当地 今日も 朝から雨雲が低く垂れ込めており 時折 雨が降ったり止んだり、はっきりしない天候。気温は一気に下がって 体感的には半袖シャツでは寒い位になっている。
天気予報では 今週いっぱい、同じような天気が続くようで スッキリ爽やか、天高い秋の空を望めるのは もうちょっと先になりそうだ。
図書館から借りていた 平岩弓枝著 長編時代小説 御宿かわせみシリーズ 第27弾目の作品 「横浜慕情」(文春文庫)を 読み終えた。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも その都度、備忘録としてブログに書き留め置くことにしている。
平岩弓枝著 御宿かわせみ(二十七)「横浜慕情」
本書には 表題の「横浜慕情」の他、「三婆」、「鬼ごっこ」、「烏頭坂今昔」、「浦島の妙薬」、「鬼女の息子」、「有松屋の娘」、「橋姫づくし」の連作短編8篇が収録されている。
「三婆(さんばば)」
その年の夏は、江戸では、深川の霊厳寺で7年振りに行わる富くじ、富突き講の話で盛り上がっていた。全部で5000枚、1枚1分で 合計1,250両、1,000両が霊厳寺に収められ 250両が当りくじ。1番くじ百両が当たったのは 菓子屋巴屋のおつる婆さん(61歳)。百両は誰の物?、年子の妹達、小間物屋三河屋のおかめ婆さん(60歳)、瀬戸物屋河内屋のおよね婆さん(59歳)とのすったもんだの話。三河屋に押し入った盗賊一味とは?、東吾が推量、長助が探索開始、源三郎に手配で捕縛。
「あれが・・・・例のお婆さんたちですか」、東吾と並んで窺っていたるいが 小さく声を立てた。
「鬼ごっこ」
鬼同心と謳われていた岡っ引き庄司源右衛門の頃から庄司家に仕えていた「かわせみ」の老番頭嘉助と女中頭お吉は 東吾の妻であり、一人娘千春の母親であり、「かわせみ」の女主人であるるいのことを未だに「お嬢さん」と口に出てしまい困っている。どちらかが「お嬢さん」と口に出した時は 罰金1文取り合う賭けをしており 嘉助は 16文稼ぎ、お吉は1文、お喋りなお吉の方が圧倒的に分が悪い。一方で、長助の頼みで「かわせみ」の宿泊者となった若い女おたよ、なんとも複雑な素性?、
鬼が必死になって手をのばすが 子供達はひょいひょいと逃げ廻って捕えられない。嘉助が呟いた。「どうも、遠州屋のお内儀さん(お信)と おたよさんのようで・・・」
「烏頭坂今昔(うとうざかこんじゃく)」
「かわせみ」で 嘉助から煙管の修理を頼まれているのは、王子の烏頭坂の近くからやってきた羅宇屋が万三。物語の最後に再度登場する。畝源三郎が扱った5人組盗の内、大島へ流罪になった4人の内3人が島抜けをし 仲間割れ密告者した彦次郎が、狙われるとみた源三郎が 警戒していた矢先、彦次郎が殺された。下手人は?、東吾も手伝って、謎解き、探索開始・・、意外な事実と展開が・・。
源三郎が晴れやかに笑った。「どうも 東吾さんにしてやられましたよ」・・・、万三が茫然とと見送り、その万三を取り囲むようにして、娘と孫が立ちすくんでいる。・・・
「浦島の妙薬」
「かわせみ」を常宿にしている浦島屋太郎兵衛は 横浜で異人相手に商売しているらしい?、女中頭お吉に言わせると、太郎兵衛は甘党、大食漢、大法螺吹き?、ところが、生国が 浦島太郎の故郷東海道の子安村の話、浦島寺になると お吉は夢見るような顔になる。
麻生宗太郎からの誘いも有って、あっさり、横浜行き、浦島寺行きが決まり、東吾、宗太郎、長助、お吉、源三郎の長男源太郎、宗太郎の長女花世の6人が出立した。浦島屋太郎兵衛の実家で、太郎兵衛と弟次郎作、おたけ夫婦、その娘おいねのいざこざに巻き込まれるが・・、浦島屋太郎兵衛は?、あんころ餅は?
次郎作親子は (宗太郎の)うしろ姿を伏し拝んでいる。
「横浜慕情」
ほとんどが1話完結短編形式だが 本篇は珍しく 前篇「浦島の妙薬」の続きになっている。東吾、宗太郎、長助、お吉、源太郎、花世の一行は 一昨日江戸を発って 初日は川崎で泊まり、2日目は 子安村の近くの浦島寺を見物した後、横浜に来て 宗太郎と昵懇の薬種問屋千種屋の別宅に泊まった。宗太郎の案内で浅間山に上り絶景を楽しんでいたところ、首くくり現場に遭遇、あわやのところで一命をとりとめたが 東吾の知人英吉利人水兵のジョン・バックル、事情を知った東吾、聞き捨てならず 乗り込んだが、東吾の素性を知るお柳が出現し解決。長助の探索で お柳は 元深川の芸者染吉だったことが分かったが・・、
「なんだ、文屋の染吉か、あいつなら・・・」、とたんに、るいは向き直った。「そうでしたの、昔むかしのおなじみさんだったので 三両ものお金をお出しになって、お柳さんとやらは さぞかし、お嬉しゅうございましたでしょうね」、長助は泡をくって逃げ出し、東吾は進退きわまった。
「鬼女の息子」
大宮宿の近くから江戸に出てきて 娘のおくみの行方を尋ねて「かわせみ」にやってきた彦作が 土左衛門となり発見された。「かわせみ」の女中は 女中頭のお吉と、お竹、お石、おみね、おすみ、おかよの5人、おくみ等はいない。源三郎に協力、真相解明、探索をスタートする東吾。講武所の上司の見舞いの帰り 偶然 彦作の娘おくみと遭遇、「あだちがはら・・、おにばば・・助けて・・」を残し、息を引き取った。幸助は死罪、母親おかねは八丈島流刑となった。
「有松屋の娘」
冬一番の冷え込みが江戸を襲った日、東吾は、「かわせみ」の老番頭嘉助と将棋をさしていたが、そこへ深川の岡っ引き長寿庵の長助がやってきて、煙草入れの話になる。長考していた嘉助、「若先生、こいつは詰んで居ります」、東吾が笑い、「どう考えても無理ってことか」「いえ、若先生のほうが詰んでおりますんで、手前の勝でございますよ」「なんだと」・・・長助が大声で笑った。のんびりした情景である。有明絞りを扱う有明屋半兵衛が「かわせみ」にやってきた。お内儀が亡くなり、連れ子おたき(15歳)を行儀見習い方々「かわせみ」に奉公させてもらえないか申し出てきたが、橋本屋三郎兵衛に対するおたきは?、半兵衛の本心は?、
どこへおたきが向かったにしろ、二度と半兵衛の許に帰るつもりはないに違いなく、切れた糸はもうつながらない・
「橋姫づくし」
七草の日、東吾が「かわせみ」に帰ると 無二の親友麻生宗太郎は 旨そうに七草がゆを食べており、昵懇の薬種問屋紀伊国屋の一人娘おとらが行方不明になっていると話す。
「いくつなのだ、おとらは・・・」、源太郎、「もし どこかで生きているのなら 本年68歳になります」、東吾はあっけにとられ、るいとお吉が顔を見合わせて笑い出した。「人をからかうにもよい加減にしろ。なにが娘だ、67の婆さんじゃないか」・・・
定廻り同心源三郎もやってきて このところ裕福な家の女隠居の誘拐事件が8件発生、身代金目当てで ほとんど無事に戻ってきていることを知った東吾、正月そうそう、源三郎、長助等ど探索開始、真相を突き止めていく。旗本篠原右近、妻女郁江、小夜橋、宇治の橋姫、阿片、
東吾は照れ隠しに酒を飲み、「あんなでかい目でみつめられると瘧にかかったようないやな気分になるもんだ」、源三郎が手酌で飲みながら言った。「小夜橋の年齢ですがね。67だそうですよ」・・。東吾は顔をしかめ、るいとお吉は袖を顔に当てて笑い出した。「冗談じゃねえや。正月から不景気な捕物に狩り出されてさ」・・・、
(つづく)