麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

トンマッコル2016

2016年05月08日 | 鑑賞
ブロックの指先を弾いたボールは
空色のコートの大きく外へ。
その軌道の経験則からWSは
早くも右腕を天井に向け突き立てた。

が、次の瞬間。
行方を察知していたかのように
エンドラインより後ろで備えたリベロが、
フェンス際で飛び伸びる外野手のように
斜め後方に目一杯体を伸ばした。
左拳が白と黄色と青からなる球に触れた。

会場が一匹の巨大な生物のように
「うおおおぉ~」と吠えた。

辛うじて命を繋いだボールの落下点に
セッターはスライディングで潜り込み、
アンダーハンドから前衛に送る。

ネットから離れた、とてもトスとは言えない、
けれどもコートの6人……いや、
ベンチの12……否、スタンドの部員と
応援団らの想いを乗せたボールを
背番号3が渾身の力を込めて撃ち抜く。

ブロックは二枚。
しかしまともなスパイクにはならない、
と踏んだプレッシャーのための壁。
ボールはネットワイヤーを強く叩くと、
白帯を這い、アンテナに当たる直前、
ぽとりと相手コートに落ちた。

今度は会場が歓声と悲鳴で激しく揺れた。

※※※

一貫校の中等部のバレー部だった僕は、
多くのメンバーがそのまま上に進む中、
別の高校を選んだ。
主力ではほかにも板垣、池下らが他校へ。

中学でも全国大会に出場したメンバーに
新たに高等部から入った戦力を加え、
再び全国に名乗りを挙げたチームを
僕はスタンドから応援していた。

・・・と、以上は長い例え話。

※※※

昨日『トンマッコルへようこそ』を見た、
その感想というよりは心境である。

日本演出者協会主催
「第二回日韓演劇フェスティバル」の
主柱作品として、東京・大阪・福岡の
三都市で唯一上演されたのが、
『トンマッコル~』だ。四年前になる。

チャン・ジン作、東憲司の演出、
翻訳は女優の洪明花が務め、
劇団桟敷童子の面々を中心に
塩野谷正幸、松田賢二、鈴木歩己らを
加えての巡演に制作として帯同した。

2016年、製作はナッポスユナイテッド。
キャストは桟敷童子から多くが名を連ね、
畑中智行、平田裕一郎、木村玲衣……、
そして今回は洪明花が本職の役者として
zeppブルーシアターの舞台に立った。

顔触れは一部変わったけれど、
本や美術等2012年版を踏襲していた。
ただ予算はまるで違うようで
森の緑や衣装など明確にグレートアップ。

それもまた。
ボールの大きさ、ネットの高さが
中学と高校で異なるのと似ている。
当然、戦術を含めた技術も
「お兄さん」になるように、
様々な点で進化した『トンマッコル~』を
何とも言葉に言い表せない気持ちで観た。

今日、千秋楽。

そうそう「日韓~」の時は、
福岡の劇場規格の問題でバラシは
夜中の2時3時くらいまで掛かると。

そこで打ち上げは前日に行った。
ところが思いの外バラシはスムーズで
急遽店を探して飲みに行く面々もいた。
〆切が迫り、戯曲を執筆する者、
部屋呑みでまったりする者も。

ビッグアーティストのコンサートと
歯科学会も重なり、ホテルは全滅、
いわゆる旅館に泊まったのだった。
玄関に犬がだら~っと寝そべり、
迷路のような木造の館内……
それも善き思い出のひとつだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする