たけじいの気まぐれブログ

記憶力減退爺さんの日記風備忘雑記録&フォト

「二十四の瞳」

2016年12月06日 17時16分14秒 | 読書記

 あるブログ友さんの記事「小豆島旅行」を拝見している内 急に 壺井栄著 小説 「二十四の瞳」を 改めて読んでみたくなり 本棚を当たると いつ頃 入手したのやら まったく記憶が有りませんが 文庫本が収まっていました。

 

「二十四の瞳」は 多分 昭和30年代、中学何年生だったかに 文部省推薦映画ということで 町の映画館に出掛け見た記憶があります。
もちろん 大石先生役は 高峰秀子の 白黒映画でした。
まだまだ晩生の少年でしたので 作者の潜在的戦争批判の心まで 理解したかどうかは別として 映画自体には 大変感動し 未だに忘れられない映画の一つになっていることは 間違いありません。

昭和初期、瀬戸内海の小豆島の寒村の分教場に赴任した若い大石久子先生と 12人の教え子の愛情溢れる物語ですが 日本が戦争に突き進んでいた時代、次第に 大人も子供も巻き込まれていきます。
岡田磯吉(ソンキ)、竹下竹一、徳田吉次(キッチン)、相沢仁太(にた)、森田正(タンゴ)、川本松江(マッちゃん)、西口ミサ子(ミイさん)、香川マスノ(マアちゃん)、木下富士子、山石早苗、加部小ツル(かべこつる)、片桐コトエ。
貧しさと戦い懸命に生きる者、病死してしまう者、戦死してしまう者、教壇に立つもの、失明し除隊しあんまとなった者、
等々。
特に後半、戦争のむごさ、悲惨さが 具現化して 涙を誘われますが 作者は 大上段に反戦を訴えるのではなく 静かに 庶民の立場から戦争批判しており それだけに心打たれてしまいます。
物語の最後の場面 歓迎会で 失明している 磯吉(ソンキ)が 子供の頃の 「一本松の写真」を見ながら 「それでもな、キッチン、この写真だけは見えるんじゃ。ほら 真ん中のこれが先生じゃろ。その前に うらと竹一と仁太が並んどる。・・・・・」と 指で押さえて見せる場面は なんとも涙を誘われます。

戦争を知らない世代、戦争を忘れようとしている政治家が 拡大している今、改めて 戦争が引き起こす 庶民の悲劇を 想像したいものです。

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藤沢周平著 「風の果て」

2016年12月06日 09時41分17秒 | 読書記

正直なところ 近年 余り 本を読んでいませんでしたが 最近 本棚の 埃を被って眠っている古い本の類の整理処分を仕掛けたことがきっかけで 改めて 読んでみようかなと思える本が次々出てきてしまい 気まぐれながら 読書の時間が多くなっています。

本棚に眠っている古い本の中には 無かった本ですが 先日 「蝉しぐれ」と一緒に 市立図書館から借りてきた 「風の果て」(上)(下)を 読み切りました。
「風の果て」は やはり 藤沢周平氏の 代表的な長編時代小説のひとつで テレビドラマ化もされたようですが 本を読むのは 初めてです。

物語は 小藩の筆頭家老 桑山又左衛門のもとへ かって同じ道場に通い 研鑽し合い、交遊していた同期の仲間5人組みの一人 野瀬市之丞から 果し合いを申し込まれた場面から始まり 果し合いに向かうまでの長い年月を 回想する形で進んでいきます。

身分、家柄の異なる 5人の若者達、上村隼太、杉山鹿之助、野瀬一之丞、寺田一蔵、三矢庄六は しがらみの無い内は 仲の良い仲間の関係が保たれていましたが まもなく それぞれの岐路があり 全く 異なった人生を歩み出し始めます。
主人公 上村家の次男 上村隼太は 郡奉行桑山孫助の婿養子となり 家督を継ぎ 孫助亡き後 桑山又左衛門と名乗り 政変政争を経て 筆頭家老の地位にまで 昇りつめます。
杉山家の嫡男 杉山鹿之助は 仲間5人の中では ダントツに高い身分家柄にもかかわらず 道場の仲間時代は 他の4人と気さくに交遊していたものの 家督を継ぎ 杉山忠兵衛となり 筆頭家老の地位についた頃には やはり 上士の血が通い出し やがて 藩の権力の中枢に迫ってきた かっての道場仲間である 桑山又左衛門とも対立し 最終的には 政争破れ 失脚します。
野瀬一之丞は 野瀬家の冷や飯食い(部屋住み)(次男三男等 家督を継げない身分)。剣の腕は優れているものの 拗ねているところ有り、婿入りもせず。
筆頭家老になった かっての仲間 桑山又左衛門に 果たし合いを突きつけ 「貴様の執政づらが どうもめざわりでならんというだけのことよ」と 言わしめ 死んでいきます。
寺田一蔵も 部屋住みだが 仲間の中では 最も早く 宮坂家に婿入り 宮坂一蔵となります。
しかし 妻の身持ちの悪さが原因で 刃傷沙汰を起こして脱藩、討手の 野瀬一之丞に斬られます。
その死に様が悲惨で 後の 野瀬一之丞の心に深い傷を残すことになります。
三矢庄六も 部屋住みで 石高20石の普請方 藤井家に婿養子に入り 藤井庄六となります。
上村隼太と 太蔵が原の開墾工事にも参加しています。藩校では 秀才だと言われている息子がいます。
物語の最終章、野瀬一之丞との果し合いの後 桑山又左衛門が 先ず 立ち寄っのは 庄六の家。
「庄六 おれは 貴様がうらやましい」「執政などというもになるから 友達とも斬り合わねばならん」と 述懐すると 「普請組勤めは 命がけの仕事よ」「うらやましいだと?バカ言ってもらっては困る」と 突き放します。

「風が走るように」 
一目散に走り続けてきた 桑山又左衛門。
「何が残ったのか?」・・・・・。
現代でも通じる 問いかけのような気がします。

 

 

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