雀の手箱

折々の記録と墨彩画

近うて遠きもの

2012年01月01日 | 塵界茫々
 枕草紙の「近うて遠きもの」という章段には「はらから、親族の中。鞍馬のつづら折りといふ道。十二月のつごもりの日 正月のついたちの日のほど」と書かれています。
 やはり大晦日から元日への時間の流れは、「近うて遠き」格別のもののようです。
 連続した切れ目のない時間の流れに、人は気持ちの上では画然と区切れを置いて、自分を縛り生活を組み立てています。
 お屠蘇を祝い、晴の日の器が登場するとやはりいつもとは違う改まった気分となり、「明けましておめでとうございます」と挨拶を交わすと、あらためて新しい年が始まる思いがします。
 初昔などという(元日に旧年をさす言い方)古語が、数時間前をも昔とは大げさなと思っても、今も生きて俳句の季語で使われていますし、日ごろは迷惑がられて不吉な鳥とされる鴉も、正月には「初鴉」と、めでたがられます。いつもの空も「初空」とよべば、何か新鮮な気がするというものです。
 今年の「行く年来る年」は世界遺産に登録された平泉の中尊寺からの中継でした。除夜の鐘が響き、番組半ばに「明けましておめでとうございます」の声を聞き、やがて初詣につめかける各地の参詣の賑わいが映し出されると、ああ、また齢を重ねたという感懐がわいてきます。
 「年の初めのためしとて」、謹んでお年賀をネットで申しあげます。