続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『城』2270。

2016-03-27 06:28:36 | カフカ覚書

「ただそれとはなしにほのめかしはしますがね。はっきりしたことは、なにも聞いていませんよ」
「橋屋のお内儀さんも、なにも話しませんでいたか」
「いや、なにも聞いていませんね」
「そのほかのだれからもお聞きになりませんでしたか」
「ええ、だれからもね」
「当然のことですわ。どうわたしたちのことを話すことができましょう。だれだって、わたしたちのことを知っています。ほんとうのことにせよ(もっとも、みなさんがほんとうのことを知ることができる範囲内においてですが)、あるいは、すくなくとも人から聞いたか、たいていは自分でつくりあげた根も葉もないは葦にせよ、とにっく、なにがしかのことは知っています。そして、必要以上にわたしたちのことを考えています。しかし、だれも、それをあからさまに話すことだけはしないでしょう。こういうことを口に出すのは、はばかれるのです。


☆「いいえ、なにも聞いていません「それ以外にもですか」「なにも聞いていません」
 「当然のことです。どうしてわたしたちのことを話すことができるでしょう。たいていの人たちがわたしたちのことを知っています。本当のことにせよ、そもそも、少なくとも人原訊いたか、多くのうわさを聞いたか、そして必要以上にわたしたちのことを考えています。けれど、それを正しく物語る人は誰もいないでしょう。口にすることを恐れているからです。


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