新潮文庫 平成5年
山口氏の集大成となる本作。山口氏の愛した店、ホテル・ニュー
グランドのローストビーフ、山の上ホテルの天ぷらとステーキ
など、20カ所に及び描いている。
山口氏は総入れ歯だそうであった。それでは、味もへったくれも
会ったものではなかろうと思うのだが、味に関する記述は驚くほど
少ない。人と人の関係、店と人の関係の重要性なのだな。
店で食べるということがひとつのステータスであり、体験であるらしい
のだ。フツーの人は山の上ホテルで天ぷらを食べるなんてことは
あんまりないんじゃないか。すごくゴーカな生活を送っていた
と思う。それで、まだ未読だが、江分利満氏の優雅な生活みたいな
作品が生まれるわけですね。写真も載っているが、味のある建物の
雰囲気が伝わってきて、昔の一流の在り方がビンビン伝わってきた。
(読了日 2022年10・4(火)22:00)
(鶴岡 卓哉)
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