ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ザ・リサージェンス・オヴ・デクスター・ゴードン

2024-12-18 19:17:26 | ジャズ(ハードバップ)

本日はデクスター・ゴードンです。彼については本ブログでもたびたび取り上げていますが、40年代のビバップ草創期に活躍しながらも50年代は麻薬禍でほぼ棒に振ったと言う経歴の持ち主です。1961年にブルーノートと契約後は「ドィーイン・オールライト」「デクスター・コーリング」「ゴー!」「ア・スウィンギン・アフェア」と傑作を次々と発表し、その後はヨーロッパに移住しスティープルチェイス・レコードを中心に多くの作品を発表します。

さて、上記のブルーノートの諸作品はジャズファンにとってマストアイテムと言って良いほどの人気ですが、実はその前に1枚だけリヴァーサイド傍系のジャズランドにリーダー作が吹き込まれていることは見落とされがちです。ブルーノートと契約する前年の1960年10月13日にデックスの故郷ロサンゼルスで収録された作品で、名前もずばり「ザ・リサージェンス・オヴ・デクスター・ゴードン(デクスター・ゴードンの復活)」です。

メンバーはマーティン・バンクス(トランペット)、リチャード・ブーン(トロンボーン)、ドロ・コーカー(ピアノ)、チャールズ・グリーン(ベース)、ローレンス・マラブル(ドラム)と言った面々。おそらく全員が西海岸でプレイしていた黒人(チャールズ・グリーンについてはググっても写真が出て来なかったので不明)ですが、大物ゴードンの復帰作にしては地味なメンツだなあと言うのが偽らざる感想でしょう。ただ、それはその後の輝かしいキャリアを知っているからそう思うのであって、このセッションの時点では10年以上クスリ漬けだった過去のテナーマン、という扱いだったでしょうからこの人選も納得といえば納得です。

全6曲、スタンダードは1曲もなく全てオリジナルですが、リーダーのデックスが2曲、ドロ・コーカーが4曲を書き下ろしています。オープニングトラックはデックス作の”Home Run”。一発ホームラン級の名曲!とまでは行きませんが、3管の分厚いアンサンブルによるキャッチーなメロディの後、デックスも元気一杯にテナーを吹きます。復帰作の幕開けとしては上々と言ったところでしょうか?続くドロ・コーカー作の”Dolo"は軽快なバップ曲でテックス→ドロと快調にソロをリレー。3曲目”Lovely Lisa”もドロ作で、こちらはほのぼのした感じの曲で、デックスだけでなくリチャード・ブーンのトロンボーンも良い味を出しています。

4曲目もドロ作の”Affair In Havana"で、タイトル通りキューバの首都ハバナをイメージしたラテン調の曲ですが、個人的には昭和のムード歌謡っぽくてイマイチです。5曲目"Jodi"はデックスが当時の妻ジョディに捧げたバラード。デックスがワンホーンでダンディズム溢れるバラードプレイを聴かせます。ラストはドロ作の痛快ハードバップ”Field Day”。翌年にドロが参加したジュニア・クックの「ジュニアズ・クッキン」でも取り上げられていました。これはなかなかの名曲・名演でブーン→デックス→バンクス→ドロと軽快にソロをリレーして締めくくります。以上、全ての曲が良いと言う訳ではないですが、デックスは長いブランクを感じさせない溌剌としたプレイを見せており、おそらく本作を聴いたアルフレッド・ライオンがブルーノートとの契約を決めたと思われます。

 

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ハンク・モブレー/モブレーズ・セカンド・メッセージ

2024-12-17 18:31:53 | ジャズ(ハードバップ)

本日はハンク・モブレーのプレスティッジ第2作目、その名もずばり「モブレーズ・セカンド・メッセージ」です。前作が「モブレーズ・メッセージ」でそれに続く作品ということなのでしょうが、本作に限らずこの頃のモブレーの作品は本当に安直なタイトルばかりですね。ジャケットの手抜き加減もなかなかのもので、緑の背景に082467935と数字が書いてあるだけ。082はおそらくレコード番号(プレスティッジ7082番)でしょうが、その下の467935は一体何なんだ?

とまあタイトルとジャケットのセンスには思わず苦言を呈したくなりますが、中身に関してはこの頃のモブレーらしい純正ハードバップで一聴の価値アリです。前作「モブレーズ・メッセージ」から1週間後の1956年7月27日の録音で、ベースのダグ・ワトキンスとドラムのアート・テイラーは本作でも引き続き起用されていますが、トランペットはドナルド・バードからケニー・ドーハムに、ピアノはバリー・ハリスからウォルター・ビショップ・ジュニアに代わっています。モブレーとドーハムは前年に初代ジャズメッセンジャーズの「カフェ・ボヘミア」セッションで共演していますので、旧知の仲ですね。

全6曲。モブレーのオリジナルとスタンダードが3曲ずつと言う構成です。通常は私はオリジナルの方に注目して聴くのですが、本作に関してはスタンダードの方が良いですね。オープニングトラックはハロルド・バーロウと言う人が書いた”These Are The Things I Love"。マイナーな歌モノですがミディアムテンポで小粋にまとめられています。5曲目”I Should Care"は10分超に及ぶ長尺のバラード演奏で、この曲はドーハムが主役と言って良く、彼のくすんだ音色のトランペットが大きくフィーチャーされます。続くビショップの端正なピアノ、モブレーの温かみのあるテナーもいいです。ラストトラックの”Crazeology"はビバップ期のトランぺッター、ベニー・ハリスの曲でチャーリー・パーカーも演奏した典型的バップナンバーです。アート・テイラーの素晴らしいドラミングに乗せられて、モブレー→ドーハ厶→ビショップが軽快にソロをリレーします

一方、モブレーのペンによる3曲は出だしがラテン調の”Message From The Border"、マイナーキーの”Xlento"、ドライブ感たっぷりの"The Latest"の3曲。どれもこの頃のモブレーらしい王道ハードバップですが、名曲とまではいかないかな。全体的なクオリティでは「モブレーズ・メッセージ」に一段劣るような気がしますが、それでもモブレー好きorハードバップ好きなら聴いて損はない1枚と思います。

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ソニー・クリス/アップ・アップ・アンド・アウェイ

2024-12-16 18:31:39 | ジャズ(ハードバップ)

ジャズサック奏者でソニーと言えば、何と言ってもソニー・ロリンズ、続いてソニー・スティットの名が挙がりますが、このソニー・クリスも忘れてはいけません(他にソニー・レッドなんてのもいますね)。本ブログでも過去に「ポートレイト・オヴ・ソニー・クリス」「アイル・キャッチ・ザ・サン」と言った作品を取り上げましたね。キャリア自体は長く、早くも1940年代後半のビバップ期から活動していますが、なかなかレコーディングの機会に恵まれず、50年代半ばにインペリアルやピーコックと言うマイナーレーベルに数枚のアルバムを残したのみ。その後は一時フランスに移住して活動したりしていたようです。

彼が3大ジャズレーベルの1つであるプレスティッジと契約したのは1966年。クリスは38歳になっていました。この頃は既に黄金のハードバップ時代はとっくに終焉し、ジャズマン達はそれぞれのスタイルに合わせてモードジャズ、フリージャズ、ソウルジャズ等の路線を歩んでいました。ところが遅ればせながら表舞台に登場したクリスはまるで10年以上時を巻き戻したかのようなバリバリのハードバップ、いやそれどころかさらに遡ってチャーリー・パーカーのビバップを彷彿とさせるようなスタイルでアルトを吹きまくります。

本作「アップ・アップ・アンド・アウェイ」は1967年8月に吹き込まれたプレスティッジ3作目。ここでもクリスは最新のヒット曲等を取り上げながらも、スタイル的にはパーカー直系のアルトを存分に聴かせてくれます。共演メンバーも面白いです。リズムセクションのシダー・ウォルトン(ピアノ)、ボブ・クランショー(ベース)、レニー・マクブラウン(ドラム)の3人はいかにも60年代らしい人選ですが、ギターにタル・ファーロウが入っています。主に50年代に活躍した白人ギタリストで(代表作「タル」参照)、60年代に入ってからは引退状態でしたが、本作が8年ぶりのレコーディング復帰だそうです。

全6曲。アルバムはまずタイトルトラックの"Up, Up And Away"で始まります。シンガーソングライターのジミー・ウェッブが作曲し、男女混合のヴォーカルグループ、フィフス・ディメンションが歌って全米7位、さらにはグラミー賞の最優秀レコードにも輝いた名曲です。いわば最新のヒット曲のジャズ化ですが、クリスはのっけから脳天を突き刺すようなハイトーンでパピッシュに吹きまくります。シダー・ウォルトンの華やかなピアノソロも良いです。最新ヒット曲はもう1曲あり、4曲目"Sunny"はR&Bシンガーのボビー・へブが歌い、前年に全米2位の大ヒットとなった曲のカバーです。相変わらずファナティックに吹きまくるクリスにシダーが華を添えます。

一方、いわゆる普通のジャズスタンダードも2曲あり、1つは”Willow Weep For Me"。私は実はこの曲暗くてあんまり好きじゃないんですが、もともとクドめの曲をクリスがさらにこってりブルージーに聴かせます。この曲はタル・ファーロウの独特のギターソロも挟まれます。私としては”Scrapple From The Apple"の方がおススメですね。ご存じチャーリー・パーカーの名曲で、パーカーを師と仰ぐクリスが入魂のソロを披露。タル・ファーロウとシダー・ウォルトンのソロもファンタスティックでズバリ本作のベストトラックです。

オリジナル曲も2曲あり、1つはホレス・タプスコットが書いた”This Is For Benny"。このタプスコットと言う人は西海岸で活躍していた黒人ピアニストでクリスとは関係が深く、翌年には全曲タプスコット作曲の「ソニーズ・ドリーム」と言う作品を残しています。なかなか魅力的なメロディーを持ったマイナーキーの佳曲でクリス→タル→シダーとソロをリレーします。ラストトラックの"Paris Blues"はクリス自作のブルース。曲名はクリスが一時パリに在住していたことと関係があるのでしょうか?タル特有の太い音色のギターソロにクリスのコテコテのアルトが絡みます。以上、人によってはクリスのアルトかややクドいと思う人もいるかもしれませんが、私は結構好きです。

 

 

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ケニー・バレル/ソウル・コール

2024-12-13 19:35:42 | ジャズ(ハードバップ)

本日は私のフェイバリット・ギタリストであるケニー・バレルを取り上げます。ジャズギタリストと言えば一般的にウェス・モンゴメリーが一番人気なのでしょうが、私にとってはバレルこそが最も偉大なギタリストです。それどころか全てのジャズマンの中でもトップ5に入るぐらい好きですね。彼の50~60年代の作品はどれも傑作揃いで、有名なブルーノート盤の「ブルー・ライツ」や「ミッドナイト・ブルー」、プレスティッジ盤の「ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン」ももちろん素晴らしいですが、今日ご紹介するのはそれらに比べてかなりマイナーな「ソウル・コール」と言う作品です。

1964年4月にプレスティッジに吹き込まれた作品で、ホーン奏者はおらず、コンガを加えた変則的クインテット。メンバーはウィル・デイヴィス(ピアノ)、マーティン・リヴェラ(ベース)、ビル・イングリッシュ(ドラム)、レイ・バレト(コンガ)と言う顔ぶれ。正直マイナーなジャズマンばかりで、あえて言うならコンガのレイ・バレトが一番よく見る名前かもしれません。特にウィル・デイヴィスは他ではとんと聞いたことがないですが、何でもシカゴ出身のピアニストで1940年代にハワード・マギーやミルト・ジャクソンの録音に参加しているベテランらしいです。

メンバーだけ見れば大丈夫か?と少し心配になりますが、内容の方はなかなか充実しています。全7曲、スタンダードが3曲、残りがオリジナルと言う構成です。オープニングはエリントン楽団の"I'm Just A Lucky So-And-So"でバレルが全編にわたってブルージーなギターをたっぷり披露します。2曲目”Mark One"はウィル・デイヴィスのオリジナルでこれがアップテンポの素晴らしい曲。バレルの躍動感溢れるホーンライクなギターソロにデイヴィスのスインギーなピアノも良いですね。ズバリ名曲・名演と言って良いでしょう。3曲目はスタンダードの”A Sleepin' Bee"で通常はミディアムテンポで演奏されることが多い曲をバレルはスローでややブルージーな演奏に仕立てています。

続く”Soul Call"と”Kenny's Theme"はバレルのオリジナルで、どちらもソウルフィーリングたっぷりの曲。前者はバレトのコンガが印象的な絡みをするスローブルース、後者はノリノリのファンキーチューンでのバレルのギターソロが鳥肌の立つ凄さです。その一方、バレルはバラードの名手でもあり、スタンダードの”Here's That Rainy Day"では胸に沁みるようなバラード演奏を聴かせてくれます。ラストの"Oh Henry"はボーナストラックで、夭折したアルト奏者アーニー・ヘンリーの高速バップチューンです。以上、メンバーは地味でもバレルにハズレなし!を改めて実感させてくれる1枚です。

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ジェローム・リチャードソン/ローミン

2024-12-12 19:10:20 | ジャズ(ハードバップ)

本日はジェローム・リチャードソンです。主に50年代から60年代にかけて活躍したマルチリード奏者で、テナーサックスだけでなくフルートも良く吹きます。プレスティッジのジャムセッション「オール・ナイト・ロング」やナット・アダレイの「ザッツ・ナット」でのプレイが印象深いですね。オスカー・ペティフォードの「アナザー・ワン」にも参加していました。ただ、普段は脇役でのプレイが中心で、リーダー作となると数えるほどしかありません。本作「ローミン」は1959年10月にプレスティッジ傘下のニュージャズに吹き込まれた彼の代表作です。ニュージャズにはもう1枚「ミッドナイト・オイル」を前年の1958年に残していますが、内容的には本作の方が上ですね。

ワンホーン・カルテットでメンバーはリチャード・ワイアンズ(ピアノ)、ジョージ・タッカー(ベース)、チャーリー・パーシップ(ドラム)。リーダー同様に地味なメンツを集めたなあという感じですが、全員活動歴は豊富で力量的にも申し分なしです。ある意味、実力派の脇役達を集めた玄人好みのセッションと言えますね。

全6曲、スタンダードとオリジナルが半々ずつと言う構成です。1曲目”Friar Tuck"はジョージ・タッカー作のシンプルなリフのブルース。リチャードソンはここではテナーを吹いていますが、なかなかソウルフルなプレイぶりです。2曲目はリチャードソン自作の”Up At Teddy's Hill"でここでのリチャードソンはバリトンサックスをブリブリ吹き鳴らします。彼がサイドマンで参加している作品はテナーまたはフルートの印象が強く、バリトンを吹いていた記憶はないのですが、意外とこれがハマっています。曲自体も力強いハードバップで本作でもハイライトと呼べる内容です。続く”Warm Valley"はデューク・エリントンの美しいバラードですが、リチャードソンはここでもバリトンでダンディズム溢れるプレイを聴かせてくれます。

4曲目は歌モノの”Poinciana"で、ここで初めてフルートが登場。何となくエキゾチックなアレンジがなされており、リチャードソンのフルートも中東かどこかの笛っぽい響きです。5曲目”I Never Knew"も歌モノですが、ここでも再びバリトンの登場。本作でのリチャードソンはバリトンサックス奏者としての新たな一面を開拓したようですね。ラストの”Candied Sweets"は本作でも見事なプレイを披露している名脇役リチャード・ワイアンズのオリジナルで、彼のソウルフルなピアノソロに続きリチャードソンが力強いテナーを披露して演奏を締めくくります。

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