
『深淵の花』
馴染みのない肌合い、右の壁(山)は左の壁(山)より手前にあるように見えるが、下方を見ると必ずしもそうでないような気がする。つまり、遠近というものが否定された空間でもある。
右の壁には光が射しているので凹凸が見える、しかしこんな切り立った山は上ることが不可能な勾配である。
左の山は平面的であり、『深淵の花』の左右は対極的な関係を暗示している。
『深淵の花』と名付けられた対象物は馬の鈴の集合であり、葉は自然の規則性を外した形で周囲を被っている。
明らかに花でない物を以て花と呼ぶ『深淵の花』は、言うまでもなく《精神界の深淵の花》である。
馬の鈴……これは《言葉》を暗示しており、人々の声(伝説・噂・声明etc)の集約だと察する。
どこまでも深い闇の中にあたかも本物の葉に包まれて咲く不思議な花である。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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