湯瀬に一泊して翌朝。
下を米代川が流れる。昨日は吹雪で見えなかった奥の山並みも姿を現す
前日の強風は収まった。
内陸の鹿角は、朝はマイナス10度前後まで冷えることもあるのをテレビのアメダスで見て覚悟していたが、この日はマイナス4度くらい。出発時はもっと上がっていて、秋田市と変わらない。
列車時刻の都合上、チェックアウトタイムギリギリまで粘って、(ホテルの車での送りをお断りして)ぶらぶら歩いて湯瀬温泉駅へ。
ホテルの前が湯瀬渓谷の遊歩道の入口。雪で入れないだろうなと予想していたが、案の定、20センチほど積もっていて、足跡すらない。
左の緑色の橋が花輪線
対岸に、小さい滝のようなものが複数あるのが見えたので、雪をかき分けて川岸の柵まで行く。
水がきれい
流れている滝が1つ、残りは凍結している
凍っているのは滝じゃなく、ただのつらら?
ホテルの前に架かる駅方向へつながる橋は、歩行者用と車両用で分かれているが、歩行者用はやはり雪がもっさり。
歩行者の橋に「長者橋」との銘板があった。「だんぶり長者」伝説にちなむのだろう。※「だんぶり」は方言でトンボのこと。詳細は各自調べてください。
道標には、遊歩道終点まで4.5キロ、1つ大館寄りの八幡平駅まで5.0キロなどとある。
「菅江真澄の道」の標柱もあった。「ふる郷をおもい出湯の山ちかく わきて物うき棹鹿の声」。
200年ほど前の紀行家・菅江真澄(すがえますみ)は、秋田県内やその周辺を歩いて記録を残している。秋田市内にはよく標柱があり、周辺市町村でも見かけるが、湯瀬にも来ていたのか。ほんとうにくまなく歩いた人であり、湯瀬は当時から温泉として知られていたことになる。
「棹鹿」とは「さ雄鹿」、シカのことらしい。この辺にはニホンジカはいない(いなかった)はずだし、ニホンカモシカは鳴かない。何の声を聞いたのだろう。【7月2日訂正】秋田県全般の話だが、かつては秋田にもニホンジカが生息していたとのこと。明治以降の狩猟で絶滅していたのだった。
湯瀬ホテルの対岸、橋のたもとの公共浴場「湯瀬ふれあいセンター」の脇に、
火の見櫓
秋田市内では、放置状態同然のものや、撤去された火の見櫓が多く、目にする機会はほとんどなくなってしまった。
ここのは、色あせてはいるものの、てっぺんに半鐘が付いているから現役だろうか。
だけど、谷底に位置するここに設置しても、あまり見通しは利かなそう。
前回、駅から湯瀬ホテル・湯瀬渓谷入口までの道順の説明で、踏切が2つ登場した。
駅寄りの踏切は、
「湯瀬踏切」
妥当な名称。好摩駅から59キロ976メートルの地点とある。(好摩-湯瀬温泉駅の営業キロは59.9キロ)
大館寄りのほう。
こちらは60キロ204メートル地点
表示板は古めかしい手書き文字。柵の色が、黄色と黒でなく、赤と白。最近は視認性が高いとして赤白の踏切がある。ここは、柵の裏面などは黄色かったので、塗り替えたのだろうか。
その名は、「湯坂踏切道」?
踏切の名所って、「○○踏切」と最後に「踏切」が付くのが普通。これは途中に「踏切」が入って最後に「道」。どういう意味?
後方にある非常時の連絡先を記した看板には「湯坂踏切」とある。湯坂踏切道は古い名? 書き間違い?
箱を満載した古そうなトラック。運転者は短足
※2017年11月に再訪したが、火の見櫓も踏切も変わりなかった。その他追加事項はこの記事にて。
鹿角市のマンホールのフタは比内鶏
1日7往復しかない湯瀬温泉駅では、湯瀬温泉の宿で朝食後に移動する場合、ダイヤの選択肢は限られる。(高速バスなら毎時1本ですが)
下り大館方面は、6時48分、8時44分、11時21分だから、8時44分の一択でしょう。
上り盛岡方面も、5時50分、7時44分、10時26分。8時前では早過ぎるから、10時が無難。
そんなわけで、10時26分発。
委託駅員さんに見送られて、列車に乗り込む。
乗る客は我々だけだったが、高齢者を中心に5人くらい降りたのには驚いた。
何かの用事で湯瀬に来たのか、湯瀬の人が朝いちばんで鹿角に行って用足しして帰ってきたのか。そういえば、駅前には昨日来た時にはいなかった、客待ちタクシーがいた。1台だけだけど。
本数が少なくても、地域の足として利用されているようだ。
鹿角方面から乗って県境を越えようとするお客は思ったより多い。4人掛けボックスはどれも先客がいて(1人で1ボックス独占を含む)、今回も2人掛けへ。3時間ぶりの列車だから、わずかこのくらいとも言えるか…
湯瀬温泉駅を発車して3分ほどで、あっさりと岩手県に入った。
林の中をせせらぎと並んで進む車窓がしばらく続く。「高原の車窓」らしくて好き。
岩手県に入っているが、見えている川はまだ、日本海へ注ぐ米代川水系らしい。
岩手県に入って2つ目の田山駅を過ぎて、横間駅手前のトンネルの中が分水嶺(の下)のようだ。
「よこはま」じゃなく「よこま(横間)」駅
ホーロー看板の駅名板が健在の駅が多かった。
引き続き、雪の高原地帯を走る。ところどころ集落があり、学校のグラウンドにクロスカントリースキー用のコースが作ってあったりする。
東北自動車道では安代(あしろ)と呼ばれる、荒屋新町駅。
ここからは険しい勾配が続く。赤坂田-安比高原-松尾八幡平の間で、およその標高(マピオンより)が400-500-300メートルと変わる。
「龍ヶ森(安比高原の旧駅名)」と呼ばれ、かつては蒸気機関車が3重連や前後に付いてあえぎながら走ったという。
男鹿線・五能線でおなじみのキハ40系気動車が花輪線に導入されなかったのは、キハ40の非力なエンジンでは龍ヶ森に対応できなかったからだという話も聞いた。(秋田県側では、臨時や代走で入線実績あり)
キハ40(換装前)の倍のエンジン出力を誇るキハ110系も、少々苦しそうにエンジンをうならせて龍ヶ森を走行。でも、50km/hくらいは出ていたのではないだろうか。
やがて、徐々に高度が下がり、平地が広がっていく。天気が良ければ岩手山も見えるだろうか。
こういう景色の変化のしかたが、同じ秋田・岩手県境である田沢湖線の風景とどこか似ているが、花輪線のほうがややのんびりした感じか。
雪が少なくなり、建物が増える
お客も少しずつ増えて、だいたい席が埋まった。
湯瀬温泉から1時間20分。好摩駅に到着。元東北本線である第3セクターのIGRいわて銀河鉄道に入る。乗務員の交代はなし。
花輪線区間では、線路の制約から85km/hが最高速度。(GPSの計測によれば、ごく一部区間で85キロ弱出ていた)
IGR区間は線路状態が良いので、キハ110系の性能いっぱいの100km/hで走行できる。今回は、直前を貨物列車が遅れて走行していたので、やや控えめだったようだ。
【2017年11月23日追記】2017年11月に同じダイヤに再乗。この時は本来の走行だったと思われるが、思った(期待した)よりも静かな走りだった。ぐんぐん加速して、後は滑るように走る感じ。
再びうっすらと雪が積もるようになり、少々吹雪く。
石川啄木の生誕地・渋民村(現・盛岡市)の渋民駅には、
啄木顔はめパネルがぽつんと
ただし、渋民駅の開業は戦後で、石川啄木の頃は好摩が最寄り駅だったとのこと。
厨川(くりやがわ)駅の広告看板。
「らいおん動物病院」
「スズメからライオンまで」だって!
【2017年11月23日追記】2017年11月に反対側の車窓を見たところ、ホーム上にも同じ内容の少し小さい広告が出ていた。
盛岡駅にのIGRホームに到着。1階北側のIGR専用改札口(自動改札なし)からしか出られない。
久々に都会の風景。盛岡市街地もうっすらと積雪
多少、続きます。
下を米代川が流れる。昨日は吹雪で見えなかった奥の山並みも姿を現す
前日の強風は収まった。
内陸の鹿角は、朝はマイナス10度前後まで冷えることもあるのをテレビのアメダスで見て覚悟していたが、この日はマイナス4度くらい。出発時はもっと上がっていて、秋田市と変わらない。
列車時刻の都合上、チェックアウトタイムギリギリまで粘って、(ホテルの車での送りをお断りして)ぶらぶら歩いて湯瀬温泉駅へ。
ホテルの前が湯瀬渓谷の遊歩道の入口。雪で入れないだろうなと予想していたが、案の定、20センチほど積もっていて、足跡すらない。
左の緑色の橋が花輪線
対岸に、小さい滝のようなものが複数あるのが見えたので、雪をかき分けて川岸の柵まで行く。
水がきれい
流れている滝が1つ、残りは凍結している
凍っているのは滝じゃなく、ただのつらら?
ホテルの前に架かる駅方向へつながる橋は、歩行者用と車両用で分かれているが、歩行者用はやはり雪がもっさり。
歩行者の橋に「長者橋」との銘板があった。「だんぶり長者」伝説にちなむのだろう。※「だんぶり」は方言でトンボのこと。詳細は各自調べてください。
道標には、遊歩道終点まで4.5キロ、1つ大館寄りの八幡平駅まで5.0キロなどとある。
「菅江真澄の道」の標柱もあった。「ふる郷をおもい出湯の山ちかく わきて物うき棹鹿の声」。
200年ほど前の紀行家・菅江真澄(すがえますみ)は、秋田県内やその周辺を歩いて記録を残している。秋田市内にはよく標柱があり、周辺市町村でも見かけるが、湯瀬にも来ていたのか。ほんとうにくまなく歩いた人であり、湯瀬は当時から温泉として知られていたことになる。
「棹鹿」とは「さ雄鹿」、シカのことらしい。
湯瀬ホテルの対岸、橋のたもとの公共浴場「湯瀬ふれあいセンター」の脇に、
火の見櫓
秋田市内では、放置状態同然のものや、撤去された火の見櫓が多く、目にする機会はほとんどなくなってしまった。
ここのは、色あせてはいるものの、てっぺんに半鐘が付いているから現役だろうか。
だけど、谷底に位置するここに設置しても、あまり見通しは利かなそう。
前回、駅から湯瀬ホテル・湯瀬渓谷入口までの道順の説明で、踏切が2つ登場した。
駅寄りの踏切は、
「湯瀬踏切」
妥当な名称。好摩駅から59キロ976メートルの地点とある。(好摩-湯瀬温泉駅の営業キロは59.9キロ)
大館寄りのほう。
こちらは60キロ204メートル地点
表示板は古めかしい手書き文字。柵の色が、黄色と黒でなく、赤と白。最近は視認性が高いとして赤白の踏切がある。ここは、柵の裏面などは黄色かったので、塗り替えたのだろうか。
その名は、「湯坂踏切道」?
踏切の名所って、「○○踏切」と最後に「踏切」が付くのが普通。これは途中に「踏切」が入って最後に「道」。どういう意味?
後方にある非常時の連絡先を記した看板には「湯坂踏切」とある。湯坂踏切道は古い名? 書き間違い?
箱を満載した古そうなトラック。運転者は短足
※2017年11月に再訪したが、火の見櫓も踏切も変わりなかった。その他追加事項はこの記事にて。
鹿角市のマンホールのフタは比内鶏
1日7往復しかない湯瀬温泉駅では、湯瀬温泉の宿で朝食後に移動する場合、ダイヤの選択肢は限られる。(高速バスなら毎時1本ですが)
下り大館方面は、6時48分、8時44分、11時21分だから、8時44分の一択でしょう。
上り盛岡方面も、5時50分、7時44分、10時26分。8時前では早過ぎるから、10時が無難。
そんなわけで、10時26分発。
委託駅員さんに見送られて、列車に乗り込む。
乗る客は我々だけだったが、高齢者を中心に5人くらい降りたのには驚いた。
何かの用事で湯瀬に来たのか、湯瀬の人が朝いちばんで鹿角に行って用足しして帰ってきたのか。そういえば、駅前には昨日来た時にはいなかった、客待ちタクシーがいた。1台だけだけど。
本数が少なくても、地域の足として利用されているようだ。
鹿角方面から乗って県境を越えようとするお客は思ったより多い。4人掛けボックスはどれも先客がいて(1人で1ボックス独占を含む)、今回も2人掛けへ。3時間ぶりの列車だから、わずかこのくらいとも言えるか…
湯瀬温泉駅を発車して3分ほどで、あっさりと岩手県に入った。
林の中をせせらぎと並んで進む車窓がしばらく続く。「高原の車窓」らしくて好き。
岩手県に入っているが、見えている川はまだ、日本海へ注ぐ米代川水系らしい。
岩手県に入って2つ目の田山駅を過ぎて、横間駅手前のトンネルの中が分水嶺(の下)のようだ。
「よこはま」じゃなく「よこま(横間)」駅
ホーロー看板の駅名板が健在の駅が多かった。
引き続き、雪の高原地帯を走る。ところどころ集落があり、学校のグラウンドにクロスカントリースキー用のコースが作ってあったりする。
東北自動車道では安代(あしろ)と呼ばれる、荒屋新町駅。
ここからは険しい勾配が続く。赤坂田-安比高原-松尾八幡平の間で、およその標高(マピオンより)が400-500-300メートルと変わる。
「龍ヶ森(安比高原の旧駅名)」と呼ばれ、かつては蒸気機関車が3重連や前後に付いてあえぎながら走ったという。
男鹿線・五能線でおなじみのキハ40系気動車が花輪線に導入されなかったのは、キハ40の非力なエンジンでは龍ヶ森に対応できなかったからだという話も聞いた。(秋田県側では、臨時や代走で入線実績あり)
キハ40(換装前)の倍のエンジン出力を誇るキハ110系も、少々苦しそうにエンジンをうならせて龍ヶ森を走行。でも、50km/hくらいは出ていたのではないだろうか。
やがて、徐々に高度が下がり、平地が広がっていく。天気が良ければ岩手山も見えるだろうか。
こういう景色の変化のしかたが、同じ秋田・岩手県境である田沢湖線の風景とどこか似ているが、花輪線のほうがややのんびりした感じか。
雪が少なくなり、建物が増える
お客も少しずつ増えて、だいたい席が埋まった。
湯瀬温泉から1時間20分。好摩駅に到着。元東北本線である第3セクターのIGRいわて銀河鉄道に入る。乗務員の交代はなし。
花輪線区間では、線路の制約から85km/hが最高速度。(GPSの計測によれば、ごく一部区間で85キロ弱出ていた)
IGR区間は線路状態が良いので、キハ110系の性能いっぱいの100km/hで走行できる。今回は、直前を貨物列車が遅れて走行していたので、やや控えめだったようだ。
【2017年11月23日追記】2017年11月に同じダイヤに再乗。この時は本来の走行だったと思われるが、思った(期待した)よりも静かな走りだった。ぐんぐん加速して、後は滑るように走る感じ。
再びうっすらと雪が積もるようになり、少々吹雪く。
石川啄木の生誕地・渋民村(現・盛岡市)の渋民駅には、
啄木顔はめパネルがぽつんと
ただし、渋民駅の開業は戦後で、石川啄木の頃は好摩が最寄り駅だったとのこと。
厨川(くりやがわ)駅の広告看板。
「らいおん動物病院」
「スズメからライオンまで」だって!
【2017年11月23日追記】2017年11月に反対側の車窓を見たところ、ホーム上にも同じ内容の少し小さい広告が出ていた。
盛岡駅にのIGRホームに到着。1階北側のIGR専用改札口(自動改札なし)からしか出られない。
久々に都会の風景。盛岡市街地もうっすらと積雪
多少、続きます。