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『複製禁止』
男は鏡に本来映るはずの自身の前面(顔)でなく、背面(後姿)を見ている。
後姿は過去だろうか、あるいは未来かもしれない。
要するに現時点を直視せず、過去・未来に思いを馳せていることである。
鏡は鏡の手前に在るものをそのまま映す、であれば当然男の前面が見えるはずであるが、背後を映しているというのは、鏡が異空間であることを指している。つまり、彼のイメージ(想像)上の具現である。
彼の前にある台の上の本が映り込んでいるが、微妙にずれている。(斜めに置かれたものが平行に近い感じになっている)それに、鏡の前の台も微妙に曲がっているような気がする。
そして、彼の背後が虚空であるのも奇妙である。
鏡は(複製)を旨とする媒体である。
しかし、物理的条件を度外視した複製を描いて、『複製禁止』とは。
複製を幻想化(イリュージョン)したということは、複製の否定である。
複製の否定を描いて、『複製禁止』とする迷走。否定の否定は大いなる肯定に行き着くのだろうか。
仮象の扉は開いたままである。
(写真は『マグリット』西村書店刊)
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