小倉百人一首で春を詠んだ歌 その6
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
出典
千載集(巻十六)
歌番号
67
作者
周防内侍(すおうのないし)
歌意
春の夜の夢のように、
はかない、かりそめのあなたの手枕によって
実際は共寝するわけでもなく、そのような二人ではないのに、
つまらなく立つであろう浮き名が、
なんとも悔しいことでございます。
注釈
「千載集」の詞書(ことばがき)によると
月の明るい夜、二条院で女房達が集まって、夜通し物語等している時、
眠くなった作者周防内侍が
「枕が欲しい」と 独り言を言ったところ、
それを聞き付けた大納言忠家が
「これを枕に」と言って自分の腕(かいな)を簾の下から差し入れたので
作者周防内侍が 即座に詠んだ歌だという。
その歌に対して
「契りありて 春の夜深き 手枕を いかがかひなき 夢になすべき」
という大納言忠家の返歌があるという。
「手枕に」・・腕を枕にすることだが ここでは男女が共寝する意。
「立つ」・・評判になること、広がるの意。
「名こそ惜しけれ」・・浮き名(恋の評判)が立つのが残念であるの意。
周防内侍
周防守(すおうのかみ)平継仲か平棟仲の娘と言われており、
名前は 父親の肩書から来ている。
11世紀後半、後冷泉天皇、白河天皇、堀川天皇に仕えた女官。
女房三十六歌仙の一人。
参照・引用
「小倉百人一首」解説本(文英堂)
「へー!、そーなんだ」
今更になって 目から鱗の爺さんである。