本能的な愛欲と観念
* * * * * * * *
ファティ・アキン監督作品を逆行して見ています。
2004年のこの作品。
なるほど、これが原点といってよさそうです。
主人公はやはりトルコ系のドイツ人。
人生に絶望した40歳ジャイトは自殺未遂で病院へ。
そこで、やはり自殺未遂の患者、トルコ人のシベルと知り合います。
彼女はいきなりジャイトに「結婚して」というのです。
シベルは戒律に厳しい彼女の家族から自立し、自由になりたいと願っていた。
そこで二人は偽装結婚をし、同居することになります。
偽装というからには、お互いは縛られず自由。
それぞれは外で恋人との逢瀬を楽しみ、
二人に肉体的な関係はいっさいなし。
ところが、心が死んだようだったジャイトは、
彼女とのこのおかしな生活により、自分が生き返ったと感じる。
そして、彼女への愛も自覚していく。
このあたりまでは、よくあるベタな展開なのですが・・・。
ふいに人が死んだりします。
罪を負って刑務所入りもあります。
なるほど、やはりファティ・アキン監督だ。
憎くて殺してしまうのではない。
いわば自身の抑制が効かず、つい手が出て・・・、
そうして不意に消えてしまう命。
このあたりの描写はいかにもあっけないのですが、
ねっこに何か無常感のようなものを感じてしまいます。
所詮命はこのように儚いもの。
そんな中で私たちは愛だ恋だとジタバタあがいているのだなあ・・・。
いつしかジャイトとシベルの思いは重なり、
とうとう結ばれる
・・・というときに、シベルは叫ぶのです。
「まって! これ以上のことをすれば、私たちは本当の夫婦になってしまう!」
シベルは、家族とか結婚とか、
そういうものに縛られたくないからこそ家を出たわけです。
自らの規範に自らが縛られている。
単に観念上の問題ではあるのですが、
だからこそそれが人間の証でもあります。
本能的な愛欲と観念。
偽装結婚という観念から入った二人の関係が
こういう問題に乗り上げるのは必然なのかもしれません。
男女の心の不思議を堪能しましょう。
音楽とダンスが常にある、中東と西洋の不思議な融合感。
この独特な雰囲気もいいですよ。
「愛より強く」
2004年/ドイツ/121分
監督・脚本:ファティ・アキン
出演:ビロル・ユーネル、シベル・ケキリ、カトリン・シュトリーベック、メルテム・クンブル、デミール・ゲクゲル
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ファティ・アキン監督作品を逆行して見ています。
2004年のこの作品。
なるほど、これが原点といってよさそうです。
主人公はやはりトルコ系のドイツ人。
人生に絶望した40歳ジャイトは自殺未遂で病院へ。
そこで、やはり自殺未遂の患者、トルコ人のシベルと知り合います。
彼女はいきなりジャイトに「結婚して」というのです。
シベルは戒律に厳しい彼女の家族から自立し、自由になりたいと願っていた。
そこで二人は偽装結婚をし、同居することになります。
偽装というからには、お互いは縛られず自由。
それぞれは外で恋人との逢瀬を楽しみ、
二人に肉体的な関係はいっさいなし。
ところが、心が死んだようだったジャイトは、
彼女とのこのおかしな生活により、自分が生き返ったと感じる。
そして、彼女への愛も自覚していく。
このあたりまでは、よくあるベタな展開なのですが・・・。
ふいに人が死んだりします。
罪を負って刑務所入りもあります。
なるほど、やはりファティ・アキン監督だ。
憎くて殺してしまうのではない。
いわば自身の抑制が効かず、つい手が出て・・・、
そうして不意に消えてしまう命。
このあたりの描写はいかにもあっけないのですが、
ねっこに何か無常感のようなものを感じてしまいます。
所詮命はこのように儚いもの。
そんな中で私たちは愛だ恋だとジタバタあがいているのだなあ・・・。
いつしかジャイトとシベルの思いは重なり、
とうとう結ばれる
・・・というときに、シベルは叫ぶのです。
「まって! これ以上のことをすれば、私たちは本当の夫婦になってしまう!」
シベルは、家族とか結婚とか、
そういうものに縛られたくないからこそ家を出たわけです。
自らの規範に自らが縛られている。
単に観念上の問題ではあるのですが、
だからこそそれが人間の証でもあります。
本能的な愛欲と観念。
偽装結婚という観念から入った二人の関係が
こういう問題に乗り上げるのは必然なのかもしれません。
男女の心の不思議を堪能しましょう。
音楽とダンスが常にある、中東と西洋の不思議な融合感。
この独特な雰囲気もいいですよ。
愛より強く スペシャル・エディション [DVD] | |
ビロル・ユーネル | |
ハピネット |
「愛より強く」
2004年/ドイツ/121分
監督・脚本:ファティ・アキン
出演:ビロル・ユーネル、シベル・ケキリ、カトリン・シュトリーベック、メルテム・クンブル、デミール・ゲクゲル