数年前、大分の村八分事件が新聞に掲載されていたが、その詳細は不明だった。
昨日、ネット記事で既に被害者に勝訴判決が出ていて、事件の発端が当地と
同様「交付金に関する不正」だったことを知り驚いた。
一関市内の他集落に於いても役員が交付金を恣意的に費消している例があること
は漏れ聞こえていたので、この種の不正は全国的に見ても「氷山の一角」なのかも
しれない。
困ったことには「多数決=民主主義」と履き違え、法律に反することは勿論の
こと基本的人権を侵害することまで議決し、市役所もそれを容認するのだから呆
れるしかない。
以前、新聞に「正論を主張し自治会で孤立する」という川柳が掲載されていた
が、田舎で不正を糾弾するには「孤立無援、四面楚歌」の覚悟が必要となる。
当地の場合は「区長の独断による村八分宣言」だったが、大分の場合は総会決議
という民主的手続きを経ていたようだ。
残念ながら「村八分決議自体が憲法違反となる」ことについては誰も気付いていなかった。
田舎では未だに「村八分が唯一最大の規範」という悪習が残っていることから、
憲法が保障する「基本的人権」の認識の無い住民にそれを期待するのは無理な注文
なのかもしれない。
(先月末で空になった裏の薪小屋)
朝日新聞デジタル記事(2021.5.25)
「村八分」7年後の判決 Uターン男性「人間不信に…」
大分県宇佐市にUターンした元公務員の男性(72)が集落から「村八分」の扱いを
受けたとして元区長3人らに慰謝料を求めた訴訟で、大分地裁中津支部(志賀勝裁判
長)は、元区長らの行為が「村八分」にあたると認定し、慰謝料計143万円の支払
いを元区長たちに命じた。静かな山あいの集落で、なぜ「いじめ」とも言える行為
が7年以上も続いているのか。
「集落に住む同級生にも声をかけられない。四六時中監視されているようで、一
時は人間不信になった」。25日の判決後の記者会見で、原告の男性は孤立した日々
を振り返った。
「交付金に疑問を持ったら排除、弁護士会が改善勧告しても・・・」
集落は大分県北部の山里にある。周囲を田んぼや畑に囲まれ、草刈りなどの共同
作業が大切な行事だ。しかし、男性に声はかからず、参加できない。あいさつも一
部の人と目礼をする程度だ。「(人目を避けるために)朝早く家を出て、夜帰って
来る生活」という。
きっかけは、農業の交付金をめぐるトラブルだった。
兵庫県から集落内の実家にUターンした男性は2013年3月、中山間地の農家に出る
交付金の運営に疑問を持った。住民に会計帳簿を見せてほしいと頼んだことなどを
契機に一部の住民と対立。周囲との溝が深まった。
13年4月、集落は男性が住民票を移していないことを理由に自治会からの排除を決
め、全員一致で「断交」を決議。市の広報も、行事の案内も男性には届かなくなっ
た。
男性は14年に住民票を集落に移し、改めて自治会に加入を申し入れた。しかし、
住民らは「全員の賛同が得られなかった」として拒否。17年には男性の申し立てを
受けた大分県弁護士会が「明らかな人権侵害」として改善を勧告したが、事態は変
わらなかった。18年10月、男性は区長経験者3人と宇佐市を提訴した。
これに対し元区長3人は、男性も元区長を合理的な理由もなく警察に告訴したり、
車の通行を妨害したりしたと反論した。
判決は、元区長側の主張を退け、元区長らによる行為は「社会通念上許される範
囲を超えた『村八分』」だと認定した。市の責任は認めなかった。
男性は判決後の会見で、「(村八分は)大人のいじめだと認識している。すべて
私に責任があるように言われたが、自分が間違っていなかったことを認めてもらっ
て救われた」。そして、「話し合いにはいつでも応じる」と関係の改善に期待し
た。
「裁判費用は1戸10万円 年金生活の女性からも 」
ただ、集落にも深い傷が残る。
裁判が起きると、集落の住民たちは被告となった3人を助けるため、裁判費用とし
て各戸が10万円ずつを出し合った。月4万円の年金などで生活するという女性は
「10万円はきついけど、個人でなく区長として訴えられたんじゃから」と話す。
集落では「また訴えられるかもしれない」という理由で区長のなり手がおらず、
現在は区長が不在のままだ。
80代の男性は「過疎の集落だから本来は住民が増えるのは歓迎なんじゃが」とし
つつ、言った。「判決が出たからといって、簡単には解決せんじゃろう」