映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ムーンライト・シャドウ

2022年02月10日 | 映画(ま行)

月影現象で

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さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)は、運命に導かれるように出会い、恋をします。
等の3歳年下の柊(佐藤緋美)と柊の恋人ゆみ子(中原ナナ)を合わせた4人は、
意気投合し、多くの時間を共に過ごします。

そんな中で、
「満月の夜の終わりに、死者ともう一度会えるかも知れない」
という“月影現象”の話が出ます。
もしそんなことができたら、誰に会いたいか、などと言いながら・・・。

ある時、等とゆみ子が事故死。
突然の別れに打ちひしがれるさつき、そして柊。
そんな時2人は、麗(臼田あさ美)という不思議な雰囲気をまとう女性と出会い、
徐々に日常を取り戻していき・・・。

吉本ばななさん原作。
生と死についてのテーマが根底に流れる、静謐な作品です。

本作のような事故死の場合には、最後の挨拶を交わすこともなかったでしょう。
だから余計に喪失感が増す。
もし死者ともう一度だけ会うことができたとしても、
それはほんの一時で、ムダなことなのでは、と言う人もいるでしょう。
でも、そうではないと思う。
最後に思いをこめて会う、ということ。
それが大事なのだと思います。

作中で「水」について多く触れられています。
月影現象のためには、川のそばでなければならないというのも、その一つ。
水の流れは目に見えない地下深くにも張り巡らされていて、絶えることがない。
それはまるで、私たちの血の流れのようでもありますね。
水の流れは命の流れ。
そしてそれは時の流れでもある。

 

そしてまた、生きることは、食べることでもあります。
さつきは等が亡くなった後、ろくに食事ができなかった。
全く食欲がわかないのです。
けれど、さつきは日常を取り戻すことで、食欲も出てきます。

死者は流れ去ってしまう。
けれど生きている者は、食べて、さらなる流れに乗って進んでいかなければなりません。
月影現象はそのための儀式なのかも知れませんね。

<WOWOW視聴にて>

「ムーンライト・シャドウ」

2021年/日本/92分

監督:エドモンド・ヨウ

原作:吉本ばなな

出演:小松菜奈、宮沢氷魚、佐藤緋美、中原ナナ、吉倉あおい、臼田あさ美

 

静謐度★★★★☆

満足度★★★☆☆


モンタナの目撃者

2022年01月28日 | 映画(ま行)

最近の女子供はタフ!!

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森林消防隊のハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、
過去に森林火災に巻き込まれた少年たちを救えなかったことがトラウマとなっています。
精神的にも不安定となり、山中の監視塔の在駐員という閑職に回されてしまいます。

そんなところに迷い込んできた一人の少年・コナー(フィン・リトル)。
彼は父親を目の前で惨殺され、その殺人者たちから逃げているところでした。
この少年を今度こそは守り抜くとハンナは決意したのですが、
そんなところに大規模の森林火災が迫ります・・・。

コナーの父は公認会計士で、とある重要人物の不正に気づいてしまった。
それが明るみに出ると多くの上層人物たちが被害を受けることになる。
ということで、二人の暗殺者が放たれたのです。

コナーの父を殺した後、
コナーの向かいそうな所へ先回りしたり、森林に火を放ったり、
自分たちを目撃した者も殺しまくる、とんでもない殺人鬼。
けれど彼らは一見何でもないサラリーマン風、というところが恐いです。

そんな彼らに立ち向かうのがハンナということで、まあこれは想定通り。
そしてもう一人、なんともたくましかったのが、一人の妊婦であります。

最近の映画作品はどれも女性が強いですが、
ついに妊婦まで銃を構えるのか。
かっこよかったです!!

楽しめます。

 

<Amazon prime videoにて>

「モンタナの目撃者」

2021年/アメリカ/100分

監督:テイラー・シェリダン

原作:マイケル・コリータ

出演:アンジェリーナ・ジョリー、ニコラス・ホルト、フィン・リトル、
   エイダン・ギレン、メティナ・センゴア

 

サスペンス度★★★★☆

女の強さ度★★★★★

満足度★★★.5

 

 


マトリックス レボリューションズ

2022年01月04日 | 映画(ま行)

圧倒的なザイオンの攻防戦

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マトリックスの三作目。
というか、前作「リローデッド」と本作はつながっており、二つで一つの話。
だから前作が本作の前置き的な役割で、大きな盛り上がりに欠けていた、
というのも無理のないことだ、と本作を見て大いに納得しました。

 

本作では冒頭、ネオは現実世界と仮想世界“マトリックス”との狭間に
閉じ込められてしまっているところから始まります。
でもそれはモーフィアスとトリニティの決死の働きにより、なんとか脱出に成功。

そしてようやく、本題の問題に向けてストーリーが動き始めます。
それというのは、残された人間たちが暮す地下深くのザイオンの街に、
マシンの放つセンティネルの大群が今にも到達し襲いかかろうとしているのです。
最後に残された人類の戦艦2隻のうち、一隻はごく狭い通路を伝いザイオンの救援へ。
そして、ネオとトリニティはもう一隻に搭乗し、
コンピューター本体の街、マシン・シティへ向かうことにします。

 

そして、このザイオンでの攻防戦がなんといっても圧倒的な質感と重量感で迫力満点。
群れとなって飛び交い襲ってくるセンティネル。
迎え撃つのは、ガンダムみたいなマシンを操る兵士。
ここの将軍が「ミフネ」という名前です♡

決死の攻防もむなしく、あわやのところで戦艦が到着。
センティネルの大群を一掃したかと思いきや・・・。

絶望的な一難去って、また一難。
それはない・・・。

結局、決着はマシン・シティへ向かったネオにかけるしかない。
なんとも心憎いストーリー運びであります。
マシン側では、実はマトリックス内でかってに増殖を始めて
内部の調和を著しく乱しているスミスの存在に困っていた、という事情が鍵になります。

なるほどー。
前作で何が何だかよく分からなかったところが、うっすらとは分かったような気がしてきました。
何度も見ればもっと分かるのかも知れないけれど、もういいかな?

とりあえずは、最新作を見るための復習としては十分でしょう。

 

 

「マトリックス レボリューションズ」

2003年/アメリカ/129分

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー

出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、
   ヒューゴ・ウィービング、ジェイダ・ピンケット・スミス

迫力度★★★★★

満足度★★★★☆


マトリックス リローデッド

2022年01月03日 | 映画(ま行)

ザイオンの危機が目前に

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さて、マトリックスの二作目。
2作目と3作目はセットで連続した話になっています。

 

救世主として覚醒したネオは、
コンピュータ支配から人類を解放する闘いを続けています。

人間たちが暮す最後の都市・ザイオンに
ロボット兵センティネルが25万の大群で押し寄せ、ザイオンの滅亡が迫っています。
その危機を救うには、ネオがマトリックスの「ソース」に到着しなければならない。
そしてそこへ通じる道を開くことができるのは「キー・メーカー」という人物だけ。

ということで、RPG的に、一つ一つの課題を解決しつつ進んでいくことになります。

 

仮想世界“マトリックス”でのカーチェイスは、とにかく派手。
まあ、一番の見所でしょうか。
数々のアクションはやはりスタイリッシュでカッコイイですが、
こんなシーンがあまり続くとなんだか飽きてしまって、
さほどの驚きはなくなってきてしまいます。
エージェント・スミスが自己をコピーする技を身につけたようで、
うじゃうじゃとMr.スミスが湧き出てくる。
これはかなり気味悪いですが。

 

このコンピュータと人類の泥沼のような闘いの根源は
いったいいつからどのようにして・・・、
という所に恐るべき謎が潜んでいるようではあるのですが、
なんだかよく分からないうちに「続く」と言うことになってしまいます。
2作目はやや消化不良。

とにかく次へ行きましょう。

 

 

「マトリックス リローデッド」

2003年/アメリカ/138分

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー

出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、
   キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング

 

カーチェイス度★★★★☆

満足度★★.5

 


マトリックス

2022年01月02日 | 映画(ま行)

仮想現実の中で生きる人々

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本作はもちろん見ておりますが、シリーズ最新作を見るための復習ということで、
改めて見てみました。
20年以上も前なんですね。
当然、当ブログ記事にもなっていないので。

コンピューターソフト会社のプログラマ-として勤務するトーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)。
しかし、裏ではネオという名で知られた凄腕のハッカーでもあります。
あるとき、トリニティ(キャリー=アン・モス)と名乗る美女から接触を受けたネオは、
彼を探していたという男、モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)と出会います。
彼は言います。
「人類が現実だと思っているこの世界は、
実はコンピューターによって作り出された『マトリックス』と呼ばれる仮想の世界だ」と。

現実の世界では、人間は眠らされて、その生体エネルギーを電気的エネルギーに変換し、
コンピューターの原動力となっているというのです。
いまや人間は眠りながら脳内の世界で生きているだけ。

モーフィアスの誘いにより、現実世界で目覚めたネオは、
コンピュータ-に支配され、荒廃した世界を目の当たりにします。
ネオこそはこの世界を救う救世主とモーフィアスは言い、
ともに人類を解放するための闘いに乗り出すことに・・・。

この第一作公開当時、ワイヤーアクションやバレットタイムと呼ばれる
撮影法が話題になったものでした。
この革新的なアクションシーンは、いま見てもステキにスタイリッシュですね。

いま自分が生きている世界が、コンピューターで作り出された仮想現実内のことに過ぎないという発想は、
いま現在、さらに説得力を持って迫ってきます。
ある人物は思います。
「こんな薄暗くて寒くて狭くて、まずい食事、
危険に満ちたこの“現実”よりも、マトリックスの世界にいる方が幸せだ・・・」と。

脳が認識すること=現実であるならば、
確かに、眠りながら穏やかな日常を生きる方が幸せなのかもしれません。

マトリックスの世界の中での「死」は現実世界での「死」でもあります。
脳が自分の「死」を認識してしまったら、
すなわち肉体も生命活動を停止してしまう、ということなんですね。

しかしネオは、覚醒し、凄まじい精神力でもって、その法則を乗り越える。
果たして彼は、このコンピューターに支配された世界を変えることができるのか・・・!
ということで、復習は第一作目だけでいいかな、と思っていたのですが、
この際ぜんぶ見てみることにします。

さすが20年前と思えるのは、パソコンのディスプレイが液晶ではなくブラウン管だったり、
携帯電話はあるけれど、もちろんスマホはまだない、というあたり。
マトリックスから現実世界へ戻るには、
公衆電話から指令本部に電話回線を通じさせなければならないのですが、
公衆電話が滅多にはない現在は、ちょっとそれは難しいかも、なんて思ったりします。

<Amazon prime videoにて>

「マトリックス」

1999年/アメリカ/136分

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウシュキー

出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、
   キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィービング、ジョー・パントリアーノ

 

アクションの格好良さ★★★★☆

満足度★★★★☆

 

 


燃えよ剣

2021年10月18日 | 映画(ま行)

運命の波に傲然と立ち向かう

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待ってました!!
新選組副長、土方歳三の生涯を描きます。

武州多摩の農家に生まれた土方歳三(岡田准一)は、「武士になりたい」という思いで、
近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)ら同士とともに京都へ向かいます。
芹沢鴨(伊藤英明)を局長に徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成。
土方は、鬼の副長と恐れられながら、
討幕派の制圧のため、京都の町で活躍するも・・・。

原作は司馬遼太郎。
最も私たちの持つイメージに近い新選組の物語かも知れません。
中でも土方歳三については、昨今「青天を衝け」(町田啓太)や
「土方のスマホ」(窪田正孝)(?!)でも、その最期を見届けたばかり。
それで、岡田准一さんの土方というのはちょっと違うなあ
・・・と、私は思っていました。
でも本作を見終えるときには、失礼しました、イヤ、これ本物、
土方はこの人しかいない!!
と思っていたので、いい加減なものです・・・。

確かに、町田啓太さんの土方はかっこよかった。
でも、田舎の村で「バラガキ」と呼ばれていて、
ただただ、強くなって何者かになりたいという思いでひたすらに突き進んでいく。
刀使いは鋭いというよりもとにかく強い。
バシッとたたき切る感じ。
確かにこうでなければ人は切れますまい。
なんとも迫力のある殺陣シーン。
こうした骨太の感じが、岡田准一さんだからこそ出せたと思います。
終盤の、髷を切って洋装の土方さんはやっぱりカッコイイ!!

新選組の目を覆うような粛清の嵐、
戊辰戦争に敗れた後のそれぞれの生き様、
歴史の大波に翻弄される運命はやはりロマンを感じます。

最期まで「武士」を貫いて散っていった土方歳三。
ああ・・・無性にまた函館に行きたくなってしまいました。

私の推しの松下洸平さんは斎藤一役。
ええと、本作はコロナ禍の影響で公開がかなり遅くなっていて、
実のところは、松下洸平さんが朝ドラ「スカーレット」でブレイクする前に
もう撮り終えていたそうです。
今ならもう少し出番の多い役につけたかも。

でも斎藤一といえばアレですよ。
「るろうに剣心」の中で、江口洋介さんが演じていた役。
悪くはないです。

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余談ではありますが、私の初めての「新選組」体験は、
木原敏江さんのコミック「天まであがれ」なのです。
いまもその時の新選組メンバーの面影が忘れられない。
土方歳三は「うるわしのフィリップ」さまでありました。

 

<シネマフロンティアにて>

「燃えよ剣」

2021年/日本/148分

監督・脚本:原田眞人

原作:司馬遼太郎

出演:岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近、山田裕貴、松下洸平、伊藤英明

 

歴史ロマン度★★★★★

鮮烈な生き様度★★★★★

満足度★★★★★

 


マスカレード・ナイト

2021年10月15日 | 映画(ま行)

大晦日の混乱の夜

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先の「マスカレード・ホテル」は見たので、やはりこちらも見ておきましょうかね、
ということで。

 

ホテル・コルテシア東京に再び潜入捜査に踏み込んだ刑事・新田浩介(木村拓哉)と、
今度はコンシェルジュに昇進した優秀なホテルウーマン・山岸尚美(長澤まさみ)の物語。
都内マンションで起きた殺人事件の犯人が大晦日にこのホテルで行われる
カウントダウンパーティー「マスカレード・ナイト」に現れる、
という匿名ファックスが来たことにより、警察が動き始めます。
しかしここで問題なのは、500人の参加者は全員仮装で顔を隠しているということ・・・。
誰が誰やら分からない・・・。

そもそも犯人の意図は? 
そして、このことを知らせたファックス送信者の意図は??

まあとにかく豪華出演者と、誰も彼もがうさんくさいという
このお祭り状態の作品は、あまり深く考えずに、楽しめばいい。
そういうものだと思いますので、あれこれは言いますまい。

シリーズ2作目は、始めから登場人物の性格や関係性が分かっていて
すんなり入り込めるところがお得です。

新田と山岸は、顔を合わせればつい小競り合いをしてしまいますが、
互いの仕事に対する姿勢や能力を分かっていて、
そしてリスペクトもしているというあたりが、見ていて心地よいですね。

次作はロサンゼルスが舞台?
・・・なわけないか。

 

<シネマフロンティアにて>

「マスカレード・ナイト」

2021年/日本/129分

監督:鈴木雅之

原作:東野圭吾

出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、梶原善、泉澤祐希、沢村一樹、麻生久美子、博多華丸

 

豪華さ★★★★☆

ミステリ性★★★☆☆

満足度★★★.5

 


護られなかった者たちへ

2021年10月11日 | 映画(ま行)

護られなかった者、とは。

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東日本大震災から9年経った宮城県内の都市部。

全身を縛られたまま放置され餓死させられるという陰惨な連続殺人事件が起こります。
刑事の苫篠(阿部寛)、蓮田(林遣都)らが捜査に当たっています。

被害者2人は、どちらも善人で人格者であると周囲からは言われていました。
やがてその2人は、同じ役所で生活保護の担当をしていたことが分かります。

そんなことから浮かび上がった容疑者は、
過去に放火事件を起こして服役し、刑期を終えて出所したばかりの利根(佐藤健)。
そしてそんな中、第3の事件が・・・?

この事件と平行して、津波に襲われた町のその直後、
避難所となった小学校での人々の様子が描かれて行きます。

何もかも流されて、行き場を失いひとりぼっちになってしまった
青年・利根と、小学生の少女・幹子。
この2人を何かと気遣い声をかける老女・けい(倍賞美津子)。
けいは元々一人暮らしで、家はかろうじて無事だったものの、
暮らし向きは苦しそうです。
身寄りのない3人が身を寄せて、しばし心安まる日々を過ごすのでした。

さて、この過去がどうして現在の殺人事件につながっていくのか、そこが問題なわけです。
生活保護、これが大きなテーマ。
生活保護は、収入の手立てを失った人を最後に救い上げるセイフティネットのはず。
ところが、本当に必要な人に届かず、逆に不正受給が横行。
そして杓子定規なこの制度のもとでは、被保護家庭の子供は塾にも通えない・・・。

こんな残念なことが実際には多いということなのでしょう。
苦しく切ない物語・・・。

清原果耶さんの役が、宮城県で人の役に立つ仕事をしている・・・ということで、
朝ドラに通じているなあ・・・などと思いながら見ていたのですが、
いやいや、そんなのんきにしている場合ではなかったのです!!

こんな役もするのだったのか。
清原果耶さん、恐るべし。

<シネマフロンティアにて>

「護られなかった者たちへ」

2021年/日本/134分

監督:瀬々敬久

原作:中山七里

出演:佐藤健、阿部寛、清原果耶、林遣都、倍賞美津子、吉岡秀隆、井之脇海

 

社会の矛盾度★★★★☆

切なさ★★★★☆

満足度★★★★☆


ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒

2021年10月10日 | 映画(ま行)

19世紀末のロードムービーアニメを楽しもう

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アニメーションスタジオ、ライカによるストップモーションアニメ。

19世紀末、英国。
神話と怪獣研究の第一人者を自称するライオネル卿。
権威ある協会に入りたいのですが、変人扱いされている彼は入れてもらえません。
そんなある日、伝説の生き物を発見して、自らの能力を世に示そうと、旅に出ます。
執事は辞めてしまったので、はるばるアメリカ北西部のワシントン州まで、孤独の旅。


そして彼は人類の遠い祖先、生きた化石=ミッシング・リンクと遭遇します。
この、Mr.リンクもたった一人、森の中で孤独に暮していたのです。
そのため、彼の親族がいるかもしれないシャングリラを目指すことに。

シャングリラ、すなわちヒマラヤ、雪男の目撃の噂があるところなんですね。
このビクトリア朝の時代性がすごくいいのです。
世界を旅する手段はかなり発達している。
しかしまだまだそう手軽というわけでもない。

船、列車、馬車、象・・・あらゆるものを利用して未開の地まで分け入っていく、
このロードムービー感がたまりません。
手間もかかるし時間もかかる。
本来旅というのはこういうものなのかも知れませんね。

ライオネル卿は始めはただ世間から高評価を受け、認められたい
というその一心だったのですが、
リンク(スーザン)と共に旅をするうちに、彼を本当の“友”と思うようになっていく・・・。

さてもう一人登場するのが、ライオネル卿の今は亡き友人の妻・アデリーナ。
実は彼女はライオネル卿の元妻なのです・・・。
微妙な関係ではありますが、このアデリーナが合理的かつ先進的考えの持ち主。
そんなだから、権威主義から抜け出せないライオネル卿とは
うまく行かなくなってしまったのかも知れません。
でも彼女も共に旅をすることにより、ライオネル卿との間もまた接近していきますが・・・。

しかし、安易な恋のハッピーエンドみたいにならないところがまたいい。
実に、今時の(舞台はビクトリア朝だけど!)女性の有り様を描き、いさぎよいです。

男女間だからといって、性愛ではなく、「友情」もまたいいものですね。

 

<WOWOW視聴にて>

「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」

2019年/アメリカ/95分

監督・脚本:クリス・バトラー

出演(声):ヒュー・ジャックマン、ザック・ガリフィアナキス、ゾーイ・サルダナ、エマ・トンプソン

 

旅感★★★★★

友情度★★★★★

満足度★★★★☆

 


MINAMATA ミナマタ

2021年09月27日 | 映画(ま行)

日本の片隅の苦しみを世界へ発信した男

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水俣病の存在を世界に知らしめた写真家、
ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミス夫妻の写真集「MINAMATA」を
題材としたストーリー。

奇人変人でない役のジョニー・デップを待っていましたので、さっそく見ました!

1970年代。
かつてアメリカを代表する写真家と称えられたユージン・スミス(ジョニー・デップ)ですが、
今は落ちぶれて、酒に溺れる日々。
そんな彼の元に、アイリーン(美波)と名乗る女性が訪れます。
彼女は熊本県水俣市のチッソ工場が海に流す有害物質によって
苦しんでいる人々を撮影して欲しいという依頼をしに来たのでした。

それを受け、水俣にやって来たユージンは思いも寄らないものを見ることになります。
歩くことも出来ない子どもたち、
激化する抗議運動、
力で押さえ込もうとする工場側・・・。

水俣病のことはもちろん知っていたわけですが、
LIFE誌にのったユージン・スミスの写真でこの問題を世界中が知ることになり、
そしてようやく企業や国が重い腰を上げて対策に本腰を入れはじめた・・・
ということを初めて知りました。

ユージンが水俣を訪れた始めの頃は、
人々は症状の重い子供を見せることはもちろん、写真を撮ることも拒んだのです。
それは日本独特の「恥」の感情なんですね。
こんな子供を人様に見せられない・・・と。
悲しいことですが、それは理解できてしまうのです。
50年を経たこの日本でも・・・。
そしてまた、もしこの公害のことが大きく広まってしまったら、
この地域の労働者を支える工場も、水産業もダメになってしまう。
一方、有害物質に体を冒された人は大変な苦しみ背負い、命を奪われ、
そして、生まれた子どもたちは歩くことも人前に出ることもかなわず・・・。
住民の心もあちらとこちらで引き裂かれてしまっているのです。

なんとも単純には語れない話。

さて、ユージンは実はそれ以前に日本を訪れたことがあるのです。
それは太平洋戦争末期の沖縄。
その悲惨な戦争を彼は撮った。
それだから、アイリーンは彼に水俣を撮って欲しかったわけですが、
ユージンはその時のことがトラウマとして残っていて、
もう二度と日本には行かないと思っていたのでした。

彼は「昔は写真に写ると魂を吸い取られると、いわれたものだ。
だけれども、実は撮る方も魂を吸い取られるんだ」と言います。

ユージンは沖縄で心をすっかり吸い取られ尽くしてしまった、
と、そう感じていたのでしょう。
だけれども、また再び、この悲惨な病のことを世界に知らせなければ、
という思いに駆られていくのです。

 

ガッツリと重いテーマながら、ジョニー・デップの奥底にある愛嬌が
深刻さを少し救っています。
結局の所、何かへの信念や執着心を持つ役柄を演じることになるので、
奇人とまでは行かないまでもやはり「変人」っぽくなってしまう、
ジョニー・デップであります。

日本人の出演者もピカイチ。
是非とも見るべき価値のある一作。

 

<サツゲキにて>

「MINAMATA ミナマタ」

2020年/アメリカ/115分

監督:アンドリュー・レビタス

出演:ジョニー・デップ、ビル・ナイ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信

 

歴史発掘度★★★★★

闘争度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


ミナリ

2021年09月16日 | 映画(ま行)

新たな地に根を下ろす

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1980年代アメリカ南部。
農業での成功を目指し、
家族を連れてアーカンソー州の高原に移住してきた韓国系移民ジェイコブ。
荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にして
妻・モニカは不安を抱くのですが、ジェイコブは希望に燃えています。
やがて、子どもたちの面倒を見るために妻の母・スンジャが韓国から呼ばれてやって来ます。
夫婦と子供2人、そしておばあちゃん。
賑やかな暮らしになりますが、しかし、農場の経営は思うように順調にいかず、
追い詰められていきます・・・。

アメリカでは貧乏人の象徴のようにして、よく映画でも見かけるトレーラーハウス。
でも、意外と中は普通の家と変わらぬ作りで
(日本の住居から見ると、全然狭い感じはしない)
私はちょっと住んでみたい気がしたりします・・・。

この一家は、韓国からいきなりこの地に来たわけではなくて、
アメリカのいくつかの地を渡り歩いてここまで来たようです。
夫は理想に燃えているけれど、妻は現実的。
きっと農業はそんなにうまくいかず、この地も去ることになる、
とハナから思っているようでもある。

さてそこへやって来たおばあちゃんがナイスです。
料理はしない。
口が悪い。
子どもたちに教える遊びは花札。
始めのうちは子どもたちに嫌われてしまいますが、元来子供の扱いはうまい。
すぐに仲良くなります。
このおばあちゃんが、川岸に“ミナリ”のタネを撒くのです。
ミナリ、すなわちセリですね。
韓国からもってきた、この地にはないミナリのタネ。
この一家にいろいろなつらいことが襲いかかり、
なんとか耐え抜いたラストシーンは、その川岸。
いつの間にかミナリがしっかりと根を下ろして、生い茂っているのです。
よそからやって来た「移民」とミナリが重ね合わせられています。
シャクシャクとして鮮烈な、仙台名物セリ鍋を食べたくなりました・・・。

ジェイコブはまず畑に必要な水源を探そうとします。
現地のアメリカ人はダウジングというのでしょうか、
棒を両手で持って指し示す場所を掘ればいい、と言います。
でもジェイコブはそんなものは信じず、それよりも頭を使えばいいのだ、と言います。
低くなっていて、木があるところ、そこに地下水がある、と。
確かにそこを掘ると水があったのですが、やがてその水は涸れてしまいます。

地下水が得られず水道水を使ったために、費用がかさみ
やりくりが苦しくなっていく・・・と言う悲劇へ続くのですが、
色々あった終盤、ジェイコブはついにダウジングの業者に頼るシーンが描かれていました。
郷に入れば郷に従え、という言葉もありますね。
自分たちのやり方と、その土地ならではのやり方。
試行錯誤して良い方法を考えていく。
土地の人たちとの交流もまたしかり。
そうしてやがて彼らもこの土地に根を下ろして行くのでしょう。

ステキな作品でした。

「ミナリ」

2020年/アメリカ/115分

監督・脚本:リー・アイザック・チョン

出演:スティーブン・ユアン、ハン・イェリ、アラン・キム、
   ノエル・イイト・チョー、ユン・ヨジャン、ウィル・パットン

 

おばあちゃんのたくましさ★★★★★

開拓精神度★★★★☆

満足度★★★★★


ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日

2021年09月01日 | 映画(ま行)

ライオンの現状を知ろう

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ライオンファーム経営のため、家族でロンドンから南アフリカに移住してきた11歳、ミア。
仕事に追われる父、心の病を抱える兄にかかりきりの母。
新しい学校にはなじめず、友だちもいない。
そんなクリスマスの日、ファームにホワイトライオンのチャーリーが生まれます。
ミアはチャーリーの世話をしながら共に成長。

それから3年後。
囲いの中で野生動物を狩る「缶詰狩り」の業者に、
父がファームのライオンを売っていたことを知ります。
そしてチャーリーも売られてしまうことに。
ミアはチャーリーを救うため、チャーリーと共にティムババティ野生保護区を目指します。

「缶詰狩り」とは聞き慣れない言葉ですが、
まさに、缶詰のように狭い囲みの中の動物を狩り、ハンティング気分を味わうという、
そんなののどこが楽しいのさ!と言いたくなってしまうレジャー(?!)なのですね。
そのために、野生動物を繁殖しているファームがある、という事実。
南アフリカではこのことは合法で、現にそれで多くの収益を得ているというのです・・・。

ミアの父親は、缶詰狩りの業者にライオンは売らず、主に動物園を相手に、
観光目的としてライオンを繁殖させていたのです。
しかし、ファームの経営が悪化し、
お金のためにどうしてもその業者に売らざるを得なくなってしまった・・・。

100年前には25万頭いたライオンも今では9割減少して2万頭なってしまった。
まさに絶滅危惧種です。
繁殖させたものなら殺傷していいというものではないですよね。
しかしそれなら牛や豚はどうなのかと考え出すと、迷宮にはまり込みそうですが。
まあとにかく、そんなことを考えるきっかけにはなる作品です。

 

さてそれにしても本作で驚くのはこのライオン。
3年以上をかけてCGはなし、ということなのですが、
実にこの少女ミアと息が合っていて、全く危なげを感じさせない。
本当に時間をかけて共に過ごしていたのだろうなあ・・・と感じさせます。

ライオンは小さい頃ならなつくけれど、ある程度成長した後は野性に返ってしまう
と聞いたことがあるので、これはなかなかすごいことなのではないでしょうか。
特に終盤のチャーリーは、“アスラン”かと思うほどの聡明なまなざしを見せておりまして、
いや、ホントすごい。

ミアの兄の心の病というのも、あることがトラウマとなっていた
ということが判明するあたりも秀逸です。

 

少女は、始め登場したときに、あららこの子、歯並びがあんまり良くない・・・と思ったら、
次の時には歯列矯正具を装着しており、
そして最後の時にはとても美しい歯並びになっていました。
リアルな時の流れを感じますねえ・・・。

 

シネマ映画.comにて

「ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日」

2018年/フランス/98分

監督:ジル・ド・メストル

出演:ダニア・デ・ビラーズ、メラニー・ロラン、ラングレー・カークウッド、ライアン・マック・レナン

 

野生動物の問題度★★★★☆

満足度★★★★☆


燃ゆる女の肖像

2021年08月31日 | 映画(ま行)

密かな営みだけが・・・

* * * * * * * * * * * *

18世紀フランス。

ブルターニュの貴婦人から娘・エロイーズ(アデル・エネル)の見合いのための肖像画を依頼され、
孤島の屋敷を訪れたマリアンヌ(ノエミ・メルラン)。
エロイーズは結婚を嫌がっていて、肖像画を描かれることを拒否しているため、
マリアンヌは正体を隠し、単なる散歩相手として接しながら、密かに肖像画を仕上げます。
しかしエロイーズは、完成したそれを見て「これは私じゃない」というのです。

マリアンヌはもう一度絵を描き直すことを決意。
美しい島を散歩し、音楽や文学について語り合い・・・、
エロイーズを深く知ることによって、本当の「肖像画」ができあがっていく・・・。
そして接近していく2人の心・・・。

マリアンヌは、エロイーズの姉が先に結婚することになっていたのだけれど、
崖から身を投げて死んでしまった、と聞かされます。
そしてやむなく繰り上げで、修道院にいた妹エロイーズが呼び戻されたのだと。

そのように聞いて、おそらくマリアンヌは地味で暗い顔をした娘を想像したのではないでしょうか。
少なくとも、私はそう思いました。
そして、初めて会ったエロイーズはフードをかぶってマリアンヌの前を駆け出します。
ようやく追いついたところで、エロイーズは初めて振り返り、顔を見せる。
すると意外にも、意志が強く聡明そうな顔。
ものすごく印象深いシーンでした。

2人はやがて秘密の関係へと進んでいくのですが、本作、18世紀。
舞台が現代なら単にレズビアンの愛情物語なのですが、
この時代が背景というのは当時の「女性の立場」を抜きに語ることはできません。

修道院は、歌や音楽があり、図書室があって良かったとエロイーズは言います。
しかるにここでは、生きるために、見知らぬ男と結婚しなければならない。
修道院の方がまだ自由ということか・・・。
そういう風に考えたことがなかったので、虚を突かれた感じです。
また、この屋敷のメイド・ソフィが妊娠しており、
マリアンヌとエロイーズが、子を堕ろす手助けをします。
おそらくは男に単にもてあそばれた結果であったのでしょう。
未婚で出産などと言うことは当時はとんでもない破廉恥な罪だったわけなので、
出産という選択肢はありません。
男の側の責任は一切問われず、
女ばかりが肉体的にも精神的にも打撃を受けることになる。

マリアンヌはかろうじて画家である父の後を継ぐということで、
自分の才覚で生きていける立場ですが、
逆にそれは結婚を諦めるということでもあるのです。
女であるが故の苦しさを、皆が抱えている。

そんな中で、2人の密かな営みだけが、自由に羽ばたける時なのです。

 

マリアンヌが絵を描くためにエロイーズを見つめる視線。
その時、エロイーズもまたマリアンヌを見つめることになるのです。
エロチックに交わされる視線。

 

オルフェウスとエウリュディケーの神話のエピソードが効果的に挿入されていました。
別れの後二度と合うことがないとわかっているから、
最後に一目見てその姿を胸に刻み込みたい・・・そんな思い。

だからエロイーズはその後マリアンヌと逢うチャンスがありながら、
決して顔を見ようともしなかった。
あの時が最後、そう胸に誓っていたからに違いありません。

映像の一つ一つがそれこそ絵画のように美しい作品でした。

 

「燃ゆる女の肖像」

2019年/フランス/122分

監督・脚本:セリーヌ・シアマ

出演:ノエミ・メルラン、アデル・エネル、ルアナ・バイラミ、バレリア・ゴリノ

 

感応度★★★☆☆

美しさ★★★★★

満足度★★★★☆

 


まともじゃないのは君も一緒

2021年07月18日 | 映画(ま行)

普通って何?

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人とのコミュニケーションが苦手、数学一筋の予備校講師・大野(成田凌)。
このままずっと一人でいることに不安を覚えますが、
世間知らずで、「普通」がどういうことなのかわかりません。

教え子の香住(清原果耶)は、そんな大野をズバリ「普通じゃない」と指摘します。

香住は、近頃テレビ番組の出演なども多い文化人・宮本(小泉孝太郎)に憧れているのですが、
しかし、宮本には恋人・美奈子(泉里香)がいる。
この際、大野に恋愛体験をさせるという名目で、
美奈子と接近するよう策略を巡らしますが・・・。

香住は、大野が自分と話しているときは
トンチンカンな物言いをしてまともな会話にならないのに、
美奈子と話すときには会話もスムーズで楽しそうなことに嫉妬してしまいます。

なんだかんだ言っても、大野はやはり大人だし、
大人びたことを言っても、香住は高校生。

そんな様子が見えてくるあたりが、いい感じです。
そして、香住の憧れる宮本はそもそもしょーもない人物だった・・・と。
(ただし、香住が高校生であることを知って、手出しを止めるあたりは、
一応の良識を持っているわけで、そこはよかった。)

香住と大野はそれぞれに気づいていきます。
普通ってなんだ? 
普通じゃなくたって、自分は自分でいいじゃないか。

そうなんですよね。
けれど、普通じゃなくたっていい、と自分は思うのに、
世間がそれを認めないからつらくなる。

「普通」の壁を打ち壊すのはそう簡単じゃないけど、
互いをその人のままに受け入れられるような
世の中でありたいものです。

清原果耶さん、これまでのイメージと少し違うのですが、こういうのもいいです。

 

<WOWOW視聴にて>

「まともじゃないのは君も一緒」

2021年/日本/98分

監督:前田弘二

脚本:高田亮

出演:成田凌、清原果耶、山谷花純、小泉孝太郎、泉里香

 

ラブコメ度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


マーウェン

2021年06月19日 | 映画(ま行)

フィギュアの世界で

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実話に基づく物語。

5人の男から暴行を受け、瀕死の重傷を負ったマーク(スティーブ・カレル)。
昏睡状態から目覚めると自分の名も覚えておらず、歩くこともままならない。
そして体の状態が落ち着いてからも、暴力的なことを目にすると
パニック状態になるというPTSDに苦しみます。
そんな彼が、リハビリのためにフィギュアの撮影に取り組むようになります。

それは、第二次世界大戦下のベルギー、架空の町「マーウェン」。
そこではGIジョーのホーギー大佐と5人のバービー人形が、
ナチス親衛隊と日々戦いを繰り広げているという設定で、
マークの中でストーリーが進みます。
そんなシーンを人形で描き出して写真を撮るのです。
そしてそんな風変わりな写真が評判となり、評価されて、
やがて個展を開くまでに。

マークには、女性用の靴に非常に愛着があって、
ハイヒール等の何百足ものコレクションがあります。
時にはそれを履くことに喜びを感じることも。
ある日酒場で自分のそんなことを口にして、
LGBTに嫌悪を抱く連中から暴行を受けてしまった、ということのようです。

マークの住む町の人々はそんな事情を良くわかっていて、
何かと彼のことを気にかけ、助力しようとします。
特に、様々な女性たちが。

だから、「マーウェン」の世界のホーギー大佐は、マークの分身でもあって、
ヒーローではああるけれど、いつも女性たちに囲まれ、守られてもいるのです。
しかし、この世界を本当に牛耳っているのは一人の「魔女」。
どうやら、マークの恐怖の根源はここにありそうで・・・。

フィギュアの世界で物語を作る、というのは一種の「箱庭療法」なのかもしれません。
自分でもよくわからない心の奥底の不安を、「物語」を作ることで浮かび上がらせて行く。

なかなか興味深い話なのでした。

本作はそのフィギュアの物語世界を、映像として表わしているのです。
モーションキャプチャーで、人の動きを人形が動いている様な、不思議な感じに表現しています。
そこはロバート・ゼメキス監督ですからね。

でも始めはちょっと面白いと思ったそのようなシーンも次第に飽きてきて、
全体的にはなんだかとりとめなくピンと来ない感じになってしまったような・・・。

 

<WOWOW視聴にて>

「マーウェン」

2018年/アメリカ/116分

監督:ロバート・ゼメキス

出演:スティーブ・カレル、レスリー・マン、ダイアン・クルーガー、メリット・ウェバー

 

CG活用度★★★★☆

満足度★★★☆☆