「権力者にして、人間の世の中の何たるかを知らない者は、木偶(でく)よりもひどいと、豊臣秀頼(秀吉の愛息)を見て、思うようになった。
木偶の君主の周りには、それを踊らせる策士と小利口者が集まってくる。木偶をおどらせるというのが、人の世でもっとも罪だ」と、司馬遼太郎は歴史の中で語った。
さらに続けて、「権力は時に人間を魔性に変えてしまう。もともと権力というのは、権力の維持の為に、国家の名を借りて行う私的行為が多い」。
日本の総理は安倍、福田、麻生と3代続けて、1年持たなかった。そして鳩山も既にレイムダック化していると囁かれている。4人に共通するのは、祖父や父が総理大臣であったという貴族政治家。つまり豊臣秀頼のようなもので、世の中を知らない。
一方、同じ世襲政治家の小沢一郎の口癖は、「御輿は軽くてパーの方が良い」ということだから、これ以上の鳩山スキャンダルが噴出しなければ、お飾り総理として今年7月の参院選までは持たせるのではないか。
なぜなら民主党には小利口者は多いが、他に適当なパーがいない。この小沢一郎という人間、父は貧しい岩手から上京し、やがては自民党の代議士、大臣にまでなった立志の人だが、同じ世襲であっても叩き上げの自民党代議士を父に持つと、世の中を奇形に見ているような気がする。
今まで、小沢と蜜月の仲であった何人もの側近たちは、飽きたオモチャのように無残に捨てられた。野田毅、二階俊博、小池百合子、船田元、渡部恒三、熊谷などなど。引きずり回されて政治生命を失ったのは、著名人物だけを見ても、海部俊樹、細川護煕、渡辺美智雄、武村正義と枚挙に暇がない。
さて、今年7月の参院選、民主党が単独過半数を占め、絶対権力を手中にすれば、天下は小沢の意のままになるだろう。民主党の140名の国会議員を引き連れ、北京の大広間で行列を作り、中国にひれ伏し、独裁権力者の故金濤に一人ひとり握手をしてもらい写真撮影をしたが、そのシーンは、まるでテレビタレントに群がるグルーピーのように、何とも見苦しく、情けなかった。
一方、民主党の権力構造は幹事長への一極集中であり、役員を見ても、その顔触れは、旧自由党と労働貴族の出身者で占められている。そして選対委員長は田中派の石井一だというのだから、今や、民主党は自民田中党とでも名前を変えたほうがすっきりする。2003年、民主党と小沢・自由党が合併する際に、最後まで合併反対の姿勢を貫いたのは、枝野幸男であった。枝野の慧眼はさすがだが、その遺恨を忘れる小沢一郎ではあるまい。
元旦、小沢の世田谷の自宅には、200名余りの民主党国会議員が参集した。その数は、今までで最高であったという。しかし、その外には、50名ほどの集団が、「韓国朝鮮人に参政権を与えるな」と、民主党に抗議していたのは報道されていない。
数の力を頼み、権力を誇示する小沢、その姿は、父とも仰ぐ田中角栄に酷似している。
★日本航空の西松遥。
「企業再生支援機構」が、水面下で進めようとしている日航の法的整理に反対するという。また、スター・アライアンスについて、現在のアメリカン航空から離脱し、デルタ航空のスカイチーム傘下に入りたいと述べた。デルタ航空は日航に、1千億円程度の資金援助をするそうな。
この西松社長という人、当事者能力を失っている。赤門卒、日航では資金運用調達畑を歩いて来たが、2006年6月に日航社長に就任してから3年半が経った。その間、日航の建て直しをする時間はあったが、何もしなかったというのが実態だ。日航の金看板だけで、資金を右から左に動かしていただけで、経営能力など何もない。我々の税金を1〜2兆円も日航に注ぎ込むなど、モラルハザードも甚だしい。会社更生法を適用して、そこから再出発するのがビジネスの正道だ。
米国の大企業、GMもクライスラーも法的整理に踏み切った。
(ムラマサ、鋭く斬る)