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心理劇…視線は画面の中央辺りに位置している。上部と下部の真ん中あたりに人物の配置がある、つまり主要人物である彼らは上からも下からも圧を受けている。
横拡がりの画面は焦点を定めにくい。その上、左右の空間は繋がっているが、右の人物のいる景に比して左は空虚である。半分に切り落としてもいいとさえ言える。しかし敢えて左半分の空虚を必然としたのは右半分の空気をより明確にするためである。この無空に潜在する漠然とした空気感は想像を掻き立てる。
左半分の彩色の暗さは、希望ある明日を排除する。この暗さは夜の景である以上の意味を、右半分の彼ら四人の間に広がるムードによって醸し出している。
ストップモーション、切り取られた静止画は、彼らの吐息を再生させる。何でもないありきたりの光景に明日の時間を垣間見せている。
一人一人が際立ち、人生の片鱗を見せている。夜の一隅にたまたま居合わせた四人、カップルと見える二人でさえ行きずりかも知れない。
画面は人生の重さ、しいて言えば孤独を、左半分のがらんどうな空気に測っている。人の成した叡智である建築(建物)、近代という時代の狭間で人は沈黙を余儀なくされる。自由を約束されているはずの国、アメリカのナイトホークスである。
写真は日経『経済で見る名画/十選』田中靖浩より
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