人を愛すること、受け入れることのほんとうの意味
* * * * * * * * *
17歳友彦は、隣の家に居候しています。
父母は離婚し母が離れていった。
父は単身赴任。
その父は、元々冷淡で友彦のことに無関心。
そのため、友彦がくつろげる家は、子供の頃から慣れ親しんだこの家なのです。
こちらの家はもともと4人家族だったのですが
数年前ある事故で母と長女が亡くなり、
今は父乙太郎と次女のナオの二人暮らし。
ということで3人が仲良く暮らしていたのです。
ところで、亡くなった姉サヨを、
友彦は自分が殺したと密かに思っています。
美しい人でしたが、どこかひんやりとした雰囲気の女性。
ある日友彦は、サヨに似た雰囲気を持つ女性を見かけ、
気になって仕方ありません。
そんな膨らむ思いを抑えかね、
とうとう彼女が過ごす家の床下に、夜な夜な潜り込むようになってしまうのです。
ただ自分の欲望のまま、後先考えない行動に走ってしまう17歳。
今作は過去の事件の真相を探る物語でもありますが、
友彦の心の成長を描く物語でもあります。
おとなになるとは・・・
人の心の痛みをきちんと想像できること。
そしてそれを癒そうと努力できること。
今作ではそのように読み取れます。
自分の気持をぶつけるだけではダメなんですね。
いくつか、真相と思われるべきものがくるくると反転していきます。
物語の終盤はそれから16年が経ており、
どの出来事も何か甘酸っぱさを覚える記憶の底に沈んでいるように思われるのですが・・・、
ここに来てもう一つの展開。
それが何故かやさしくもの悲しい・・・。
球体の蛇とは・・・
「星の王子さま」中の逸話に由来します。
UFOか帽子のように見える一枚の絵をさして、問う。
これはなにの絵か?
答えは大きな象を飲み込んだ蛇。
友彦は思う。
このようなナオのシールドは自分を守ってくれたけれども、
こんな大きな物を飲み込んでしまったナオは、どんなに辛かっただろうか・・・。
全てを見通すことができるようになった今だから、
人を愛すること、受け入れることの本当の意味がわかります。
ちょっと暗いストーリーですが、最期の一行に救われます。
「球体の蛇」 道尾秀介 角川書店
満足度★★★☆☆
![]() | 球体の蛇 (角川文庫) |
道尾 秀介 | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
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17歳友彦は、隣の家に居候しています。
父母は離婚し母が離れていった。
父は単身赴任。
その父は、元々冷淡で友彦のことに無関心。
そのため、友彦がくつろげる家は、子供の頃から慣れ親しんだこの家なのです。
こちらの家はもともと4人家族だったのですが
数年前ある事故で母と長女が亡くなり、
今は父乙太郎と次女のナオの二人暮らし。
ということで3人が仲良く暮らしていたのです。
ところで、亡くなった姉サヨを、
友彦は自分が殺したと密かに思っています。
美しい人でしたが、どこかひんやりとした雰囲気の女性。
ある日友彦は、サヨに似た雰囲気を持つ女性を見かけ、
気になって仕方ありません。
そんな膨らむ思いを抑えかね、
とうとう彼女が過ごす家の床下に、夜な夜な潜り込むようになってしまうのです。
ただ自分の欲望のまま、後先考えない行動に走ってしまう17歳。
今作は過去の事件の真相を探る物語でもありますが、
友彦の心の成長を描く物語でもあります。
おとなになるとは・・・
人の心の痛みをきちんと想像できること。
そしてそれを癒そうと努力できること。
今作ではそのように読み取れます。
自分の気持をぶつけるだけではダメなんですね。
いくつか、真相と思われるべきものがくるくると反転していきます。
物語の終盤はそれから16年が経ており、
どの出来事も何か甘酸っぱさを覚える記憶の底に沈んでいるように思われるのですが・・・、
ここに来てもう一つの展開。
それが何故かやさしくもの悲しい・・・。
球体の蛇とは・・・
「星の王子さま」中の逸話に由来します。
UFOか帽子のように見える一枚の絵をさして、問う。
これはなにの絵か?
答えは大きな象を飲み込んだ蛇。
友彦は思う。
このようなナオのシールドは自分を守ってくれたけれども、
こんな大きな物を飲み込んでしまったナオは、どんなに辛かっただろうか・・・。
全てを見通すことができるようになった今だから、
人を愛すること、受け入れることの本当の意味がわかります。
ちょっと暗いストーリーですが、最期の一行に救われます。
「球体の蛇」 道尾秀介 角川書店
満足度★★★☆☆