ここ数年の猛暑で枝豆や大豆の生育が芳しくないが、当地域で農業を営む
上で一番恐れるのは地震や風水害よりも「栗駒山の噴火」と肝に銘じている。
これまでは1744年と1944年に小規模な噴火が発生しているのみだが、活火
山であることに変わりはなく、3.11の大震災の前年には栗駒山直下地震
で橋の崩落や大規模な地崩れを起こしている。
もし、大噴火したら火山灰は偏西風に乗って一関市内を覆い尽くし、少な
くとも数年間は農業の営みを休止せざるを得なくなるのではないか。
それに対する具体的な対策は皆無に近いので「杞憂を願うのみ」となって
いる。
今朝の毎日新聞の「富士山噴火のリスク」を読んで改めて思い起こした。

今日の栗駒山は黄砂が影響しているのか霞んで見えた。
代打で我が家を撮ったが、3.11の地震の時は家の前の畑から二階の
網戸が音を立てて激しく左右に動くのを茫然と眺めていた。
毎日新聞「余禄」2025.3.29
江戸中期の学者で幕政にも関与した新井白石の自伝「折(おり)たく柴の記」
は、1707(宝永4)年に起きた富士山噴火の際の江戸の様子を描写している
外出すると「雪のふり下るがごとくなるをよく見るに、白灰の下れる也」。
さらに「黒灰下る事やまずして、(中略)世の人咳嗽(がいそう)をうれへず
といふものあらず」。まず白い灰、その後は黒灰が降る日が続き、人々はせき
に苦しめられた。灰の粉じんの影響とみられる▲「富士山リスク」を改めて
認識させた内容である。内閣府の有識者会議が富士山噴火を想定した首都圏
の火山灰対策を報告した。降灰が微量であっても交通に混乱を来すことなど
を警告し、自宅待機用の備蓄を呼びかけるなどした▲降り積もる灰の厚さに
応じて、対策も変わる。30センチ以上だと原則避難だが、それ未満の場合は
原則「できるかぎり自宅などで生活を継続する」。微量でも鉄道や航空は停止
する。「ステイホーム」で停電、水道の水質悪化などのリスクに備えなければ
ならない▲宝永噴火の際は約50日前に南海トラフ地震が起き、津波などが
甚大な被害をもたらした。噴火後は風説も流布したようだが白石は「自分で
見たこと以外書かない」と記さなかった。ただし災害の連続は幕府による
貨幣改鋳への天罰との見方を記し、政敵をこきおろしている▲もとより、
富士山周辺地域の人命を守るための対策の重要さは言うまでもない。江戸っ
子を驚かせた白灰、黒灰への心構えが一人一人に求められる火山国・日本の
備えだ。