ひたすら母親の関心を引きたいだけ・・・

* * * * * * * * *
これはなかなかの衝撃作品でした。
自由奔放な作家だったエバ(ティルダ・スウィントン)は、
妊娠を機にキャリアを捨て、母親に専念することにします。
しかし生まれた息子ケビンは、泣きわめくばかりで全くなつく様子がない。
その後成長していくケビンですが、
常にエバには敵意丸出しで反抗的。
そしてついに彼が16歳の時に大きな事件が起こります。

冒頭は、みすぼらしい家に一人暮らし、
ご近所から憎まれており、
華々しいキャリアがありながら旅行会社の事務員のバイトに甘んじているという
エバの姿が描写されます。
断片的な過去の思い出がフラッシュバックのようにうつしだされ、
次第に彼女の今の境遇の意味がわかってきます。

しかし、こんなことがあるでしょうか。
実の親子でありながら、こんなにも気持ちも愛情も通わない母と息子。
・・・と自分で投げかけた問いでありながら、
私はやはり『確かにある』とうなずいてしまうのです。
今作は「息子のためにキャリアを捨てなければならなかった」という思いが、
どこか彼女の息子への態度がよそよそしくなってしまっていた、
と読み取ることもできると思います。
でも、母親は子どもを無条件に愛せるのか。
生まれた時からすぐに慈愛が湧き出るのか・・・といえば、
私はそうではないと思うのです。
だっていきなり小さな命を守らなければならない立場に立たされるのですよ。
愛情というより、不安の方が大きいということもあるのでは・・・。
だからこそ、育児ノイローゼなどというものもあります。
血が繋がっていれば愛情があるなんていうのは幻想。
言葉をかけ、言葉が戻ってくる。
笑顔を向け、笑顔が返ってくる。
そういうことで愛情は育っていくのではないかな。
でもそれが得られなかったエバを、私は責めることができません。

しかしエバは、そうした自分の育児が、
息子を愛し続けられなかった自分が、
悪かったのかとひたすら自責の念に駆られているのです。
一方、ケビンの気持ちというのは非常にわかりやすい。
とにかく彼は母親の関心を引きたい。
ずっと、ただただそれだけなんですね。
でもその行動が「悪意」としか受け取れないところに問題があるし、
実際、行きすぎてしまうわけです。
あんたはハスミンかい、と言いたくなる。
が、ハスミンは人と共感を持てないというところが問題でしたが、
ケビンの場合は、母親しか見えていないし、
その思いはひたすら一方通行。
母親の困った顔だけが彼の喜びになってしまっているのが問題。
父親にはふつうにいい子なのがまた、憎らしい・・・。

一応“母親”の立場でもある私には、
胸の痛む衝撃作でした。
この愛らしく、長じては美しい顔で悪意を向けられたら、
実際辛いし、怖いですよね・・・。
監督:リン・ラムジー
出演:ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー
理不尽度★★★★☆
満足度★★★☆☆
今度から映画作品にも評価を試みる事にしました。
全く個人的な好き嫌いですので、あまりあてにしませんように。
★5つで満点です。
できるだけよいところを見たいので、満足度の他にいろいろな観点を加えます。
今回の「理不尽度」・・・などのように。
まあ、ユーモアとして受け止めていただければ幸いです。
(たんぽぽ)

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これはなかなかの衝撃作品でした。
自由奔放な作家だったエバ(ティルダ・スウィントン)は、
妊娠を機にキャリアを捨て、母親に専念することにします。
しかし生まれた息子ケビンは、泣きわめくばかりで全くなつく様子がない。
その後成長していくケビンですが、
常にエバには敵意丸出しで反抗的。
そしてついに彼が16歳の時に大きな事件が起こります。

冒頭は、みすぼらしい家に一人暮らし、
ご近所から憎まれており、
華々しいキャリアがありながら旅行会社の事務員のバイトに甘んじているという
エバの姿が描写されます。
断片的な過去の思い出がフラッシュバックのようにうつしだされ、
次第に彼女の今の境遇の意味がわかってきます。

しかし、こんなことがあるでしょうか。
実の親子でありながら、こんなにも気持ちも愛情も通わない母と息子。
・・・と自分で投げかけた問いでありながら、
私はやはり『確かにある』とうなずいてしまうのです。
今作は「息子のためにキャリアを捨てなければならなかった」という思いが、
どこか彼女の息子への態度がよそよそしくなってしまっていた、
と読み取ることもできると思います。
でも、母親は子どもを無条件に愛せるのか。
生まれた時からすぐに慈愛が湧き出るのか・・・といえば、
私はそうではないと思うのです。
だっていきなり小さな命を守らなければならない立場に立たされるのですよ。
愛情というより、不安の方が大きいということもあるのでは・・・。
だからこそ、育児ノイローゼなどというものもあります。
血が繋がっていれば愛情があるなんていうのは幻想。
言葉をかけ、言葉が戻ってくる。
笑顔を向け、笑顔が返ってくる。
そういうことで愛情は育っていくのではないかな。
でもそれが得られなかったエバを、私は責めることができません。

しかしエバは、そうした自分の育児が、
息子を愛し続けられなかった自分が、
悪かったのかとひたすら自責の念に駆られているのです。
一方、ケビンの気持ちというのは非常にわかりやすい。
とにかく彼は母親の関心を引きたい。
ずっと、ただただそれだけなんですね。
でもその行動が「悪意」としか受け取れないところに問題があるし、
実際、行きすぎてしまうわけです。
あんたはハスミンかい、と言いたくなる。
が、ハスミンは人と共感を持てないというところが問題でしたが、
ケビンの場合は、母親しか見えていないし、
その思いはひたすら一方通行。
母親の困った顔だけが彼の喜びになってしまっているのが問題。
父親にはふつうにいい子なのがまた、憎らしい・・・。

一応“母親”の立場でもある私には、
胸の痛む衝撃作でした。
この愛らしく、長じては美しい顔で悪意を向けられたら、
実際辛いし、怖いですよね・・・。
![]() | 少年は残酷な弓を射る [DVD] |
ティルダ・スウィントン,エズラ・ミラー,ジョン・C・ライリー | |
東宝 |
監督:リン・ラムジー
出演:ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー
理不尽度★★★★☆
満足度★★★☆☆
今度から映画作品にも評価を試みる事にしました。
全く個人的な好き嫌いですので、あまりあてにしませんように。
★5つで満点です。
できるだけよいところを見たいので、満足度の他にいろいろな観点を加えます。
今回の「理不尽度」・・・などのように。
まあ、ユーモアとして受け止めていただければ幸いです。
(たんぽぽ)