『光の帝国』
光の帝国であって、帝国の光ではない。
画面は光(空/自然)と帝国(皇帝の統治する国家)が半々に占める構図になっている。
夜の景色である帝国には薄明かり(人工)が見える。大自然(宇宙)の中で人が権力を握る世界は、光をも我が物とする人智の構築である。
大いなる光(太陽)は世界を照らして止まないが、帝国はもろくも崩れゆく運命を担っているのは史実が物語っている。
しかし、人智における国造りは強大であり、人々は順列に従い約束は厳守される。自由・解放は天(空)の下で閉塞されている。帝国の守りと呪縛は世紀を超えて人々を支配し、掟を破るものは力をもって制圧を余儀なくされる。
帝国の幻、否、現実は光(宇宙)の中では笑止の薄暗闇に過ぎない、と、マグリットは呟く。しかし、正しく私たちは、この中で生きている。抗うべくもなく一枚の絵の中でわたし(マグリット)は秘かに呟いている。
写真は『マグリット』展・図録より
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