続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

デュシャン『折れた腕の前に』

2017-11-24 07:09:17 | 美術ノート

 『折れた腕の前に』

 折れた腕の前に雪かきシャベルがあっても、役に立たない。有用なものであるが使い手の不備により無用のものになっている。
 矛盾の間に潜む軋みの感覚、A(雪かきシャベル)とB(使用者)の間に効用が生じない。意味あるものが無意味に転落する。無常感の揺らぎ、空白あるいは沈黙…例えようのない断絶、この不思議な空気感がデュシャンの意図である。

 ちなみにこの雪かきシャベルの取っ手、中心にあるべきものが右寄りについている。これでは均等に力が入らないばかりか、破損は時間の問題のように思われる。(接続箇所も単に接着しただけに見える)

 不備の累積によって、不可能は領域を広げる。ただ、一方がゼロの場合(例えば折れた腕)は何をもってしても不都合かもしれない。


(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)


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