「ブルータワー」 石田衣良 徳間文庫
石田衣良のSF作品。
実は、どんな話なのか見当もつかないまま、読み始めたのですけれど・・・。
いきなり、脳腫瘍で余命数ヶ月という主人公、周司登場。
いえ、残された数ヶ月をどう生きるかとか、死ぬ前にやりたいことをやる、
・・・なーんていう話ではありません。ご安心を・・・。
彼は時々発作的に、たえがたい頭痛におそわれる。
あるとき、その頭痛からさめてみると、自分が全く別の場所にいることに気づく。
なんと、そこは彼がいた場所から、200年後の世界。
自分はシューという人物で、そこでは脳腫瘍などではなく、健康体。
しかし、問題は、その世界は「黄魔」と名づけられた、致死率90%のインフルエンザウイルスの蔓延する世界であるということ。
そのウイルスにより、世界の様相は一変している。
それまでの国家は、ほぼ壊滅。
のこされた人々はウィルスの進入を防ぐために作られた巨大なタワーにのみ生息している。
そこは、完璧な階層社会で、富と権力を持ったわずかな人々が最上層階に住み、そこから下るにつれ、貧しい層となっていく。
文字通り、住居の高度が、地位の高度となっている。
下層に行くほど治安は悪く、ウイルスにさらされる危険も大きい。
ただ、タワー内部に住める人はまだ良い方で、
最悪にはそこにも住むこともできず、絶えず感染の危険がある最下層の人々もいる。
この、あまりにもひどい格差に、当然唯々諾々と従う人ばかりではなく、今まさに、下層の反乱軍がタワーの支配者と戦うため、革命が勃発しようというタイミング。
シューは最上層の住人なのですが、何とかことを治め、
またウイルスに対抗することはできないかと命がけで動くことになるのです。
現在と未来を行き来しつつ、彼は次第に、自分がすべきことを見出していく。
ここでは、意識だけが時を行き来します。
現在と未来の彼を取り巻く人々の不思議な符合。
未来において、救世主として歌い継がれる、彼の伝説。
久しぶりにわくわくさせられる、SFの醍醐味がありました。
ブレスレットのライブラリアンすなわちスーパーコンピューターなのですが、
ホログラムで像を浮かび上がらせ、持ち主の質問や要求に答えてくれる。
・・・これ、いいですねえ。こんなの、欲しいです!
満足度★★★★