「ガラスのハンマー」 貴志祐介 角川文庫
介護サービス会社のオフィスで社長の撲殺死体が発見される。
防犯カメラ等、厳重なセキュリティの中、続き部屋で仮眠していた専務が犯人と思われ逮捕されるのだが・・・。
弁護士、青砥純子は、その専務の弁護のため、防犯コンサルタントの榎本径とコンビを組み、事件を調べ始める。
専務が無実だとしたら、真犯人の侵入経路は?
凶器は?
社長室に置かれた介護ロボットを操作した可能性は?
防犯カメラの何らかの操作によるもの?
あらゆる可能性を想定するけれども、ことごとく、不可能との結論に至ってしまう。
最後にたどり着いた意外な殺人方法とは・・・?
さまざまなセキュリティに関しての薀蓄本ともなっています。
この、果てしなくあやしい防犯コンサルタントと、蓮っ葉な女弁護士、なかなか、楽しいコンビです。
しかし、この本が俄然面白くなるのは実は、後半の解決編になってから。
倒叙形式というやつですね。
犯人を伏せて、最後に犯人が明かされる、というのではなく、
はじめから犯人はわかっていて、犯行方法を説明していくやり方。
ここの語り手は、椎名章という青年。
自立していて、理知的、硬質の意志の強さが青年らしく、どこか共感を呼ぶ。
ああ、あの「青の炎」を書いた人だものねえ・・・、やっぱり。
彼がどうして、このような犯罪に手を染めることになってしまったのか、そしてまた、その手口というのは、
・・・と、単に、問題の解決編にとどまらない分量で、ぐいぐいと読ませる。
前半は、わりと凡庸の作品と思えたのですが、この後半部分になって、作品の印象もがらりと変わる、
なかなかユニークな作品なのです。
あ、今気づいたけど、本の題名がそのままめちゃくちゃネタばらしじゃありませんか!!
なーんだ・・・。
でもまあ、普通は題名を見てさえも、ぜんぜん真相はわかりません。
まあ、とにかく、巻末の法月綸太郎との対談も、ファンにはうれしい企画です。
満足度★★★★