ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ホレス・シルヴァー・トリオ&アート・ブレイキー、サブー

2017-02-09 23:29:35 | ジャズ(ハードバップ)
本日はホレス・シルヴァーの作品を取り上げたいと思います。ホレス・シルヴァーは言わずと知れたブルーノートの看板アーティストであり、“ファンキー・ジャズの伝道師”と呼ばれ絶大な人気を誇っていました。本作は彼のキャリアの中でも初期に発表されたもので、1952年から53年にかけての3つのセッションから計16曲が収録されています。まず1952年10月9日のセッションがジーン・ラミー(ベース)、アート・ブレイキー(ドラム)から成るトリオ。続いて同10月20日のセッションがカーリー・ラッセル(ベース)とブレイキーのトリオ。そして翌年1953年11月23日のセッションがパーシー・ヒース(ベース)とブレイキーのトリオに1曲だけコンガ奏者のサブー・マルチネスが参加しています。ドラムのブレイキーが全曲に参加しており、さらに“Nothing But The Soul”では無伴奏ドラムソロを繰り広げるなど、リーダーのシルヴァーに負けない存在感を放っており、タイトルにも彼の名前がクレジットされています。ただ、1曲のみ参加のサブーの名前も加わっており、なぜ?と思うかもしれませんが聴いてみれば納得。その1曲が“Message From Kenya”と言う曲で、シルヴァーは参加すらせず、ブレイキーのドラムとサブーのコンガがアフリカン・ビートさながらの野性的なリズムを刻んでいくという強烈なインパクトを持つ曲なのです。1953年の時点でこの曲をジャズ作品として発表するあたりに、ブルーノート社長アルフレッド・ライオンの攻めの姿勢がうかがえますし、サブーの名前をクレジットしたいと言う思惑も感じられます。



ただ、上記の2曲を別にすれば、それ以外は通常のトリオ編成。ホレス・シルヴァーと言えば後年はテナーとトランペットを加えたクインテット編成での活動が主なので、トリオの作品というのは珍しいですね。また、楽曲についてもスタンダードをあまり演奏せず、ほとんどがオリジナル曲というのが彼の特徴ですが、本作の次点ではまだそこまでの個性は発揮していないのか、自作曲は16曲中9曲のみ。“How About You”“I Remember You”等の有名スタンダード曲が随所に織り交ぜられています。ただ、シルヴァーの真骨頂は何と言ってもファンキーなオリジナル曲ですよね。本作は初期の作品ながら後に彼のレパートリーになる名曲が数多く収録されています。1曲目“Safari”は58年「ファーザー・エクスプロレーションズ」、続く“Ecaroh”は56年「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」、5曲目“Quicksilver”はかの有名な54年の「バードランドの夜」、7曲目“Yeah”は60年「ホレススコープ」、13曲目“Opus De Funk”と15曲目“Buhaina”は54年「MJQ」とそれぞれシルヴァーが参加した作品で再演されており、モダンジャズの名曲として知られています。それ以外の“Horoscope”“Knowledge Box”“Silverware”等もいかにもシルヴァーらしいキャッチーなメロディの佳曲で、この時点で既に“シルヴァー節”は完成されているのがわかります。独特なポーズのジャケットも印象的ですが、同じ絵柄で背景がブルーのバージョンが名盤「ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」なのは皆さんご承知のとおりです。
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