社会派サスペンス。
ジョージ・クルーニーは結構地味な作品にも出ますよね。
正直ちょっと眠かった。
しかし、じっくり仕上げた、深い作品であります。
巨大農薬会社の薬害訴訟。
会社側の弁護を務めていたアーサーは、その会社のあまりの悪辣なやり方と、自分の立場のひずみのために、精神を病んでしまう。
弁護士は、あくまでも依頼主のために、多少のいんちきは目をつぶって依頼主に有利にことを進めなければならないわけです。
その同僚のマイケルが、ジョージ・クルーニー演じる主人公。
彼こそは、フィクサー(もみ消し屋)とよばれ、汚い仕事もお金のために引き受ける、そういう役割。
マイケルは自身の生活にも行き詰まり、厭世的な日々を送っていましたが、
同僚アーサーの死に疑問を持ち、事件の真相を探っていきます。
けれどもやはり彼は自分を「お金で動く人間」と規定してしまうのですが、一つの出来事が彼を変えます。
ドライブ途中で丘の上に美しい馬を見掛け、
気になって、車から降りて見に行くのですが、
その時、彼の車が爆発炎上。
事件の真相が表ざたになることを恐れた会社側の仕掛けたことでした。
このとき、彼の中の何かが変わるのです。
このシーンははじめの方に出てきますが、
それから時をさかのぼって事件の発端から順にストーリーがかたられ、再びそのシーンに戻ります。
同じシーンが二度出てくるのですが、それだけ重要なシーンということ。
ほんの偶然に、美しい馬を見かけ、その美しさに感じ入った人間らしい心のおかげで、自分は助かった。
お金だけが自分を動かすものではないのだ・・・という、自覚でしょうか。
会社側の法務担当、ティルダ・スウィントンも、迫力あります。
鏡に向かって、演説の練習をするところ、殺人の示唆をするところ、
・・・決して、鋼鉄の意志の女性ではない、
弱さを必死に取り繕っている感じがすごくリアルでした。
アカデミー賞最優秀助演女優賞、というのも、納得です。
2007年/アメリカ/120分
監督:トニー・ギルロイ
出演:ジョーニ・クルーニー、ティルダ・スウィントン、ドム・ウィルキンソン、シドニー・ポラック
「フィクサー」公式サイト