本日はデクスター・ゴードンです。彼については本ブログでもたびたび取り上げていますが、40年代のビバップ草創期に活躍しながらも50年代は麻薬禍でほぼ棒に振ったと言う経歴の持ち主です。1961年にブルーノートと契約後は「ドィーイン・オールライト」「デクスター・コーリング」「ゴー!」「ア・スウィンギン・アフェア」と傑作を次々と発表し、その後はヨーロッパに移住しスティープルチェイス・レコードを中心に多くの作品を発表します。
さて、上記のブルーノートの諸作品はジャズファンにとってマストアイテムと言って良いほどの人気ですが、実はその前に1枚だけリヴァーサイド傍系のジャズランドにリーダー作が吹き込まれていることは見落とされがちです。ブルーノートと契約する前年の1960年10月13日にデックスの故郷ロサンゼルスで収録された作品で、名前もずばり「ザ・リサージェンス・オヴ・デクスター・ゴードン(デクスター・ゴードンの復活)」です。
メンバーはマーティン・バンクス(トランペット)、リチャード・ブーン(トロンボーン)、ドロ・コーカー(ピアノ)、チャールズ・グリーン(ベース)、ローレンス・マラブル(ドラム)と言った面々。おそらく全員が西海岸でプレイしていた黒人(チャールズ・グリーンについてはググっても写真が出て来なかったので不明)ですが、大物ゴードンの復帰作にしては地味なメンツだなあと言うのが偽らざる感想でしょう。ただ、それはその後の輝かしいキャリアを知っているからそう思うのであって、このセッションの時点では10年以上クスリ漬けだった過去のテナーマン、という扱いだったでしょうからこの人選も納得といえば納得です。
全6曲、スタンダードは1曲もなく全てオリジナルですが、リーダーのデックスが2曲、ドロ・コーカーが4曲を書き下ろしています。オープニングトラックはデックス作の”Home Run”。一発ホームラン級の名曲!とまでは行きませんが、3管の分厚いアンサンブルによるキャッチーなメロディの後、デックスも元気一杯にテナーを吹きます。復帰作の幕開けとしては上々と言ったところでしょうか?続くドロ・コーカー作の”Dolo"は軽快なバップ曲でテックス→ドロと快調にソロをリレー。3曲目”Lovely Lisa”もドロ作で、こちらはほのぼのした感じの曲で、デックスだけでなくリチャード・ブーンのトロンボーンも良い味を出しています。
4曲目もドロ作の”Affair In Havana"で、タイトル通りキューバの首都ハバナをイメージしたラテン調の曲ですが、個人的には昭和のムード歌謡っぽくてイマイチです。5曲目"Jodi"はデックスが当時の妻ジョディに捧げたバラード。デックスがワンホーンでダンディズム溢れるバラードプレイを聴かせます。ラストはドロ作の痛快ハードバップ”Field Day”。翌年にドロが参加したジュニア・クックの「ジュニアズ・クッキン」でも取り上げられていました。これはなかなかの名曲・名演でブーン→デックス→バンクス→ドロと軽快にソロをリレーして締めくくります。以上、全ての曲が良いと言う訳ではないですが、デックスは長いブランクを感じさせない溌剌としたプレイを見せており、おそらく本作を聴いたアルフレッド・ライオンがブルーノートとの契約を決めたと思われます。
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