「壊れかた指南」所収 文春文庫 2006年
2篇の漫画の原稿を二人の編集局のひとに渡した
と思っていることが発端となり、果たして、その原稿は
本当にあったのか、どうなのか、夢と現(うつつ)の
間をさ迷い歩くような短篇。
果たして、これは夢なのか、書いていた自分はリアルか、
虚無か、作品というものの危うさ、その存在の意義。
果たして、あの作品は本当に自分が確かに書いたかと
問われれば、うーん、書いていないような気がすることも
確かにある。作品はあるからこそ、書いたという証左とな
るわけで、作品がなくなったら、書いたか自信なくなるのは
よくわかる。特に、ぼくなんかまだ、本になっていないから
リアルに書いたか、実感が伴わない。充足感はあるがね、しばらく
経つと、どうでもよくなる、というのは、あるな。……合掌。