続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『桟敷席』⑤

2018-03-13 07:01:58 | 美術ノート

 双頭の必然性は何だろう・・・(一つの身体に二つの頭部がある)というのでなく(二つの身体が合体した)と考える方を選ぶほうが自然かもしれない。
 この身体は女性の印象が強くあるが、コートは紳士用であり、眉の太さも気にかかるし、肩幅の広さや頭部にも差異がある。
 頭髪がないのは、冥界での溶解、無に帰していくプロセスではないか。

 無限に広がるのではないかと思わせる桟敷席の空間、髪の長い少女は劇場を見ている、彼女の生死は不明であるが、背後の双頭の人物は明らかにこの世の人ではない。
 全体が冥府の桟敷席なのか、少女の背後の人物(父母)の椅子こそが桟敷席(現世を見る/危惧する)なのかは分からない。複合的な構造である

 この不思議な雰囲気こそが異世界における桟敷席であり、出口は開いているが、閉じられてもいるという境界のない中空の桟敷席ではないか。
 問えば答えが分散する、存在感の希薄な重く暗い疑似空間の桟敷席である。


(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)


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