『折れた腕の前に』
折れた腕の前に雪かきシャベルがあっても、役に立たない。有用なものであるが使い手の不備により無用のものになっている。
矛盾の間に潜む軋みの感覚、A(雪かきシャベル)とB(使用者)の間に効用が生じない。意味あるものが無意味に転落する。無常感の揺らぎ、空白あるいは沈黙…例えようのない断絶、この不思議な空気感がデュシャンの意図である。
ちなみにこの雪かきシャベルの取っ手、中心にあるべきものが右寄りについている。これでは均等に力が入らないばかりか、破損は時間の問題のように思われる。(接続箇所も単に接着しただけに見える)
不備の累積によって、不可能は領域を広げる。ただ、一方がゼロの場合(例えば折れた腕)は何をもってしても不都合かもしれない。
(写真は『DUCHAMP』TASCHENより)
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