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新たな金メダル戦争(学校で教えてくれない経済学)

2008-08-04 18:56:29 | 経済学
 『新たな金メダル戦争』(The New Gold War)というタイトルで、ウオールストリートジャーナル紙(8月2日付け)Ian Johnson記者によるベルリン発の記事を読んだ。中国に限らず多くの国がオリンピックに巨額の国費を使っていると紹介している。
ジョンソン記者は、書き出しの3行に、「東ドイツの時代のスポーツの話を耳にしなくなって数年経過したが、今ドイツが共産党スタイルスポーツ学校復活に動きだした」と書いた。
1989年のベルリンの壁崩壊後、東ドイツの訓練マシーンは破壊、施設は崩壊、コーチたちは散っていった。ドイツのメダルは92年のバルセロナ(82個、3位)、96年のアトランタ(65個,3位)、2000年のシドニー(56個、5位)、04年のアテネ(49個、6位)へ大きく減少した。
ショックを受けたドイツ政府は、スポーツ振興資金を、2008年、前年比25%増やし、1億2,600万ユーロ(約210億円)を予算化した。予算の2/3はドイツオリンピック財団とつながりがあるトレーニングセンターに使われた。ここはスポーツエリート養成学校である。39の学校が認可を受けている。20が旧東ドイツ,19が西ドイツにある。
1991年、旧東ドイツスポーツ施設を任されたNeumes氏の話を記事は紹介している。旧施設は刑務所のような高い塀で覆われ、窓ガラスは破れ、壁は剥げ落ちていた。グランドには雑草が生い茂っていた。競泳プールは倒壊されていた。コーチは国のスパイで選手は常に監視されていた。氏は徐々に普通の学校に変えていったと話した。
現在の訓練センターは、週25時間の訓練とステロイドが使われていない。しかし、スポーツ再興のために国は5000万ドル(約53億円)、地方政府は競泳プールを守るために2000万ドル(約21億円)を使った。」と書いている。
WSJ紙によれば、旧東ドイツのシステムを真っ先にまねたのはオーストラリアである。1976年のモントリオールで敗北した後、豪州は競技場建設に取り掛かり、勝者に賞金を用意した。その結果、シドニー、アテネとメダル数で4位となった。
日本が豪州に続いた。日本は2000年、オリンピックトレーニング施設に2000億円使った。2003年に日本政府はメダルの可能性のある選手に限定して5億円ファンド創設に国の補助金を使った。その結果16個のメダルを取りうち柔道は半分を占めたと紹介している。
8月8日、北京オリンピックがはじまる。中国は巨額の資金を投入して特に女子のメダル獲得に力を入れた。アテネではメダル63のうち39、2/3が女子だったと紹介している。
星野ジャパンは金メダルを目指している。ここにも巨額の金が流れていることだろう。相手の国の情報が入らない。キューバ相手では冷静に判断すれば明らかに苦戦が予想される。
女子マラソンでは野口さんと平泳ぎの北島選手は金メダル確実だとマスコミは賑やかだ。水泳ではスピード社の水着が話題を提供した。選手は苦渋の選択だったことだろう。
ただ、天晴れだったのはスピード社の水着で泳ぐことを決めた北島選手である。「泳ぐのは自分だ。水着ではない。」と彼は言い放った。
病気でも経済でも治すのは自分である。経営者でも業績悪化を原油や為替のせいにするひとが多い。原油高騰を投機資金のせいにするのも簡単だ。北島康介選手を応援したい。(了)

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