

「これはフェイク画像だろう……」

「あ、そういう疑問持つとキリがないんだけど……」

 案内されたブリッジの展望ディスプレーには、紛れもない冥王星が映っているのだが、こんな仮想現実はAIでいくらでも作れる。

「船長、だったら冥王星の陰に隠したアレ見せればいいんじゃないっすか?」

「え、あれを見せるのかぁ?」

「はい、あれ見せれば納得してもらえるっす。たぶん」

「じゃあ、回り込んでぇ」

 ウィーーーン

 微妙に加速して、ヒンメルは冥王星の裏に周る(フェイク画像だと思うけど)。

「あの傘みたいなのは?」

「目隠しだ。地球や火星から見えそうになったら、あの傘を動かして見えないようにしている。日本の四国ほどの大きさがあるから、角度を変えることで隠せるんだ。シャケカン、回り込んでくれ」

「了解っス。船外に出るっすか?」

「ああ、ディスプレーの画面だけじゃ信じてもらえそうにないからな。付いて来てくれ周温来」

「あ、ああ」

 ボートデッキに行くアルルカンの後を付いていく。

 あれ?

 相変わらずマントを翻していくんだけど、全く周囲のものに引っかからない。

「最初に会った時はリアルマントだったからね。普段はバーチャルにしている。ほら、こうすれば……」

 マントが消えて……え……その下に着ているものが順々に消えていく。

「……あ、船長(;'∀')」

「え、あ、しまった、全部消してしまった(#^_^#)」

「…………」

「あはは、サービスを兼ねて意地悪をしてしまったな」

 

 ボートデッキの手前で、船外服に着替えて複座のパルスボートに乗り組む。

 

 シュイーーン

 

 ボートは弧を描いて傘のふくらみの中に潜り込んでいく。

 

「おお!?」

「期待通りの反応で嬉しい。どうだ、すごいだろ(^▽^)」

 傘の中には古い宇宙船がコレクションのように係留されていた。

「まあ、半分趣味だがな。中にはビンテージものの船もあってな、けっこういい値段がつくものもある。あの小さいのはボイジャーだ」

「ボイジャー……」

 250年前に、初めて太陽系を飛び出したNASAの惑星探査機だ。太陽系を出てからは追跡不能になっている。

「プロキシマケンタウリに向かう途中で発見した」

「あんなの持って帰ってきていいんですか?」

「機能もとっくに喪失している、一人ぼっちで宇宙を漂っているのは可哀そうだろ。あれは2号だが、1号も見つけてやればセット売りでけっこうな値段になる」

「いや、でも……」

「忘れてもらっちゃ困る。このアルルカンは宇宙海賊なんだぞ」

「あ、あのシルエットは!?」

「宇宙戦艦ナガトだ」

「え、実在したのか!?」

「100年前に映画化された時の原寸大模型だ。あんなものCGでやればいいんだがな、あえてリアルセットを造ったところに値打ちがある」

「しかし、こんなデカブツ、ペイするのか?」

「ハハハ、だから半分道楽だ」

「なるほど……」

「分かってもらえただろうか、これだけのコレクション、たとえ傘で隠していても地球や火星の近くでは、必ず発見されてしまう。まあ、パルスギエンジンが本格的に作られれば、この冥王星の陰でも発見されてしまうだろうがな」

 秘密のコレクションが近々見つかってしまいそうで、寂しさを隠せない子どものような目をしている。

 アルルカンがオーバーテクノロジーと云っていいスキルを持っているのは、瀕死の俺を三日で治したことでも分かってはいる。

「どうだ、その……わたしの仲間に……」

「周温来はピタゴラスで死んだ」

「あ、ああ……」

「ということにしてくれたらな」

「お、おお! そうか、嬉しいぞ、周温来!」

「おい、無重力空間で抱き付くなあ!」

 俺とアルルカンは、ヒンメルが牽引ビームで停めてくれるまで冥王星の裏側でグルグル回っていたのだった。

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス

 

 

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滅鬼の刃・33『学校のにおい・2』

2023-08-09 09:56:38 | エッセー

 エッセーラノベ    

33『学校のにおい・2』   

 

 


 ニオイの話が続きます。


「中学校のころ、理科室の匂いが好きだった」

「ああ、ちょっと酸っぱいような焦げ臭いようなニオイがしてたなあ」

「よく実験をやってたから、いろんな薬品が混ざったニオイだったんだろうなあ。ろくに換気扇も無かったから」

「理科部やったか化学部やったかかがあって、そこの三年生なんか、放課後は制服の上に白衣を着てたりしてさ、なんかそこだけ学校の平均的な雰囲気から突き抜けてたよなぁ……あ、中三の秋にU先生に呼び出されてな」

「ああ、職員室に居るよりも理科の準備室に居ることが多い先生だったなあ」

「『時をかける少女』で、主人公の七瀬は理科準備室でラベンダーの匂いを嗅いで気を失なってさ、タイムリープの能力を身に付けるやろ」

「あ、ああ」


 武者もわたしも、中三から高校にかけて小松左京や筒井康隆をよく読んでいました。


「七瀬やないけど、理科室の匂いで運命が変わったんや」

「男七瀬か(^_^;)?」

「先生はなぁ進路指導の極秘資料を見せてくれたんや……ほら、進路希望調査をやったら、希望校ごとに成績順の資料作るやろ」

「ああ、懐かしいなあ」

 自分たちも高校の教師でしたので、三年の担任をやった時は同じような資料をもとに進路指導をしました。

「『武者走、これがA高校を受ける生徒の一覧や』って言うてな見せくれんねん。バリバリの個人情報やで、80人分ほどあってよ、成績順にダーーって並んでるんや。真ん中あたりに赤い線が入っててなぁ、そこから下は受けても落ちるってことや、説得して受験校を変えさせようって、まあ、当たり前の指導やな」

「ドンケツだったのか、おまえ?」

「ああ、俺が担任だったら、ぜったい受けさせへん」

「先生、どう言ってた?」

「『武者走は、A高受験者の中ではドンケツや。ええか、2ページ戻ったとこに赤い線が引いたあるやろ。ここから下の生徒は受けても落ちる、ぜったい落ちる、必ず落ちる』って言って、俺の目をジーっと見た」

「無言の指導だなあ」

「ああ、あの目で見られたら、十五の中坊は絶えられへん」

「だろうなぁ」

「直ぐには返答でけへん、俯いたら、理科部の女の子の名前が目についてなあ……ほら、CKさん。六年の時は大橋のクラスやったやろ。むろん、赤線のずっと上やけどな」

「あ、ああ(゚д゚)!」

 思わず感動の声が出てしまいました。

 金曜ロードショーだったと思うのですが『ローマの休日』をやっていて、ヒロインのアン王女を見てビックリしました。アン王女の父の王様が日本女性と浮気したら、こんな女の子が生まれただろうという感じの美人です。

 同じように感動した武者が、アン王女を演じたのはオードリー・ヘプバーンという女優さんなんだと教えてくれました。

「それでな――ぜったい受ける!――って決意したんや!」

「そうか、理科室の匂いが、それを増幅したんだな」

「いや、そうなんやけどな。CKさんの白衣は、いつも洗濯したての匂いがした」

「おまえ、嗅いだのかぁ?」

「ちゃうちゃう、狭い廊下やから、すれ違うと匂うんや」

「わざとすれ違ってたんだろ、理科室は南館の一階だから、用事が無きゃ行かねえとこだぞ」

「用があったんや、用が」

「用がなあ……まあ、いいけどな(*¬_¬*)」

「それで、併願することを条件に認めてもらってなあ……」

「ジジイが遠い目をすんな、気持ち悪いぞ」

「思うんや」

「なにを?」

「もし、あの進路指導が教室でやられてたら、オレ、A高校は受けてへんかったと思う」

「ん? 教室でも同じ指導だろうから、CKさんの名前は見えただろーが」

「ああ、けども、あっさり志望校は変えてたと思う」

「え、どうしてだ。CKさんの思い出は変わらんだろう」

「いや、理科室のニオイとのコントラストがあったからこそやったと思う」

「理科室の臭いで、CKさんの匂いが際立ったって言うんなら、ちょっと……フェチめいてないか。怪しいぞ」

「洞察力のないジジイやなあ」

「なんだ、仕返しか?」

「確かにな、理科室のニオイは妖しくて変なニオイや。そのニオイの中で化学部の実験やってる彼女は、ちょっと妖しいやないか。ほんの5%ほどやけど、お仲間て感じがしてな……ん、臭わへんか?」

「え……」

 なんだか、理科実験のような臭いがしてきました。

 ゲホゲホゲホ

 階下で栞が咳き込む声がします。

「どうした、栞!?」

 ゲホゲホゲホ

「ちょっとヤバイいぞ」

「栞!」

 

 階下に降りると、窓やサッシを全開にして栞が咳き込んでいます。

 

「ごめん、お祖父ちゃん、風呂掃除してて、洗剤注ぎ足したら……ゲホゲホ」

「あ、栞ちゃん、似たボトルやけど、メーカーが違うよ!」

 風呂場から、洗剤のボトルを取り出して、庭に放り出す武者。

 我が家にも新しいニオイの記憶が刻み込まれました(;'∀')。

 

 

☆彡 主な登場人物

  •  わたし        武者走走九郎 Or 大橋むつお
  •  栞          わたしの孫娘 
  •   武者走                   腐れ縁の友人


 

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RE・かの世界この世界:183『淡路の浜でたこ焼きを』

2023-08-09 06:13:52 | 時かける少女

RE・

183『淡路の浜でたこ焼きを』テル 

 

 

 やればできるものだ。


 ケイトの言う通り、右足を出して、それが沈まぬうちに左足を出し、左足が沈まぬうちに右足を……という具合に交互に進めて行くと、背後のオノコロジマはアメノミハシラ共々霞の向こうに滲んで消えた。

「これは、淡路島を抜かしてしまって四国に着いてしまったかもしれない!」

 ちょっと興奮気味なイザナギは浜辺の砂をキュッキュと踏みしめながら陸に上がっていく。

「ハァハァ……ヤ、ヤッタア(^▽^)/」

 無邪気なケイトは水上歩行が上手くいったので、足を痙攣させて肩で息をしながらも嬉しそうだ。

 セイ!

 小さく掛け声をかけえてジャンプすると、ヒルデは空中で一回転して地形を確認する。

 ズサ

「わるいがイザナギ殿、ここはまだ淡路島の南端だ。東に進むと水道の彼方に四国の陸地が見えたぞ」

「そうなのか?」

「ああ、生まれて急に広がった世界だから、ポリゴンが足りないのだろう。アメノミハシラは描写が凝っていたからなあ。あちらにポリゴンを食われて間に合わないんだ」

 そう言えば、アメノミハシラは最初こそ寸胴の電柱のようだったけど、イザナギ・イザナミが国生みするころには、青々と葉を茂らせて巨木のようになっていた。あの描写がテクスチャでなく、表皮の凹凸、葉の一枚一枚を造形していたら、その負荷はテラバイト単位になっていただろう。安易に背景の壁紙にしてしまわないところに、この国を作っていく姿勢が現れているような気がする。

「なんだ、そうかあ……」

 現実を知ったテルが、ヘナヘナと砂浜に膝をついてしまう。

「よし、先はまだ長い。オノコロジマでは水も飲まずに出てきてしまった、ここで食事休憩にしよう」

「すまんな、イザナギ殿」

「いやいや、わたしの都合に付き合ってもらっているんだ。それに、こまめに食事休憩をしていれば、自ずと土地々々の産物を使うことになって勉強になるだろうし、この国の発展にもつながるだろう」

「そうか」

「じゃ、お言葉に甘えておこうか」

「うんうん(^▽^)」

「では、こんなもので……えい!」

 イザナギが指を一振りすると屋台が現れた。

「ええと、これは……」

 自分で出しておきながら、何の屋台か分からずにイザナギはインタフェイスのようなものを出してマニュアルを読みだした。

「たこ焼きのようだな……」

「「たこ焼き(ºº)!?」」

 わたしとケイトはパブロフの犬のようにヨダレが湧いてくる。

「たことは……」

 北欧の戦乙女には馴染みのない食べ物なので、いぶかし気にマニュアルを覗き込む。

「こ、これはデビルフィッシュではないか( ゜Д゜)!?」

「デビル……?」

「ク、クラーケンだぞ!」

 思い出した。ヨーロッパでは、ごく一部を除いてたこを食べる習慣がないんだ。

 その名もデビルフィッシュ、悪魔の魚と名付けて恐れられている。その巨大な魔物はクラーケンと呼ばれて海上の船さえ襲って海中に引きずり込むと言われている。

「いや、これは美味しいから(o^―^o)」

 ケイトが寄って来ると、早くもまな板の上にタコが実体化してウネウネと動き始めている。

「ヒエーーー!」

 あっという間にヒルデは淡路島の真ん中あたりまで逃げてしまう。

「あ、悪いことをしたかな(^_^;)」

「いやいや、作り始めたら匂いに釣られて出てくるよ、さっさと作っちゃおうよ!」

 たこ焼きモードに入ったケイトは不人情だ。

「じゃ、焼こうか!」

 イザナギが拳を上げると、たちまちタコは賽の目切りのユデダコになり、ボールの中には薄力粉を溶いた中に山芋が投入されて攪拌されていく。 

 やがて鉄板も程よく加熱されて、仄かに油煙も立ち上ってきた。

「いくぞ!」

 ジュワーーーー!

「「おお!」」

 鉄板の穴ぼこに柄杓で生地が流される! 思わず歓声が出てしまう!

「よし、タコ投入!」

「イエッサー('◇')ゞ!」

 嬉々として賽の目切りのタコを投入するケイト。わたしは、言われもしないのにネギとキャベツと天かすと紅ショウガを手際よく投入というか、ばら撒く。

「テルもなかなかの手際だな」

「あ、去年の文化祭で……」

 そこまで言うと、去年、冴子といっしょに文化祭のテントでたこ焼きを焼いたことがフラッシュバックする。

 そうだ、二人の友情を取り戻すためにも頑張らなくちゃ。

 今度こそ。

 しかし、ここは試練の異世界。目の前のミッションに集中しよう!

 ミッションたこ焼き!

 やがて、一クラス分くらいの穴ぼこでグツグツたこ焼きの下半分が頃合いに焼き上がる。三人首を突き合わすようにして揃いの千枚通しでたこ焼きをひっくり返す。

「ちゃんと、バリの部分は中に押し込んでからね!」

「うん、このパリパリのバリが美味しいんだよね(^#▽#^)」

「なんだか、黄泉の国遠征も楽勝のような気がしてきた!」

 たこ焼きというのは、やっぱりテンションが上がる。

 でんぐり返しも二度目に入るころには、タコ焼きを焼く匂いが淡路島中にたちこめて、いつの間にかヒルデも涎を垂らしながら戻ってきた。

「こ、この香ばしい匂いがたこ焼きというものなのか(ºº)?」

「ああ、食べたら世界が変わるよ」

「そ、そうか……」

 ジュワ!

「あ、鉄板の上にヨダレ垂らすなあ(# ゚Д゚)!」

 ケイトが真剣に怒る。

「す、すまん」

 こんなヒルデとケイトを見るのも初めてだ。

「よーし、こんなもんだろ!」

 腕まくりしたイザナギは手際よくトレーにたこ焼きを載せ、わたしがソースを塗って、ケイトが青ノリと粉カツオを振りかける。

「「「できたあ!!!」」」

「おお、食べていいのか!?」

「う……」

 返事をしようと思ったら、すでに手にした爪楊枝で真ん中の一個をかっさらったかと思うと、瞬間で頬張るヒルデ。

 さすがはオーディンの娘! ブァルキリアの姫騎士!

「あ、ヒルデ!」 

「うお! ふぁ、ふぁ、ふ……ぁ熱い(#゚Д゚)!」

 見敵必殺の戦乙女の早業が裏目に出た。

「水を飲め!」

 目に一杯涙をためて熱がるが、それでも姫騎士、口から吐き出すというような無作法はせずに、イザナギが差し出したペットボトルの水を飲みながら、無事に咀嚼して呑み込んだ。

「ああ、死ぬかと思った……」

「どうだった、ヒルデ?」

 ケイトが身を乗り出す。

「ああ、美味かった。国生みの序盤から、こんなものを作るとは、日本の神話も侮りがたいものだ……」

 ヒルデの真剣な感想に、屋台を囲んだ『黄泉の国を目指す神々の会』は暖かい空気に包まれた。

「さあ、我々もいただこうか」

 四人揃ってたこ焼きをいただく。

 淡路の砂浜で食べるたこ焼きは、なんとも豊かな味わいだ。

 美味しいものを食べて、みんな幸せになるのは嬉しいことだ。ムヘンでは、なかなかなかったことだ。

 大変な旅かもしれないががんばろうという気持ちになった。

 その幸福感のせいか……背後の草叢の気配に気づくのが遅れるわたし達だった。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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くノ一その一今のうち・69『ミッヒはランツクネヒト』

2023-08-08 09:59:31 | 小説3

くノ一その一今のうち

69『ミッヒはランツクネヒト』そのいち 

 

 

 英語の時間は自習になった。

 

 なんでも、先生が具合悪くなって保健室で寝てるって話。

『これでゆっくり話せるね(^▽^)』

 え、忍び語り?

『何者よ、あんた?』

『アンタじゃないよ、ミヒャエル・ミュンツァー。ミッヒって呼んで』

『だから何者?』

『ランツクネヒト』

『ランツク……?』

『ランツクネヒト、日本の言葉だと……傭兵かなあ、まあ忍者みたいなもの』

『ドイツ人?』

『まあね、研修で徳川物産に来てるんだ』

『その研修生が、どうしてわたしの後ろにいるのよ?』

『え、だって、僕の担当はキミだから』

『聞いてないわよ』

『連絡ミスだね、確認してみてよ』

『あとで』

『ええ、今でもできるだろ?』

『だって、先生来るよ』

『え?』

 ガラ

「やあ、迷惑かけたね、もう大丈夫だから授業やるわね」

 弱々しい声で顔色も悪いんだけど、英語の妹尾先生はキッパリと授業を始めた。

『量を間違えたかなあ……』

『あんたの仕業ね』

『ハハ、先生も疲れ気味だったし、ちょっと休んだ方がいいかなって(^_^;)……』

「テキスト34ページ、レッスン2セクション1、一行目から五行目まで読んで訳して……今日は風間さんからね」

「は、はひ(;'∀')」

 ヤバイ、ドイツ人傭兵のお蔭で半分もできてない。

『あ、ぼくがサポートするから』

『さっさと、お願い』

 

 それで、まあ、事なきを得て昼休。

 

「はい、どうぞ」

 ピチャ

「きゃ!」

 振り向くと頬っぺたに冷え冷えの缶コーラ。

「アニメとかだったら、定番だろ、お近づきのシルシ」

「ちゃんと買ったんでしょうね?」

「もちろんだよ。学食のメニューって利が薄いから、儲けのかなりは自販機のジュースなんだよ。昔と違って分母になる生徒数も減ってるしね。ぼくはちゃんと売り上げに貢献したよ。あ、二個目はルーレットに当ってただだったけど」

「ふうん、籤運もいいんだ(´¬_¬)」

「じゃ、カンパイ!」

 プシ!

 プルトップを起こすと、程よく炭酸が解放される。

 ドジな奴は、学食から駆け上がってきて缶をシェイクしてしまって中身ごと盛大に噴出させてしまう。

「あ、炭酸大丈夫だった?」

 グビグビグビ……プハァ!

 返事の代わりに一気に飲む。

「おお、今度はビールでやろう!」

 グビグビグビ……プハァ!

 ゲップ!

「「アハハハ(^◇^)」」

 不覚にも揃って笑ってしまった。

「で、なんでランチクネクネが研修になんか来てんのよ?」

「ランツクネヒト」

「そのクネヒトが、なんで?」

「共通の敵に対処するためさ。草原の国は一つじゃないからね」

「なるほどね」

「近々、共同で働かなきゃならないことになる。撮影所でもいっしょになると思うから、よろしくね、センパイ」

「あ、五限は生物で移動だよ」

 キンコンカンコーン キンコンカンコーン……

 ちょうど鳴ったチャイムでミッヒの手を躱す。

 すると、奴は窓枠に足を掛けた。

「ちょ、なにすんのよ!」

「生物室なら飛んだ方が早い」

「校内では、そういうの禁止!」

「チェ」

「舌打ちすんな\(`-´メ)」

 

 生物教室へ向かう途中、学食の前を通る。

 キャー ウワァ ラッキー

 自販機を取り巻いて歓声が起こっている。

「あ!?」

 自販機のルーレットがマヒしたように当たりを出して、次々に缶ジュースを吐き出していた。

「アハハハ」

「笑ってる場合か\(`-´メ)」

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミヒャエル        ドイツのランツクネヒト(傭兵)

 

 

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RE・かの世界この世界:182『黄泉の国を目指す神々の会・2』

2023-08-08 06:11:39 | 時かける少女

RE・

182『黄泉の国を目指す神々の会・2』テル 

 

 

 歩いていくと言うのか!?

 

 いざ出発という時になって、波打ち際に向かって歩き出すイザナギに驚いた。

「はい、この世界は生まれたばかりで、交通手段がないのです。すみませんが、歩いて行くしか手がないんです」

 たしかに、オノコロジマはアメノミハシラが太ぶとと突っ立っているだけの小島で、海の向こうは生まれて間がない裸の土地が黒々と続いているばかり。

 所どころに煙が立ち上っているのは、イザナギが切り刻んだ火の神の欠片が燻っているところだ。

 ようく見ると、それでも木々の緑が萌えはじめているところがあって、やがては豊かな森林地帯になりそうだが、道らしいものや人里らしきものは気配も無い。

「はてさて……」

 ブァルキリアの姫騎士は、岩場の一番高いところに登って腕組みをする。潮風に髪を嬲らせ、彼方の陸地を睨んでこの先の思案……というよりは覚悟をしているんだろう。

 歩いていくと言っても、道があるわけではないので、剣を振るって蔦や草を薙ぎ払いながらの強行軍になりそうだ。

「イザナギ、わたし達は空を飛ぶことができる。きみ一人なら背負うなり、ぶら下げるなりして行くことができる。空を飛んでいかないか?」

 軽々と岩場から下りてきてヒルデが提案する。うる憶えのわたしでも、黄泉の国がオノコロジマの近くではないことぐらいは分かっている。黄泉の国は日本海側のどこかであったはずだ。当然、海を渡らなければならないし、中国山脈も走破しなければならない。

 まず、なにより目の前の海を、飛ぶこともせずに、どうやって渡ると言うのだ?

「歩いて行くんです」

「「「歩いてえ!?」」」

「そんなに難しいことではありません」

「いや、難しいだろ」

「というか、不可能だ」

「でも、おもしろそう(^▽^)/」

 わたしとヒルデがいぶかる中、ケイト一人が無邪気に目を輝かす。

「そう、面白い。右足を出して、それが沈まぬうちに左足を進め、左足が沈まぬうちに右足をという具合に交互に進めて行けば歩いていけるはずです!」

「うん、やってみよう!」

「ま、待て。仮に歩くとしても、事前にルートを確認しておかないか」

 せっかく奮い立たせた覚悟をくじかれて、それでもヒルデは自分が仕切らなければならないと我々の顔を見る。

「そうね、ケイト、そこの木の枝を拾って」

「うん、どうぞ」

「えと……オノコロジマがここだから……」

 わたしは砂浜におおよその西日本の地図を描いた。オノコロジマは淡路島の東に想定されているはずだ。

「なるほど、これがわたしがイザナミと産んだ国なのか……」

「まあ、地理苦手だから、だいたいの位置関係が分かる程度にしか描けないんだけどね(^_^;)」

「海を三回渡らなければならないのだな……」

 元来が北欧の戦乙女、地図に目標を記すと目が輝き始める。

 ケイトはぼんやりと見ているだけで、まだ他人事のような目をしている。ケイトは時間的にも物理的にも目の前に迫ってこないとイメージの湧かない性格だ。その性格のために身を亡ぼすほどの目に遭って、わたしの旅に付き合っている。どんな目に……ちょっと思い出せないが、今は目の前のことだ、どうやって黄泉の国に至るかだ。

「淡路島に渡って西に進む、次の海を渡ると四国。たぶん鳴門市のあたりに着くと思う。そこからは右手に海を見ながら北に……高松の向こうあたりから瀬戸内海を渡って……岡山かな?」

「あ、そのあたりまで行けば、分かると思う。黄泉の国は負のオーラがハンパではない、おそらくは、そのオーラが空まで立ち上って目印になると思う」

「よし、じゃあ、とにかく出発しよう!」

 自慢のオリハルコンを抜くと、ヒルデは西の空を指した。

 ボワ!

 一瞬で、我々の前方に『黄泉の国を目指す神々の会』の旗が風をはらんではためいた!

「あたしが持っていいよね!?」

 地図には興味のないケイトだったが、旗には一瞬で食いついて、行軍の先頭に立った。

 

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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やくもあやかし物語・2・001『やくもふたたび』

2023-08-07 21:05:28 | カントリーロード

くもやかし物語・2

001『やくもふたたび』 

 

 

 ラスボスをやっつけて、達成感と虚脱感がいっぺんにやってきた。

 

 三か月かかったゲームも、これでお終い。

 エンドロールが淡々と流れ、最後にスペシャルサンクス……Yakumo Saitou……と出てくる。

 あ……プレイヤーの名前、リアルにしてたんだ。

 ま、いいやオフラインでやってたし……コンプリートムービーが2クール目になりかけ、オプションボタンを押してゲーム終了をクリック。

 ホームに戻ると、ちかごろご無沙汰の『メディア』が気になってネタフリックスにしてみる。

 おすすめの映画……あ、これ見れるようになったんだ!

 流行り病のせいで映画館で見れなかった作品が見られるようになってる!

 近ごろのわたし、少しは人と喋れるようになった。そのぶん、あやかしたちとはご無沙汰になった……っていうか、あやかしの姿も聖霊の声も聞こえなくなった。

 寂しかったんだけど、いつの間にか学校の人たちとも、まあ、普通に話せるようになった。

 映画とかアニメの話をしている子たちが居て、いつの間にか、その話の輪の中に入れるようになったんだ。

 でね、流行りのコンテンツをネタフリで観るんだ。

 ちょっと無理してスタンダードプラン。

 中学生のお小遣いで月々1490円はお安くない。

 でも、まあ、自分への投資だしね。三月目からはお小遣いとは別に貰えるようになったし。

 まあ、まだ中学生だし甘えてもいいよね。

 

 それで、そのまま、日付を跨いで観てしまった!

 

 一日のうちにゲームと映画のエンドロールを観てしまうなんて、我ながらタフになったもんだ。

 二つの感動を胸に、そろそろ寝ようとコントローラーを持って、気が付いた。

 

 え……わたし、英語のままで映画を観ていた。

 

 画面の『選択』には英語と日本語があって、英語のところにアンダーバーが付いてる。

 あ、見終わって無意識に『選択』を英語に切り替えてしまったんだ。

 わたしの英語能力は[this is a pen]のレベルだからね(^_^;)。

 英語だと、ラストの台詞はどういうんだろ……英語でラストのところを映してみる。

 

 え……え……英語なんだけど、意味が分かる。分かってる!

 

 I’m feeling a little peckish――ちょっとお腹が空いた――と和訳しなくても理解できてる( ゚Д゚)!

 

 嬉しい1/3 びっくり1/3 気持ち悪い1/3 

 で、さっさと寝た。

 

 寝坊することも無く、いつものように起きて学校に行く。

 いつもの坂道を下って折り返しの曲がり角。

 曲がったところに三人の外人さん。スマホを見ながら困った様子。

 近ごろは、こんなところまで外人観光客の人たちが足を伸ばしてくる。

 地元民にはなんでもないところでも、外人観光客の人たちには新鮮なんだね。

 でも、どうやら地図音痴で、アプリの地図とリアルの地形を重ね合わせられないみたい。

「だいじょうぶですか?」

「あ……ええと、このつづら折りの坂道なんだけど……」

「あ、それなら、方角が逆です。こっちの道を……」

 そのつづら折りの道は、わたしにも思い出の道なんで情熱的に説明できた。

 

 ちょっといい気分になって回れ右……教頭先生が立っている。

 

 教頭先生は、時どきこの道を通って学校に通勤しているので、たまに見かけるんだけど、顔を合わせるのは初めて。

「斎藤さん、きれいなクィーンズイングリッシュでしたね……」

「え……あ……?」

 そうだ、思い出したら外人さんとは英語で喋ってた。

「その英語は……」

 聞き咎めてるんじゃない、教頭先生の中にある情報と照らし合わせている、そんな感じ。

 教頭先生は、まだあやかしが見えていたころ二三の事件で関りがあった。

 能力がなくなってからは、普通の生徒と教頭先生の関係。直接口をきくのもその時以来。

「よかったら、放課後、職員室にきてください」

「は、はい」

 

 そして、放課後、職員室に行くと「この学校を受けてみないかい」と、ある学校を紹介された。

 三年生の秋になっても受験先が決まらないわたしは――この学校、面白いかもしれない――と思ってしまった。

 

 その学校はね、ヤマセンブルグ王立民俗学学校っていうんだ。

 

 しばらくぶりに、わたしの中に火が灯った気がした。

 

  

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鳴かぬなら 信長転生記 136『信長版西遊記・玉門関・1』

2023-08-07 11:14:25 | ノベル2

ら 信長転生記

136『信長版西遊記・玉門関・1信長 

 

 

 万里の長城さえ尽き果てて、なお、その道は天竺や秦西(たいせい)に至らんと地平の彼方に伸びる。

 シルクロード……呟いただけで胸の高鳴りを憶えるのは戦国大名の性だ。好奇進取の気概あればこそ、この信長は天下の半ばを手中に収め得たし、生まれ変われば世界に雄飛することも夢ではない。

 

 しかし、そのシルクロードには背を向けて、俺たちは三国志の中原を目指す。

 

 この旅は、三国志に戻り、曹操の野望を打ち破り、扶桑にも三国志にも平安をもたらすための旅だ。

 次兄曹素の姦計に嵌められ国賊として追われる茶姫を援け、叶うことなら、茶姫を魏王に座に就かせ、三国を鼎立させる。そのために、天下三分の計の主唱者である諸葛茶孔明を訪ね、孔明との、中華風に言うならば合作を計る。

 曹素のために、茶姫は謀反の首魁にされ、つまりは全国指名手配されている。茶姫の近衛として付き添った俺たちも、織田兄妹としては三国志の血を踏むことはできない。

 そのために、意には沿わないが、オブジェの三蔵を戴いて、西遊記の続編というかスピンオフというかを装って蜀の成都を目指している。

 

「あ、見えてきた、ブヒ!」

 

 意外にノッテいる市が猪八戒になり切って声を上げる。

「玉門関だッパ」

 茶姫も語尾に『カッパ』を付けることで、沙悟浄らしさを出そうとしているのだが、促音化させて『ッパ』になっている。

「ああ、そうだな」

「だめだぞ、悟空は語尾に『ウキ』を付けなきゃブヒ」

「やってられるか(#`O´)!」

「そうだぞッパ」

「三蔵法師、なんとか言ってやれ」

 三蔵はアルゴリズムに従ってニコニコ笑うばかりだ。

 ちょっと、意地悪してやる。

「市、いや八戒、玉門関の玉門の意味を知ってるか?」

「え……玉のように大事な関だからブヒ?」

「知っているッパ」

「沙悟浄は答えちゃだめだブヒ」

「ふふ、八戒には、ちょっとむつかしい」

「あ、あ、そんなことない。言えるもん、ブヒ」

 子どもの頃に、他愛のないナゾナゾや質問をして遊んでいた時のノリになってきた。

 市……八戒はインタフェイスの地図を睨んで、なにか閃いたようで、嬉しそうに指を立てた。

「玉とは、将棋の駒の玉将のことブヒ」

「なんで、将棋になるんだ?」

「玉門関は河西回廊の西端ブヒ。長城も尽きてしまってるし、北や西から攻め込まれれば苦しいブヒ。だから、ちょっと大き目の王将クラスの砦を造ったブヒ」

 なるほど、画面に映っている玉門関は小振りだが堅牢な城塞だ。周囲を見ると、二重に防壁が組まれた跡もあり、最果ての出城にしては立派な造りだ。

「玉門関から敦煌までは凡そ300キロ、馬なら五日ほどだが、砦や城を攻めるには歩兵が中心の部隊編成になって、十日はかかる。つまり、十日以内に落す自信があれば攻めてみようという気にさせる構えだ。一万、いや、わたしなら8000の兵があれば五日も掛からん。ちょっと勢いがあれば攻めてみようという気にさせるぞ」

「そうだな」

「しかし、よく見ると、敦煌との間に小規模な砦が八カ所。忍ばせれば、それぞれ1000から1500の兵を籠めておくことができる。合わせれば8000から12000の兵になる。連携さえとれていれば、玉門関が包囲されるまでに陣を敷いて野戦に持ち込める。玉門関の兵と合わせれば、敵を逆包囲することもできる」

「おお、さすがは信長の妹、よく見抜いておる」

「そ、そうよ、玉を囮にして、敵を一網打尽にする。将棋の構えに似てるのよ」

「ブヒを忘れているぞ」

「こ、これから言うとこなのよブヒ!」

「悟空、もう正解を言ってやれッパ」

「仕方がない。ようく聞いていろ」

「な、なによブヒ」

「玉門関の玉門とは、女のオ○コのことだ」

「な(; ゚゚)!?」

「見ろ、玉門関の大手門を!」

「え……」

「縦長にすぼまった下に小さく門があって、そのような感じであろう」

「…………(#'∀'#)」

「その様子を見て、いつかしら、玉門関と呼ぶようになったのだ。ここを侵せば中原を落としたも同様だとな」

「……こ、このうつけぇ! お、お兄ちゃんのバカァ! ブヒィィィ!!」

 ドタドタドタドタ……!

「行ってしまったぞッパ」

「前には玉門関しかない、行けば、すぐに追いつく」

 

 しばらくは河西回廊、砂漠の旅だ、力を抜いて行かなければな。

 意味は無いんだろうが、三蔵がウフフと笑った。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

  

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RE・かの世界この世界:181『黄泉の国を目指す神々の会・1』

2023-08-07 06:05:52 | 時かける少女

RE・

181『黄泉の国を目指す神々の会・1』テル 

 

 

 こいつめっ!!

 

 イザナギは太刀を振るった!

 突然のことに、止める暇もなかった。

 温厚な男のように見えているが、さすがに国生みの神だ。オーディンの威光も届かぬ流刑地ムヘンで様々な災厄に遭い、敵の襲撃を凌いできた我々でも咄嗟に対応できなかった。

 イザナギは、生まれたばかりの火の神を一撃で切り倒した。

 その斬撃は凄まじく、火の神は数百数千に爆散して、できたばかりの世界に散ってしまった。

「イザナギ、気持ちは分かるが、あれでは、火のタネを増やしただけだぞ」

「あ……すまない、ついカッとなって荒ぶってしまった(-_-;)」

「ヒルデ、あちこちに火の山が盛り上がってきたよ」

 ケイトが指差す方を見ると、霞を通してもはっきりと分かるほどに赤々とした山容が浮かび上がっている。それも一つ二つではなく、山の向こうにも次々と燃え盛り始めている。

「……イザナミさんが息を引き取ったよ」

 そこだけ焼け残ったイザナミの手は脈を打っていなかった。

「イ、イザナミ……イザナミィ!」

 真っ黒に焼け焦げた妻の亡骸を掻き抱いて慟哭するイザナギ。

 その後ろで、我々は不運な女神に頭を垂れるばかり。

 ヒルデも北欧神として、かなり過酷な運命を背負わされているが、イザナギ・イザナミの不幸に言葉もない。

「テル、このあとはどうなるんだ?」

「それが……検索しても出てこなくなってきた」

 わたしたちは日本神話を習っていない。

 日本史の授業の中で『古事記』『日本書紀』と習うだけだ。712年『古事記』、720年『日本書紀』、稗田阿礼、太安万侶も四文字の記号のような人物名としか頭に入っていない。

 日本神話は、ラノベやアニメのモチーフにされ、加工されたものしか知らない。

 ついさっきまで身を隠していたアメノミハシラも、ゲームのダンジョンでしか知らなかった。

「妻を迎えに行く!」

 ひとしきりの慟哭が収まると、イザナギはスックと立ち上がり、西の空に向かってまなじりを上げた。

 はた目にもカッコいいのだけど、こういうヒーロー感丸出しの男と言うのは、えてして失敗が多いものだ。

「迎えに行くのはいいが、どこに行こうと言うのだ?」

 オノコロジマは四方が海に囲まれて、真ん中にアメノミハシラが立っているだけの孤島だ。

「黄泉の国」

 イザナギが目を向けた先は霞が薄れ、島々を浮かべた原初の海が湯気を立てている。

「我々も同行したいが、かまわないか?」

 ヒルデが一歩前に出る。

「おお、ご同行願えるか?」

「ああ、国生みの最初から関わってきたからな。東西の隔てはあるが、共に原初の神だ、力になれるのであれば」

「おお、百人力! いや、千人力! 万人力! よろしくお願いする!」

 そう言うと、イザナギはズタブクロと剣一振りという軽装で歩き出した。

「え……歩いていくの?」

 ケイトが、残念そうに呟く。

 ムヘンでは乗り心地はともかく二号とか四号に乗って移動していた。のっけからの歩きは意欲を削がれるのだろう。

「ヒルデに出会うまでは歩いていたじゃない。荒れ地の旅なんて、ケイトもはしゃいでいただろ」

「え、そうなの?」

「忘れた?」

「あ、うん……最初の方は、なんか記憶があいまいで」

「ま、そのうちに思い出すさ」

「さあ、みなさん、潮が満ちる前に島を出ますぞ!」

 イザナギが上げた拳には『黄泉の国を目指す神々の会』と添乗員の小旗のようなものが握られていた。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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せやさかい・426『王立民俗学校開校式と8/6の新行事』

2023-08-06 11:24:48 | ノベル

・426

『王立民俗学校開校式と8/6の新行事ソフィー   

 

 

 8月1日付で中尉に昇進した。

 

 士官学校出ではないノンキャリアとしては早い昇進だ。

 諜報部で王女付ガードなのだから将校の階級が必要。

 分かるだろうか、兵や下士官では出入りできないところが、軍の施設にも王宮にも、けっこうあるんだ。

 日本でも『殿上人』というのがあっただろ。

 従五位下(じゅごいのげ)という身分。従五位下というのは天皇のお住まいである清涼殿に上がることを許される最下級の身分で、殿に上がる人と書いて殿上人だ。

 軍隊では将校、英語ではオフィサー、自衛隊では幹部という。

 単なる資格なのだから、最下級の少尉でよかった。少しサバを読んでいるが、この三月に高校を出たばかりだしな。

 身に過ぎた階級や位階は、時に軋轢の元になる。

 ヤマセンブルグは小さな国だが、王室があるので貴族制が残っている。その貴族の子弟で士官学校を出ていても中尉への昇進には三年かかる。まして、わたしは平民だ。

 これには裏があるはずだ。

 なにか新しい任務、転属ということはない。王族のガードというのは、ガードする方もされる方も気心がしれていないと出来るものではない。だから、わたしは王女と同じ日本の聖真理愛学院に留学し、王女と寝食を共にした。おそらくは、いまのガードの仕事に何かが加わる。

 

「ペンが停まってるぞ、ソフィー」

 

 振り返って驚いた。

 一瞬、化物かと思った。

「そんな化物を見るような目で見ないでくれる、自分でも恥ずかしいんだからね」

 恥ずかしいと言いながら余裕しゃくしゃくな軍服姿は、先輩のメグ・キャリバーン。

 もう予備役になっていたはずなのに、夏の第一種軍装(正装)を着用して、胸には嬉しがりの子どものように勲章やら精勤賞やらレンジャーやらのバッジが付いている。

 それに、階級章が中佐になっている。

「昇進したんですか?」

「おまえ同様にな。そろそろ着替えろ」

「え?」

「それは、夏期第三種軍装、つまり事業服だ」

「日常勤務は、いつもこれですが」

「認証式に臨むのだ、第一種軍装が決まりだ」

 ぐぬぬ……中尉への昇進の時でさえ第二種軍装だった。第一種軍装というのは、いわば礼服。

 ただごとではない。

 

 日報を閉じ、一分で着替えて宮殿の前に出ると、総理大臣の専用車が停まっている。

 

 総理が……いや、ボンネットに総理大臣旗は付いていない。

 大臣旗無しの総理大臣専用車を使えるのは……総理大臣経験者だ。

 

「お入りください」

 

 イザベル女史に促されて、女王執務室に入る。

 正面に陛下、一歩下がってヨリコ王女。

 そして、その前に大礼服で立っているのは元総理大臣のカーナボン卿。

 それに、見知ったのや知らないのやらが十人、正装で佇立している。

「時刻です、陛下」

 スックとお立ちになる陛下も夏の礼装をお召しになってサッシュ(礼服のタスキ)には国章のメダリオンが付いている。これは、議会に臨席される時や士官学校の卒業式でお召しになる最高のフォーマルだ。

「ただ今より、王立民俗学校の開校式を挙行いたします」

 民俗学校?  folklore studies School なにをやる学校なんだろう。

「学校長辞令交付」

 イザベル女史が辞令を載せた房付きの盆を恭しく差し上げる。

「フィリップ・カーナボン、卿を王立民俗学学校初代学校長に任じます」

「ははっ」

 総理大臣の認証と同様の所作で辞令を拝受するカーナボン卿。

「臣、フィリップ・カーナボン謹んで拝命いたしました」

「続いて、教頭辞令交付」

「メグ・キャリバーン、予備役の任を解き、中佐に昇進と共に王立民俗学校初代教頭に任じます」

「ははっ」

 ガシャ

 帯剣と勲章をガチャガチャいわせてメグ先輩が進み出る。

「臣、メグ・キャリバーン謹んで拝命いたしました」

 続いて、教官十名の信任が行われて自分の番。

「ソフィア・ヒギンズ」

「ははっ」

「教官団の中では、あなたが最年少です」

「はい」

「この民俗学学校は、78年前に廃校になった王立○○学校の準備学校です。内外の目があって、まだ正式名称を使うわけにはいきませんが、いずれ正式な○○学校になります。生徒は、国内外から50名の生徒を受け入れ、広く一般学問の他に○○を教授して、ゆくゆくは世界を支える○○使いを育てます。あなたには、その未来の○○使いの先頭に立つことを期待しています。今まで封じたり小出しにしか使えなかった○○を大事に磨いてください」

 そういうことだったのか。

「ソフィア・ヒギンズ。あなたには同時にプリンセスのガーディアンもあります。ゆくゆくは、その方面でのプリンセス、未来のクイーンの補佐役にもなります。とりあえずは、週二回の○○実習の講師を務めてもらいますが、それを心に留め置き励んでください」

「ははっ」

 ほとんど寝耳に水のことなんだけど、五日前の昇進以来――なにかある――と覚悟もしてたので、穏やかに胸に収めることができた。

「では、最後に、民俗学学校総裁を任命します」

 陛下は、イザベル女史を介さず、直に宣言された。

「プリンセス、ヨリコ スミス メアリー アントナーペ エディンバラ エリーネ ビクトリア ストラトフォード エイボン マンチェスター ヤマセン。汝を王立民俗学学校総裁に任じます!」

「は、はひ( ゚Д゚)!」

 

 プリンセスは、なにも聞かされていない様子。

 不謹慎だが、ちょっと面白かった。

 

 その後、王宮教会に主だった者、手すきの者が集められ、一分間の黙とうと祈りを捧げる。

 陛下の発案で、今年から始まった。

 何のためかって?

 8月6日だ。それだけで分かるだろ。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)
  •   

  

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RE・かの世界この世界:180『休まないのか!?』

2023-08-06 06:38:27 | 時かける少女

RE・

180『休まないのか!?』ヒルデ 

 

 

 普通休むだろう!

 

 神さまとは言え、たった二人で日本列島と付属の島々を産んだんだ。

 これは休みを取るだろ。

 ユダヤ教やキリスト教では、六日間で世界を作ったゴッドは丸一日の休みを取って、それが安息日たる日曜日の起源になっている。

 ユダヤ教では、ことに厳格だ。車に乗ってはダメで、火を起こしても電気製品のスイッチを入れてもいけない。もし破って働こうものなら死刑だ!

 我が北欧神話では神々の骸から世界を作っている。元来が神の体なので、ちょっと手を加えるだけで、山や湖や土地になる。だから、とりたてて安息日というのはないんだが、日ごろからこまめに休んでいる。

 日本神話ではイザナギ・イザナミがリアルに交ぐわい、イザナミが腹を痛めて産んでいる。

 (#*´0`*#)⇒スポン (#*´0`*#)⇒スポン (#*´0`*#)⇒スポン (#*´0`*#)⇒スポン (#*´0`*#)⇒スポン 

 毎分、三体とか四体のペースで、オートメーションでタイ焼きだか人形焼きだかを作ってる感じだ。

 ちなみに、日本では神を現す単位は『柱』だ。一人の神は一柱、三人なら三柱の神とか言うんだ。

 なんだか『鬼○の刃』のチームリーダみたいな呼び方で、数えただけでも大変そうだ。

 これは、休みを取らなければ母体が持たないだろう。

 ケイトなんか、とっくに休みのつもりで、すでに出来上がった大八島の探検旅行をしようとスマホで検索し始めたほどだ。

 

 ドシン! バタン!

 

 突然の衝撃に、わたしもテルも思わず剣の柄に手をかけ、ケイトはスマホをお手玉してしまう。

 男女神は休憩のお茶をすることもなく、国生みを続けているのだ。もう人形焼きとかじゃなくて、夜通し大砲でも撃ってる感じだ。

「な!? 国生みじゃないわよ!!」

「なんだと? なにを産んでいるというのだ?」

「ほら、見て!」

「え、ええ!?」

 なんと、イザナギ・イザナミの男女神は家づくりのパーツを産み出しているのだ。

 いちおうオホコトヲシヲの神とかイハツチビコの神とかのホーリーネームは付いているが、要は家のパーツだ。それぞれ、家の土台であったり、壁であったり、屋根であったり、芸が細かい。

「ざっくりと『家の神さま』とかでいいのに」

 慰安旅行をフイにしたケイトがボヤく。

「なんだか、健気ねえ……」

 テルはたて膝の膝小僧の上に顎を載せてしみじみ見入っている。

「これが砲撃なら、とっくに弾薬も切れて、砲身も破裂してるぞ……」

 日本人の律義さと言うのは神代の昔からだったのだなあ……父のオーディンにラグナロクのリクルートを丸投げされている北欧の戦乙女としてはため息が出るばかりの勢いと丁寧さだ。

「日本の学校には当番というのがあってね……」

「トーバン? 絆創膏かなにかか?」

「ちがうよ……まあ、係りよ。日直当番とか掃除当番とか生き物係りとか」

「なんだ、それは?」

 北欧に限らずヨーロッパの神話世界では、掃除や生き物の世話などは奴隷がやるもんだ。人間の世界でも、掃除とかは業者がやってるぞ。

「教室の一日のマネジメントをやるのが日直、教室や分担区域の掃除をやるのが掃除当番、花壇やウサギの世話をするのが生き物係とかね、そういうノリで、イザナギ・イザナミは神々を産んでいるんだと思うよ……」

「そうなのか……」

 テルとの付き合いも長い。感慨が伝染して、わたしまでシンミリしてきたぞ。

 家のパーツが終わると、今度はオホワダツミ、海の神。次に港の神、水面の神、潮の泡の神、水の神、木の神、山の神、野の神、霧の神……キリがないぞ(^_^;)。

 うわ!

 三人、思わずのけぞってしまった!

 イザナミの股の付け根が赤く輝いたかと思うと、瞬くうちにイザナミの体が火に包まれてしまった!

「火の神を産んでしまった!」

 生まれたばかりの火の神は、悪気はないのだろうが、母の乳房をまさぐって母を火だるまにしてしまった。

「イザナミいいいいいいいいいいい!!」

「助けよう!」

 テルの一言で、わたしもケイトも洞を飛び出し、カーテンや自分たちのマントをバサバサ叩きつけて火消しにかかった!

「どうして、消火器の神を先に産んでおかないのかなあ!」

「考えが及ばなかった(;゜Д゜)、とにかくイザナミを! 我が妻を(≧0≦)!」

「分かってる!」

 イザナギを入れて四人、必死で消火に勤め、なんとかイザナミの一命をとりとめた……。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・044『不発弾・2』

2023-08-05 10:04:58 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

044『不発弾・2   

 

 

 本物そっくり!

 

 検索した写真は、まさに本物そっくり。

 原子爆弾の姿は小中の教科書にも載っていたし、平和学習で見た映像でもおなじみ。

 中学の時は社会見学で平和博物館に連れていかれ、実物大の原子爆弾模型というのも見た。

 真っ黒のズングリムックリで、ニックネームもパンプキンとか云う。

 

 社会見学のあとで感想文を書かされた。

 

 何を書いたかは忘れたけど、たぶん『戦争は怖いです、戦争も原爆も無い世の中を目指しましょう』的な模範解答。

 傑作なのが二つあった。

『原子爆弾は、巨大なイチジク浣腸に四角い羽根を付けた形をしている』

『原子爆弾は、悪魔のよだれ』

 イチジク浣腸は男子。悪魔のよだれは女子。

 

 先生は女子の方を褒めて、男子の方は「面白いけどね……」でおしまいにした。

 

 わたしは、イチジク浣腸の方がいいと思った。悪魔のよだれは、なんだか狙いすぎてる。いかにも先生が喜びそうな比喩表現。

 模擬原子爆弾は、広島と長崎に本物を落とす前に練習のために落したものらしい。

 重さも形も本物と同じで、中には3トンの爆薬が入っている。

 通常の爆撃って、大きいものでも1トンだったらしい。名古屋で見つかったのは250キロだったから、すごいよ。

 炸裂すると、半径500メートルに被害が及んだらしい。

 なんで練習なんかするのかと思った。

 アメリカは、毎日何百トンも爆弾を落としていたんだから必要ないだろうに。

 ちがった。

 原子爆弾は、投下した後は全速で逃げないと、落としたB29もただでは済まないんだって。

 だから、投下した後の逃げ方の練習。

 その逃げ方の練習をするため、日本各地に50発も模擬原子爆弾を落として、そのうちの一発が不発で、うちの近所で発見された。

 発見されたのは、通称学校道。

 小学校と中学の間にある道路で、わたしは、この三月まで9年間もこの道を通っていたんだよ(;'∀')!

 

「撤去作業は九月になるかもしれないねえ」

 

 お祖母ちゃんが恐ろしいことを言う。

「そんなに先なの!?」

 学校道は寿川を底にして、上り切った台地的なところにある。

 大雨が降った時なんかは、けっこうな水が流れ落ちてきて寿川に流れ込む。

 ほら、この前の台風で沖縄とか中国でハンパない水害がおこったじゃん。

 もし、模擬原子爆弾が爆発したら、それが大雨の日だったりしたら、もう大惨事!

 うちって川沿いにあるからさぁ、ほら、熱海の近所であったじゃん。大雨の後、土石流が起って、めちゃくちゃ被害が出たの。

「まあ、大丈夫よ。うちの先祖は平安時代から、ここに住んでるけど、そういうの無かったから」

「平安時代に模擬原子爆弾は無かったでしょ(^_^;)」

「戦後78年爆発しなかったし、大丈夫、自衛隊の不発弾処理は優秀なんだよ~」

 朝顔の世話をしながら背中で語るお祖母ちゃんは頼もしいんだけど、微妙にクッタクあり気に見えるのは気のせいかなあ……。

 

 自転車で不発弾を見に行く。

 

 学校道は通行禁止になっていた。全面禁止じゃなくて、不発弾の前後50メートルずつ。

 発見場所は屋根の高さほどに土嚢が積まれ、その周りを鉄の壁で囲ってある。

 てっきり、自衛隊が警備してるのかと思ったら、普通のガードマン。

 道路工事とかで立ってるお爺ちゃんのガードマンじゃなくて、正社員的なガードマン。

 この暑いのに、ちゃんとヘルメット被って防弾チョッキみたいなのを着ている。

 学校はどうするんだろう?

 小学校の正門は閉まっている。

 近寄って見ると張り紙がしてあって――不発弾処理が終了するまでは南側と東側の通用門を使用してください――とパソコン文字で書いてある。

 中学も、北門と南の通用門を使うって書いてある。

 小学校の南門に行ってみる。

 

 あ……

 

 グラウンドに面した南門は全開になって、トラックが出入りしている。

 ひょっとして『不発弾処理本部』とかが出来たのかな?

 覗いてみると、プレハブのパーツみたいなのが運び込まれ、積み上げられたり。建設会社の人たちが図面を広げたり、三脚の付いたミニ望遠鏡みたいなのを覗いて、助手っぽい人がメモとかしてる。検索したら『トランジット』っていう測量器具らしい。

 不謹慎かもしれないけど、ちょっとワクワクしてきた。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

 

 

 

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