先日のセリオンタワーみたいな話になってしまいます。些細なことと言う人もいるかもしれないけれど、間違っていて誤解を与えかねないこと。
毎年この時期恒例の、秋田市にある秋田公立美術大学附属高等学院の生徒作品展が開催されていることを、マスコミが報道している。
NHK秋田放送局の報道
NHK秋田放送局がテレビで伝えた中に、間違いがある。
それは、画面に表示されるタイトル「美術学ぶ高校生の作品展」や原稿中の「美術やデザインを学ぶ高校生が制作した」の部分。
「高校生」は誤り。
一般的には、高校生は「高等学校(高校)の生徒」を意味する。NHKはこの学校を高等学校だととらえていると受け取れるが、美大附属高等学院は高校ではない。
ニュースサイトのタイトル「公立美大附属高」は、「高等学院」の略だと言い張るかもしれないが、知らない人は「~高校」の略ととらえるかもしれないから、まぎらわしい。
美大附属高等学院は「専修学校高等課程」という位置づけ。学校教育法では、高等学校と専修学校は別の学校としている。
美大附属高等学院は中卒者が入学し、制服を着て通学して3年で卒業し、卒業すれば大学受験資格を得られるものの、「高卒」とはならない。
となると、高校との違いが分かりづらいけれど、要は高校と比べて一般科目(国語数学など)の履修が少ない分、専門的分野(美術工芸)にカリキュラムの多くを割いていることになる。
また、公式ホームページに以前はなかった「Q&A」が掲載されており、「 「高校卒業資格はないが、大学受験資格はある」ことで不利益はありますか?」との問いに、基本的には高卒と違いはないが、国公立大学等の推薦の要件では高校に限定しているところが多く「本学院は対象になっていない場合があるのが現状です。」としている。
卒業後の資格取得や給与面で、制約を受けることも考えられるが、現在は上位の大学等へ進学する卒業生が多いそうなので、あまり問題ではないのかもしれない。
学校教育法では高等学校以外の学校が「高等学校」の名称を用いてはならないこととされており、仮に美大附属高等学院が「高等学校」と名乗ったら、大問題になってしまう。
さらに、高等学校と専修学校では、教員の要件も違うから、その点でもおかしくなる。
ところが、NHKは…
NHKでは、「附属高等学院の生徒」「専修学校高等課程の生徒」も高校生と呼んでいるのだと言い訳するかもしれないけれど、それは常識的でなくムリがある。
秋田市民でも、このことは知らない人が多いと思われるが、だからこそ、間違った表現を使うことで余計に誤解を広めてしまうことになる。マスコミ、しかも受信料を取る公共放送がこれでいいのだろうか。
と、ここまで書いておいてなんですが、NHKが美大附属高等学院を高校としたのは、これが初めてではない。
美大が4年制化される前、秋田公立美術工芸短期大学附属高等学院だった当時に、同じ報道をした(この時は学校名まで「~附属高校」としてしまっていた)ので、誤っている旨をNHK秋田放送局に指摘したことがあった。その時は、(直接的な訂正をしたかは不明だけど)後の時間帯の報道では「高校」の表現は使わなくなった。
それが生かされた(他からも指摘があったのかもしれない)のか、2015年や2016年では「専修学校の秋田公立美術大学附属高等学院では…」と、極めて正確な表現に変わって、安心していた(だから2017年はどうだったか意識していなかった)のだけど、2018年に元に戻ってしまった。
記者が引き継ぎをせずに異動してしまったのだろうか。
そうだとしても、取材者や原稿作成者、それを確認する立場の人(デスク?)などが、何の疑問もなく「高校」でスルーしてしまったのだとすれば、プロ意識が低いのではないか。
たいていのNHK職員は高等学校を出ているだろう。中卒、高卒認定試験(大検)、海外の学校を卒業しているのかもしれないけれど。高校を出ていれば、高校には普通科とか商業科とか「課程」があることは知っているだろう。
だったら、こんな本格的な作品を作るのが高校生だとすれば、この美大附属高等学院というのは、何課程・何科なんだろう? と疑問を持って調べようとはしないのだろうか。調べていれば、その段階で、ここは高校ではないのだと分かるはず。
しかも、少し前に、視聴者から指摘を受けていることなんだし。
NHKが要らないとは言わないが、NHKに対して過度に期待したり全面的に無条件に信用したりするべきではない【9日・「全面的に無条件に」を追加】と、最近特に思っている。でも、受信料を取っているだから、相応の仕事はしていただきたい。
もう、こうなったら、美大附属高等学院を高等学校化しちゃうのも手かも?!
4年制化された時、美大本体は公立大学法人の運営となった。法律では、公立大学法人が高等学校を運営することはできるが、専修学校は運営できないことになっていて、現在は附属高等学院部分は秋田市直営となっている。それも解消されるし。
でも、秋田県全体での高等学校の定員の割り振りとか、教職員の配置とか、やっぱりカリキュラムの編成とかクリアすべき課題もあるのでしょうね。
【2022年2月10日追記・秋田魁新報「シリーズ時代を語る・青木隆吉18」より附属高等学院が高校にならなかった事情など】「秋田市立工芸学校」だった1960年頃の段階で、当時の校長が「この学校はいずれ高校に変わる」と言っていた。しかしその気配は一向になく、先に短大ができた(この記事参照)。「市立高校にするのは、市の財政負担が大きく、高校教員の資格を持たない教員の雇用を維持する必要があったこと、さらに従来の校風を守りたいという思いもあり、見送られたようです。それで短大付属高等学院になりました。」とのこと。1999年(高校は2000年)に御所野学院中学高校は作っているから、そっちにも費用を振り向けたということもありそう。
あと、NHKが勘違いしてしまう一因に、「秋田市立御所野学院高等学校」の存在があるかもしれない。
こちらは、附属高等学院より歴史が浅い、中高一貫校の高校部分の名称。
これは正真正銘の「高等学校」なのだが、「御所野学院高等学校」に「学院」と「高等」が含まれていて、新人だったり異動して間もないNHK記者なら美大附属高等学院と混同しかねない。でも、そこを正しく理解して伝えるのが、プロのマスコミでしょう。
秋田テレビでもこれを伝えていたが、「高校」のフレーズはなかった(附属を「付属」と表記していたのは、常用漢字にしたということかな)。
あと、明日以降の秋田魁新報、大丈夫ですよね?【9日追記】9日付秋田魁新報は問題なかった。AKTや魁では、「高校」という言い回しを用いていないだけであって、美大附属が専修学校であることは触れていない。それだと、見た人自身で、美大附属が高校だと誤解してしまう可能性はあるが、それはその人個人の問題。一方、NHKは高校だと解釈させるようミスリードしているのがいただけない。
【2018年2月15日追記】本件をNHKの本部のメールフォームから指摘した。(本来は秋田局へ指摘するべきなのだろうが、以前に指摘済みであり、NHK全体のこととしてもとらえてほしかったため)
期待していたわけではないが返信はなく、ニュースサイトの1週間の掲載期限まで「高校」のままであった。
【7月9日追記】2018年3月20日に秋田県教育庁が発表した、同年度の教職員異動に誤りが3件あったとして、3月22日に訂正された。
1件は西明寺中学校事務職員の新職名の誤り。残る2件は、美大附属高等学院に関わる誤りだった。
市立岩見三内小学校の校長へ異動(昇任)した附属高等学院の副校長の現職名の誤り。「秋田公立美術大学付属高等学院副校長」と略さずに表記するのが正当らしいのを、「秋田公立美術大学付属高副校長」と、NHKと同じく高等学校扱いにしてしまった。
市立城東中学校へ異動する教諭の現職名も間違って、「秋田公立美術大学付属高等学院教諭」とすべきところを、「秋田市教委主査」と、なぜか教育委員会事務局勤務にしてしまった。
特に前者の誤りは、教育関係者(普段直接関わらない県教委だとしても)なのに基本的認識を間違えるという、なんだかな…というミス。
【8月30日追記・画像追加】
毎年恒例ではないと思われる、美大附属高等学院のニュースが、8月29日に報道された。ドイツから合唱団が来て、生徒と交流したという話題。そこでは、
「専修学校生 独の合唱団と交流」
原稿では「秋田市内の専修学校を訪れ」「秋田市の専修学校、秋田公立美術大学附属高等学院」、字幕でも「秋田の生徒と歌で交流」と、「高校」はひとことも使わっておらず、これなら問題なし。
2月の指摘を受けて、配慮した言い回しをしたのだろう。これで安心、というわけにはいかない。以前も、指摘してから何年か経つと、また「高校」に戻っていたのだから。
※案の定、安心できなかった。2018年12月には…
毎年この時期恒例の、秋田市にある秋田公立美術大学附属高等学院の生徒作品展が開催されていることを、マスコミが報道している。
NHK秋田放送局の報道
NHK秋田放送局がテレビで伝えた中に、間違いがある。
それは、画面に表示されるタイトル「美術学ぶ高校生の作品展」や原稿中の「美術やデザインを学ぶ高校生が制作した」の部分。
「高校生」は誤り。
一般的には、高校生は「高等学校(高校)の生徒」を意味する。NHKはこの学校を高等学校だととらえていると受け取れるが、美大附属高等学院は高校ではない。
ニュースサイトのタイトル「公立美大附属高」は、「高等学院」の略だと言い張るかもしれないが、知らない人は「~高校」の略ととらえるかもしれないから、まぎらわしい。
美大附属高等学院は「専修学校高等課程」という位置づけ。学校教育法では、高等学校と専修学校は別の学校としている。
美大附属高等学院は中卒者が入学し、制服を着て通学して3年で卒業し、卒業すれば大学受験資格を得られるものの、「高卒」とはならない。
となると、高校との違いが分かりづらいけれど、要は高校と比べて一般科目(国語数学など)の履修が少ない分、専門的分野(美術工芸)にカリキュラムの多くを割いていることになる。
また、公式ホームページに以前はなかった「Q&A」が掲載されており、「 「高校卒業資格はないが、大学受験資格はある」ことで不利益はありますか?」との問いに、基本的には高卒と違いはないが、国公立大学等の推薦の要件では高校に限定しているところが多く「本学院は対象になっていない場合があるのが現状です。」としている。
卒業後の資格取得や給与面で、制約を受けることも考えられるが、現在は上位の大学等へ進学する卒業生が多いそうなので、あまり問題ではないのかもしれない。
学校教育法では高等学校以外の学校が「高等学校」の名称を用いてはならないこととされており、仮に美大附属高等学院が「高等学校」と名乗ったら、大問題になってしまう。
さらに、高等学校と専修学校では、教員の要件も違うから、その点でもおかしくなる。
ところが、NHKは…
NHKでは、「附属高等学院の生徒」「専修学校高等課程の生徒」も高校生と呼んでいるのだと言い訳するかもしれないけれど、それは常識的でなくムリがある。
秋田市民でも、このことは知らない人が多いと思われるが、だからこそ、間違った表現を使うことで余計に誤解を広めてしまうことになる。マスコミ、しかも受信料を取る公共放送がこれでいいのだろうか。
と、ここまで書いておいてなんですが、NHKが美大附属高等学院を高校としたのは、これが初めてではない。
美大が4年制化される前、秋田公立美術工芸短期大学附属高等学院だった当時に、同じ報道をした(この時は学校名まで「~附属高校」としてしまっていた)ので、誤っている旨をNHK秋田放送局に指摘したことがあった。その時は、(直接的な訂正をしたかは不明だけど)後の時間帯の報道では「高校」の表現は使わなくなった。
それが生かされた(他からも指摘があったのかもしれない)のか、2015年や2016年では「専修学校の秋田公立美術大学附属高等学院では…」と、極めて正確な表現に変わって、安心していた(だから2017年はどうだったか意識していなかった)のだけど、2018年に元に戻ってしまった。
記者が引き継ぎをせずに異動してしまったのだろうか。
そうだとしても、取材者や原稿作成者、それを確認する立場の人(デスク?)などが、何の疑問もなく「高校」でスルーしてしまったのだとすれば、プロ意識が低いのではないか。
たいていのNHK職員は高等学校を出ているだろう。中卒、高卒認定試験(大検)、海外の学校を卒業しているのかもしれないけれど。高校を出ていれば、高校には普通科とか商業科とか「課程」があることは知っているだろう。
だったら、こんな本格的な作品を作るのが高校生だとすれば、この美大附属高等学院というのは、何課程・何科なんだろう? と疑問を持って調べようとはしないのだろうか。調べていれば、その段階で、ここは高校ではないのだと分かるはず。
しかも、少し前に、視聴者から指摘を受けていることなんだし。
NHKが要らないとは言わないが、NHKに対して過度に期待したり全面的に無条件に信用したりするべきではない【9日・「全面的に無条件に」を追加】と、最近特に思っている。でも、受信料を取っているだから、相応の仕事はしていただきたい。
もう、こうなったら、美大附属高等学院を高等学校化しちゃうのも手かも?!
4年制化された時、美大本体は公立大学法人の運営となった。法律では、公立大学法人が高等学校を運営することはできるが、専修学校は運営できないことになっていて、現在は附属高等学院部分は秋田市直営となっている。それも解消されるし。
でも、秋田県全体での高等学校の定員の割り振りとか、教職員の配置とか、やっぱりカリキュラムの編成とかクリアすべき課題もあるのでしょうね。
【2022年2月10日追記・秋田魁新報「シリーズ時代を語る・青木隆吉18」より附属高等学院が高校にならなかった事情など】「秋田市立工芸学校」だった1960年頃の段階で、当時の校長が「この学校はいずれ高校に変わる」と言っていた。しかしその気配は一向になく、先に短大ができた(この記事参照)。「市立高校にするのは、市の財政負担が大きく、高校教員の資格を持たない教員の雇用を維持する必要があったこと、さらに従来の校風を守りたいという思いもあり、見送られたようです。それで短大付属高等学院になりました。」とのこと。1999年(高校は2000年)に御所野学院中学高校は作っているから、そっちにも費用を振り向けたということもありそう。
あと、NHKが勘違いしてしまう一因に、「秋田市立御所野学院高等学校」の存在があるかもしれない。
こちらは、附属高等学院より歴史が浅い、中高一貫校の高校部分の名称。
これは正真正銘の「高等学校」なのだが、「御所野学院高等学校」に「学院」と「高等」が含まれていて、新人だったり異動して間もないNHK記者なら美大附属高等学院と混同しかねない。でも、そこを正しく理解して伝えるのが、プロのマスコミでしょう。
秋田テレビでもこれを伝えていたが、「高校」のフレーズはなかった(附属を「付属」と表記していたのは、常用漢字にしたということかな)。
あと、明日以降の秋田魁新報、大丈夫ですよね?【9日追記】9日付秋田魁新報は問題なかった。AKTや魁では、「高校」という言い回しを用いていないだけであって、美大附属が専修学校であることは触れていない。それだと、見た人自身で、美大附属が高校だと誤解してしまう可能性はあるが、それはその人個人の問題。一方、NHKは高校だと解釈させるようミスリードしているのがいただけない。
【2018年2月15日追記】本件をNHKの本部のメールフォームから指摘した。(本来は秋田局へ指摘するべきなのだろうが、以前に指摘済みであり、NHK全体のこととしてもとらえてほしかったため)
期待していたわけではないが返信はなく、ニュースサイトの1週間の掲載期限まで「高校」のままであった。
【7月9日追記】2018年3月20日に秋田県教育庁が発表した、同年度の教職員異動に誤りが3件あったとして、3月22日に訂正された。
1件は西明寺中学校事務職員の新職名の誤り。残る2件は、美大附属高等学院に関わる誤りだった。
市立岩見三内小学校の校長へ異動(昇任)した附属高等学院の副校長の現職名の誤り。「秋田公立美術大学付属高等学院副校長」と略さずに表記するのが正当らしいのを、「秋田公立美術大学付属高副校長」と、NHKと同じく高等学校扱いにしてしまった。
市立城東中学校へ異動する教諭の現職名も間違って、「秋田公立美術大学付属高等学院教諭」とすべきところを、「秋田市教委主査」と、なぜか教育委員会事務局勤務にしてしまった。
特に前者の誤りは、教育関係者(普段直接関わらない県教委だとしても)なのに基本的認識を間違えるという、なんだかな…というミス。
【8月30日追記・画像追加】
毎年恒例ではないと思われる、美大附属高等学院のニュースが、8月29日に報道された。ドイツから合唱団が来て、生徒と交流したという話題。そこでは、
「専修学校生 独の合唱団と交流」
原稿では「秋田市内の専修学校を訪れ」「秋田市の専修学校、秋田公立美術大学附属高等学院」、字幕でも「秋田の生徒と歌で交流」と、「高校」はひとことも使わっておらず、これなら問題なし。
2月の指摘を受けて、配慮した言い回しをしたのだろう。これで安心、というわけにはいかない。以前も、指摘してから何年か経つと、また「高校」に戻っていたのだから。
※案の定、安心できなかった。2018年12月には…