映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マディソン郡の橋

2008年05月26日 | クリント・イーストウッド

(DVD)

1995年作品ですか。
これは結構当時話題を呼びましたねえ。
10年とちょっと前。
当時の私としては、映画は子供をつれてドラえもんとか、ドラゴン・ボールがいいところ
・・・まあ、ようやくそんな時代が終わったあたり。
久しぶりに、まともな映画を見に行ったという、そんな作品だったのを覚えています。

今なら、メリル・ストリープはすっかりおなじみなんですけれど、
先日この「マディソン郡の橋」のヒロインが彼女だったことに改めて気づき、
見直してみる気になりました。
ごく片田舎の主婦フランチェスカと、旅人である中年カメラマン、ロバートのたった4日間の恋。
同じ主婦としては、このフランチェスカの閉塞感がすごくよく分かるのです。
妻と母親の役割だけを期待され、いつしか自分もそれになりきっていたのだけれど、ふと気づく。
自分自身はどこへ行ったのだろう、一人の女としての自分は・・・。
そんなところへ現れる旅人の彼は、まさに彼女を一人の女としてみる。
これがまた、運命の出会いなのでしょう。
まあ、陳腐な言い方をすれば、赤い糸で結ばれた本当の相手。
もしくは、神に裂かれて生まれてきてしまった、自分の半身。
燃え上がる二人の想い。
メリル・ストリープが日を追うごとに美しくなっていくのがわかります。

「不倫」と呼ぶにはあまりにも崇高であるように思えるのは、
この恋の決着の付けかたなんですね。
フランチェスカはこの4日間を胸に秘め、その思いを糧として、一生を終える。
2人はその後一度も会うことがない。
ただ、ロバートの死後、遺品が彼女の元に届けられるだけで。
彼の方も、同じくこの4日間を心の支えとして生きていたことが伺われます。
雨に打たれながら、じっと彼女を見ていた彼が思い出される・・・。

人の心というのは、なんと強靭なものでしょう。

この映画では、フランチェスカの息子と娘(どちらもすでに中年)が
母の遺品の日記を読み、始めてこのことを知る、という設定になっています。
母は「女」ではない、と信じていた彼らにとって、
これはひどい裏切り行為に思えるのですが、
日記を読んでいくうちに母の心情に心動かされていくのです。
久しぶりに見て、また改めて感動してしまいました。

1995年/アメリカ/135分
監督:クリント・イーストウッド
出演:メリスル・ストリープ、クリント・イーストウッド、アニー・コーリー、ヴィクター・スレザック