続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

D『急速な裸体に囲まれた王と女王』3。

2021-07-19 06:50:09 | 美術ノート

 絵画作品には焦点があり、それが主題(テーマ)をより強調・主張するという具合である。
 けれど、この作品には中心がなく、全体が等しく主張している。にもかかわらず、存在感の欠如によって浮上、あるいは流動的で定まる拠点を決定できない不思議がある。
 質感があるように見えて柔らかいのか固いのか、鋭いのか・・・軽重さえも確定できず、具体的な決定を持たない、感じることが不可能な描写である。

 確かに描かれており、綿密である。にもかかわらず、特定不能な逃げ足、隠匿がある。

『急速な裸体に囲まれた王と女王』と明確な名称を提示しながら名称自体が空に浮いてしまうのである。急速という言葉は動きを表すが(急速な)という形容詞はない。

 この大いなる分裂、集結しながら分散している意味の分解、漂流。
 混沌は階級制度を破壊し、無意味に並置している。《急速な裸体》という不明によって、総てが打ち消されてしまい、平等という平坦さえ見えなくしている。
 いわく言い難い、《意味の霧消》が作品を越えて伝わってくるのである。


 写真は『DUCHAMP』 www.taschen.comより


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