ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

クリフォード・ブラウン/コンプリート・パリ・セッションVol.2&Vol.3

2015-11-10 22:57:37 | ジャズ(ビバップ)
本日も「ジャズ・コレクション1000」シリーズからクリフォード・ブラウンの作品を2枚ご紹介します。1953年にブラウンがライオネル・ハンプトン楽団の一員としてパリを訪れた際に録音したシリーズもので、「Vol.1」については3年前に当ブログでも取り上げています。今回はその続編である「Vol.2」と「Vol.3」です。この録音の経緯については「Vol.1」でも述べていますが、ハンプトン楽団のメンバーだったブラウンら若手ミュージシャンが現地フランスのジャズメンと繰り広げたジャムセッションの様子をレコードにしたものです。実はボスであるハンプトンはバンドメンバーがツアー先で副業するのを契約で禁止していたそうですが、血気盛んな若手達には通じなかったようで、結果としてアルバム3枚分ものテイクが録音されました。おかげで現在の我々は夭折したブラウンの貴重なプレイを耳にすることができます。

 

まず「Vol.2」ですが、15曲収録されていますが、別テイクが多く実際は全7曲。うち前半の4曲は全てアルトのジジ・グライスの作曲したもので、実際はジジがリーダーと言っていいかもしれません。メンバーはブラウン、ジジの2人にパリ在住のジミー・ガーリー(ギター)、アンリ・ルノー(ピアノ)、ピエール・ミシュロ(ベース)、ジャンルイ・ヴィアール(ドラム)から成るセクステットです。ジジの代表曲である“Minority”の貴重な初演が収録されていますが、お薦めは題名通りロマンチックなバラードの“Strictly Romantic”、そして痛快ハードバップの“Baby”です。後半は同じくハンプトン楽団の同僚だったクインシー・ジョーンズがアレンジャーを務めた計15人からなるビッグバンド作品ですが、出来はまあまあ。聴き所は前半ですね。

「Vol.3」は17曲収録ですが、こちらも別テイクを除けば全8曲。うち6曲はブラウン、ルノー、ミシュロそしてドラムのベニー・ベネットによるワンホーン・カルテット作品です。実はブラウンのワンホーンというのは非常に珍しく(確かにブラウン=ローチ・クインテットといい、「バードランドの夜」といい、必ずサックス奏者と組んでいますね)、ファンにとっては貴重な録音です。曲は“The Song Is You”“Come Rain Or Come Shine”など歌モノスタンダード中心で、ブラウンのプレイも彼の数ある名演の中では平凡な部類かもしれませんが、それでもファンとしては傾聴に値します。ただ、楽曲として一番優れているのはそれらワンホーン作品ではなく、1曲目の“Chez Moi”です。ポール・ミスラキというフランス人作曲家(私は知りませんが映画音楽で有名らしい)の曲ですが、見事にハードバップに料理されています。こちらはオクテット編成で、ブラウン、ジジら上記「Vol.2」のセクステットに加え、ハンプトン楽団の仲間であるクリフォード・ソロモン(テナー)、ジミー・クリーヴランド(トロンボーン)らが加わり、順番にソロを取って行きます。結局、ブラウン、ジジらは後に契約違反をハンプトンに咎められ、楽団をクビになってしまいますが、才能ある彼らにはそんなの関係ねえ!ですよね。その後彼らがハードバップシーンを牽引する存在になっていったのは周知の通りです。
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