雀の手箱

折々の記録と墨彩画

「上村松園」展

2010年11月11日 | 雀の足跡
 二日目は京都に出て、平安神宮でようやく進んだ京都の紅葉をに眺め、国立近代美術館での「上村松園」展を見ました。京都に生まれ育った画家だけにファンも多く、さぞかし混むことと思っていましたが、行列の待ちもなく、ゆっくりと鑑賞できました。東京展での様子を見聞しているので些か嬉しい拍子抜けでした。

 会場ではいきなりの「序の舞」との遭遇で、その大きさに圧倒されました。左手の軽く結んだ手の緊張感が伝わります。囃子の音も聞こえてきそうな静かな躍動感がありました。

 絵は描かれた年代順に並べられていて、代表作約80点と素描が展示されていました、
 謡曲や古典を題材にしたものや、浮世絵の構成を思わせるものなど多彩ですが、顔の表情を持たない後姿で、ここまでの情念が表現できるものかと驚きをもって見つめたことでした。繊細で、隅々まで心配りされた絵は、題材を掘り下げて捉えた情感と相俟って見るものに迫ります。

「序の舞」「砧」「雪月花」などの代表作は東京で所蔵されているため、このような形の集大成を彼女の本地である京都で見られたのは幸せでした。
「雪月花」も「皇室の至宝」展で見たときとは違って、しっくりと静かに壁面で華やいでいました。今の私は、晩年の作品で、市井に暮らす女性の日常の姿をやさしく表現した「夕暮」や「晩秋」「待月」などの穏やかな作品群を好ましくすばらしいと受け止めました。

 折角の京都だからと「おばんざい」の店で昼食。すぐ傍の細見美術館の「お江戸の琳派」に敬意を表しました。ただし、激しい情念を内に塗りこめる松園を見た後では、感興もいまひとつで、大津へ行くためにタクシーで京都駅へと向いました。

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