ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ケニー・バレル/ブルージン・アラウンド

2015-11-14 23:52:21 | ジャズ(ハードバップ)

本日はケニー・バレルです。意外にもバレルの作品をブログで取り上げるのは今回が初めてですね。ジャズ・ギタリストの中でも一番好き、と言うより全てのジャズメンの中でもトップ5に入るぐらい愛好しています。ギタリストでは他にもウェス・モンゴメリー、グラント・グリーン、ジム・ホール、ジョー・パス等のビッグネームがいますが、私の中ではバレルこそが断トツでナンバーワンです。テクニックが優れているのはもちろんですが、ハードバップ、ブルース、ソウルジャズ、ラテンとどんなスタイルも難なくこなすレンジの広さ、そして自身のリーダー作はもちろんのこと他人のリーダー作でもサイドメンとして的確にバッキングをこなす職人芸にも惚れ惚れします。今日ご紹介する「ブルージン・アラウンド」はそんなバレルが1961年から1962年にコロンビアに残した録音で、1980年代までお蔵入りとなっていたアルバムだそうです。



全9曲。録音は4つのセッションに分かれており、最初は1961年11月21日のセッション。メンバーはイリノイ・ジャケー(テナー)、ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、メイジャー・ホリー(ベース)、オシー・ジョンソン(ドラム)で、“Mambo Twist”“The Switch”の2曲を演奏します。前者はタイトル通りマンボのリズムと当時流行していたツイストを合体したナンバー、後者はこれぞ痛快ハードバップと言った疾走感あふれるナンバーで、高速パッセージのアドリブを次々と繰り出すバレルはもちろんのこと、テキサス・テナーの重鎮ジャケーもパワフルなブロウで圧倒的な存在感を放っています。続く11月29日はドラムがジミー・クロフォードに代わっただけで後は同じメンバーで、“The Squeeze”“Bye And Bye”“Mood Indigo”の3曲を演奏。“The Squeeze”は典型的なスローブルース、“Mood Indigo”はエリントン楽団の定番曲であった美しいバラードで、これまたバレルのプレイはもちろんのこと、ジャケーの雄大なテナーソロが素晴らしいです。私的にはこのバレルとジャケーのセッションだけで買う価値はあると思います。

残り4曲のうち1曲はタイトルチューンの“Bluesin' Around”で1962年3月6日の録音。白人トロンボーン奏者のエディ・バートを大きくフィーチャーしており、ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)、ルイス・ヘイズ(ドラム)がリズムセクションを務めます。4分弱の短い曲ですが、なかなか軽快なハードバップチューンです。あとの3曲は1962年4月30日のセッションで、ジャック・マクダフ(オルガン)、ジョー・デュークス(ドラム)とのオルガン・トリオでミディアム調のスタンダード曲“People Will Say We're In Love”とレイ・チャールズがヒットさせたR&B曲“One Mint Julep”を演奏します。さらに1曲だけアルトのレオ・ライトが参加し、ベイシー楽団の定番“Moten Swing”でソウルフルなプレイを存分に披露します。

以上、いかにもバレルの作品らしくハードバップ、ブルース、ソウルジャズと様々な演奏スタイルが楽しめますし、バレルのギターはもちろんジャケー、ライト、ハンク・ジョーンズら共演者のプレイも楽しめる中々の傑作です。ブルーノートやプレスティッジ、ヴァーヴらの諸作品の陰に隠れていますが、バレルの魅力を知るには格好の1枚と言って良いのではないでしょうか?

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